テレビ質問状:国際共同制作プロジェクト「もしも建物が話せたら」5カ国で撮影 ヴェンダース監督らの6作

「国際共同制作プロジェクト『もしも建物が話せたら』」の前編に出てくるベルリン・フィルハーモニー(C)Wim Wenders 2013
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「国際共同制作プロジェクト『もしも建物が話せたら』」の前編に出てくるベルリン・フィルハーモニー(C)Wim Wenders 2013

 WOWOWは毎週土曜午後1時に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。5月16日に前編、23日に後編が放送される「国際共同制作プロジェクト『もしも建物が話せたら』」の共同プロデューサーを務めたWOWOWのLA駐在員事務所の鷲尾賀代さんに、番組の魅力を聞いた。

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  --番組の概要と魅力は?

 「もしも建物が会話できたらどんな事を話すのだろう?」と世界の名だたる映像作家6人が集結し、おのおの思い入れのある建物を描きます。建物は文化や社会を反映する鏡で、一昔前、欧米ではその街を代表する建物は教会でした。当時の教会のようにその街の文化も人々の暮らしも垣間見えるような現代においての街を象徴する建物が描かれています。

 その街で人々と思い出を共有する思いの詰まった文化的建物のストーリーを感じてもらえる六つの作品を楽しんでもらいたいです。

 --今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 きっかけは、一枚の写真からでした。すてきな建物の写真にくぎ付けになり、まったく別の企画の話をしていたのですが、その写真が気になって、この企画をヴィム・ヴェンダースが構想していることを知りました。実は、その写真の建物は結果、(番組では)撮影されないことになりましたが、「建物が何を思い何を語りかけるか?」というコンセプトに引き付けられ、共同制作として手掛けてみたいと思いました。

 --制作中、一番に心掛けたことは?

 名だたる監督が集結している企画ではありますが、ドキュメンタリーなのでドラマや映画とは違って少数精鋭での撮影が行われました。どのチームも10人前後の撮影クルーです。

 人物を追いかけるドキュメンタリーではないにしても、少数で短い撮影日数(撮影は3日ほど)だからゆえの緊張感が走ります。それぞれの制作チームはそれぞれの監督と長年組んできた経験から“あうん”の呼吸で動いているので、その空気感をできるだけ壊さないように溶け込んでいくのが、共同プロデューサーとして私に課せられた最初の作業だったような気がします。遅くとも最終日にはうまく新しい風が吹き込めるように務めました。

 --番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 やはり、ヴェンダース監督やロバート・レッドフォード監督の作品に携わることができたことは単純にとても光栄でうれしいことでしたが、半面、オフラインを見て意見を出す時もいつも以上に緊張感はありました。思い出深い点を二つ挙げるとすると、まずはミハエル・グラウガー監督について。初日から私をチームの一員としてとても温かく迎え入れてくれ、一番いろいろと吸収できた撮影現場となり、絶対に彼とまた作品が作りたいと思っていたのですが、次の作品の撮影中に亡くなったという知らせを受け、運転中でしたが涙が止まりませんでした。

 もう一つは、レッドフォード監督の作品の撮影現場でのプライベートなチャリティー試写会の際、私が、ドキュメンタリーに興味を持つきっかけの一つとなった「不都合な真実」の監督のアル・ゴア元副大統領を、レッドフォード監督が招待してくださっており、彼と再会し、現状報告できたことはとてもうれしかったです。

 --番組の見どころを教えてください。

 やはりなんといっても“建物”が語りかけてくるスタイルを楽しんでいただきたいです。

 また、それぞれの監督は3D撮影ということをとても意識して撮影、制作されているので、できることならば3D放送の方も見ていただければ幸いです。

 建物の語りが3Dの迫力で、より一層迫ってくる作りになっております。

 --視聴者へ一言お願いします。

 6作品は5カ国で撮影が行われました。建物のつむぎ出すそれぞれのストーリーを楽しんでいただきたいのはもちろんですが、ロシア、ノルウェー、フランス、米国、ドイツとまるで欧米を旅行した気分も併せて味わえると思います。

 また、お時間あれば、事前に建物の成り立ちや特徴など頭に入れてご覧になっていただけると、また違った魅力も味わえると思います。例えば、紹介するハルデン刑務所のあるノルウェーはヨーロッパで最も再犯率が低い国で、安全だといわれる日本の半分以下なのです。

 それぞれの楽しみ方でご覧になっていただければ幸いです。

 WOWOW LA駐在員事務所 共同プロデューサー 鷲尾賀代

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