西島秀俊:「劇場版 MOZU」の撮影 「文字通り命を懸けてやらせてもらえる現場」

「劇場版 MOZU」を名古屋で撮影中の西島秀俊さんを直撃
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「劇場版 MOZU」を名古屋で撮影中の西島秀俊さんを直撃

 「劇場版 MOZU」で、ドラマシリーズに続いて主人公の警視庁公安部のエース、倉木尚武を演じた俳優の西島秀俊さん。ゴールデンウイークに名古屋の官庁街を封鎖したロケを行った際、撮影中の西島さんを直撃し、今作に懸ける熱い思いを聞いた。

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 「劇場版 MOZU」はドラマ版最終話の半年後から物語がスタートする。妻の死の真相を知り、生きる気力を無くしていた倉木(西島さん)が、同時に起きた二つの過激テロの犯人を追ううちに、裏で暗躍していたシリーズの最大の謎でもある巨悪「ダルマ」の正体にたどり着く……というストーリーだ。

 ◇危険なシーンも吹き替えなし

 この劇場版について、西島さんは役柄の倉木の目線で「倉木は妻がなぜ死んだのか? その死の真相を知りたいという個人的な動機だけで、社会を裏で動かしている一番大きな力に、一番低いところから死ぬような思いで立ち向かっていた男。それが(ドラマ版で)一応解明されたので、生きる目的を失ってしまったんです。ところが、都市伝説のように謎とされていた「ダルマ」の存在によって、倉木の心にもう一度火がつくんです」と説明する。

 その重要な導入部は名古屋の官庁街を完全封鎖し、東京の霞が関に見立ててテロリストたちとの過激なバトルシーンを撮影した。

 「無気力のままふらふらと歩いていた倉木が、テロリストたちが要人を拉致しようとする現場にたまたま遭遇する。そこで、テロリストたちと戦うことで以前の自分にグッと戻るんです。だから、あのアクションではだんだん戻っていく感じを意識しました。それと倉木は腕力が強いだけの男なので、投げるときは多少乱暴に力づくで投げるようにしましたね」とアクション演技について語った。

 西島さん自身にとって、このシリーズと出会ったことは大きかったようだ。「ここまで文字通り命を懸けてやらせてもらえる現場はそうそうないですからね。(『海猿』シリーズや『暗殺教室』で知られる)羽住(英一郎)監督は、僕たち俳優部を含め、スタッフの全パートが限界を超えないと撮れないようなカットを毎回要求してくる。全員がその状態になって、1カットをもぎ取ってくる撮影なんです。しかも、ドラマのときよりもハードルは格段に上がっていて。羽住組と関わる限り、常にレベルアップさせる姿勢は永遠に続くんじゃないかな、と(笑い)。逆に体が追いつかなくなったら、この現場にはいられないけれど、今はどんどん伸びている若いスタッフに負けないように自分も現場に向かっています」と前のめりで撮影に向かっている。

 劇場版に入る前には、羽住監督から「とにかく振り切れ!」と言われたという。「“振り切るためにこの世界に入ってきたのに、ここで振り切らなかったらいつ振り切るんだ”って。そういう現場です(笑い)。だから、怖いものは怖いですけど、試されているところもあるし、確かにここでやらなきゃ、いつやるんだ?とも思うから、本番前は“死ぬ、死ぬ”って脅えているけれど、危険なシーンも吹き替えなしで自分でやっています」と過酷な現場を楽しんでいる。

 フィリピンロケでの決死のアクションについては「映画を見た方は爆発のシーンや燃え盛る炎をCGだと思うかもしれないけど、本当に爆破させています。ビルの上でのアクションも、落ちたらアウトっていうビルの5階で実際にやったので、何度も足がすくんだし、もう死んでもいいって思わないと逆にできませんでした(笑い)。肉弾戦も本当にパンチを相手に当ててるし、銃も空砲とはいえ全部本物だから反動や音が大きくて。カーアクションもものすごかったですよ。それ以前に、自分ではコントロールできない、混沌(こんとん)とした中でアクションをやるのが意外と面白かったですね」と振り返った。

 ◇ダルマ役はたけしさんしかいない!

 今作では“ダルマ”をあのビートたけしさんが演じることも話題だ。「僕が以前『Dolls』(2002年)という映画でお仕事させていただいたのは北野武監督で、(俳優の)ビートたけしさんにお会いするのは実は今回が初めてだったんです(笑い)。でも、たけしさんは、自分が俳優としてやっていこうと思っていたころから俳優として尊敬していたので、今回の共演は得るものが大きかったですね。役者として大きいというか、ぶっ飛んだ人たちの集まりみたいな『MOZU』の現場を全部受け止めるあの大きさを目の当りにしたときは、感動で震えるものがありました」と、たけしさんの存在感に舌を巻く。

 たけしさんがダルマ役を演じることになって「ドラマを撮っているときにみんなと『もし映画化されたら、ダルマ役はたけしさんしかいないよね』って話はよくしていたんです。だから、たけしさんにダルマ役で出演していただけるって聞いたときは、驚いたし、プロデューサーの皆さんがよくぞ頑張ってくれたなと思いました」と話すと、西島さんは満面の笑みを浮かべた。その穏やかな表情には限界まで挑んで手に入れた確かな自信と、今作を間違いなく最高のものにしているという誇りが感じられた。

 「劇場版 MOZU」は西島さんのほか、香川照之さん、真木よう子さん、長谷川博己さん、小日向文世さん、池松壮亮さん、伊藤淳史さん、杉咲花さん、阿部力さんらドラマからのレギュラーキャストが再結集。さらに松坂桃李さん、伊勢谷友介さんが驚きの役どころで新規参入している。11月7日に全国で公開予定。

 (取材・文:イソガイマサト/フリーライター)

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