注目映画紹介:「ギリシャに消えた嘘」男女の心理戦を豪華俳優のアンサンブルで

(C)2014 STUDIOCANAL S.A.All rights reserved.
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 「太陽がいっぱい」(1960年)、「リプリー」(99年)などの原作者、パトリシア・ハイスミスさんの「殺意の迷宮」を映画化した「ギリシャに消えた嘘」(ホセイン・アミニ監督)が11日から公開される。ヴィゴ・モーテンセンさん、オスカー・アイザックさん、キルスティン・ダンストさんといったハリウッドの豪華キャストが集結。男女の複雑な三角関係を軸にした上質なサスペンスドラマだ。

ウナギノボリ

 1962年のアテネ。米国人の青年ライダル(アイザックさん)は、パルテノン神殿でツアーガイド中に、米国人夫妻に目を奪われる。リッチそうな紳士チェスター(モーテンセンさん)に、亡き父の面影を見たライダルは、年下の妻コレット(ダンストさん)の美しさにも魅了された。偶然に出会って、夫妻のガイドについたライダルは、その晩、食事を共にする。ところが、ホテルを訪ねてきた探偵をチェスターが殺害してしまったことから、3人の運命は変化していく。偽造パスポートの手配をし、逃亡の手助けをしたライダルも、夫妻とともにクレタ島へ向かうことに。やがて、ライダルとコレットの関係が親密になり……という展開。

 アテネ、クレタ島からイスタンブールへ。ミステリー映画には欠かせない魅惑的なロケーションで繰り広げられるのは、偶然出会ってしまった3人の男女の心理ドラマだ。オフホワイトのスーツに身を包むダンディーなチェスターと美しいコレットの裏の顔は、詐欺師とその妻。「親切心? それとも金目当て?」と行動の裏側を図りかねるライダルは、チェスターに父親の面影を見ていて、この三角関係は、父と息子の様相で語られる2人の関係が太い軸となって展開する。冒頭、父と息子に関係したギリシャ神話が語られるが、男同士の虚勢の張り合いが、シンプルなストーリーの中に、複雑な感情として溶け込んでいる。3人の俳優のアンサンブルが見事なのは言うまでもなく、特に、優雅なおじさまのチェスターが嫉妬(しっと)でギリギリしている姿に人間の弱さが見え、ゾクゾクさせられる。まるでフィルムのようなシックな映像と洗練された60年代ファッションも光っている。「ドライヴ」(2011年)の脚本家であるアミニ監督の長編デビュー作。「リプリー」(99年)、「裏切りのサーカス」(11年)の製作陣が手がけた。ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで11日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作を見ながら、持ち運びに不便そうだけど、昔のスーツケースはカッコいいなあと思いました。

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