幼い兄弟がいなくなった母親を捜す3日間を濃密に描き出した「ぼくらの家路」(エドワード・ベルガー監督)が19日から公開される。ベルリン国際映画祭コンペティション部門で絶賛されたほか、ドイツ映画賞主要3部門にノミネートされた話題作。ドイツで6カ月にわたって行われたオーディションの最終日にやって来たというイボ・ピッツカー君の演技に引き込まれる。
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ベルリンで10歳のジャック(ピッツカー君)は、朝食を作って6歳の弟マヌエル(ゲオルグ・アームズ君)の世話をしている。シングルマザーの母親ザナ(ルイーズ・ヘイヤーさん)は、子育てよりも夜遊びと恋人との時間を優先していた。ある事件がきっかけとなり、弟と離れて養護施設に入ることになったジャックは、乱暴な上級生のターゲットとなってしまう。ようやく夏休みが来たが、母から迎えが遅れるという連絡が入る。ジャックは施設を飛び出して自宅に帰るが、鍵が閉まっていて、母親は留守だった。そして、マヌエルと一緒に母親を捜し始める……という展開。
ダルデンヌ兄弟監督作を彷彿(ほうふつ)とさせるようなカメラワークで、ジャックの行動をつぶさに追う。「ジャックは○○をした」という彼のすべての感情を抑制の効いた演出を積み重ねて物語は進んでいく。思ジャックのような子ども、あるいはザナのような母親は、日本にもたくさんいるだろう。幼い兄弟はネグレクト(育児放棄)されているが、この母親は子どもに愛情がないわけではない。昼間は子どもとピクニックに行き(ただし家族水入らずではない)、それを免罪符に夜遊びに繰り出すのだ。ジャックは家事とマヌエルの世話で、母親の言いつけを守り、甘えたい気持ちを持て余す。ジャックは10歳という年齢のため、母親のダメさ加減も分かってるが、一方で信じる気持ちも併せ持っている。四つ年下の弟は、置かれている状況が分かっていない。2人の違いが繊細に表現され、兄弟像がとてもリアルに描かれている。全く似ていない子役を配したのも、「男親が違うという裏設定でもあるのか?」と想像を巡らせられる。ジャックを演じるピッツカー君が弟を守るための必死の様相が印象的だ。そして、弟役のアームズくんの天使っぷりといったら……。けなげな兄弟を思わず抱きしめてあげたくなる。19日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作での“靴ひも”のシーンが好きです。
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