デッドプール:「X-MEN」とのコラボは? ティム・ミラー監督に聞く

映画「デッドプール」について語ったティム・ミラー監督 (C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved.
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映画「デッドプール」について語ったティム・ミラー監督 (C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved.

 米マーベル・コミックの中でも、一際目を引く異色のキャラクターが活躍する「デッドプール」が1日に公開された。すでに封切られた全米では、R指定作品ながら、興行収入3億6200万ドル(約398億2000万円)を超える大ヒットを記録し、世界興収も7億6300万ドル(約839億3000万円)を超えている(いずれもBOX OFFICE調べ、5月25日現在)。メガホンをとったのは、今作で長編監督デビューを飾ったティム・ミラー監督。大ヒットは「まったく予期していなかった」というミラー監督に電話で話を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇R指定に「一切のためらいはなかった」

 ――デッドプールには、人類を守るという正義感はまったくなく、彼が闘うのは、あくまでも自分のため。かなり自己中心的なキャラクターですが、なぜか憎めません。

 とはいえ、ちょっと嫌なヤツだよね、皮肉屋だし(笑い)。でも、彼のモチベーションは正しいと思う。彼の行動の原動力は「愛」だ。がん治療に励んだのも、恋人を一人にしたくないからだし、宿敵エイジャックスを探そうと躍起になるのは、自分を元の姿に戻してもらい、彼女と一緒にいられるようにしたいから。そんな彼だから、観客も彼を応援したくなるんだと思う。

 ――R指定にして、よかったと思うことは。

 せりふを心配しなくてよかったことだ。何を言ってもいいし、そのことによって、いろんなアイデアを自由に模索できたからね。

 ――過激な描写を盛り込むことに、ためらいはなかったですか。

 せりふについても暴力表現についても、一切ためらいはなかった。僕自身、過激過ぎるとは思わなかった。ただ、ジョークのいくつかは個人攻撃のようなものがあって、ちょっとやり過ぎかなと思うものはカットしたよ。ベッカムの声についてのジョークは、彼はもともとイケメンだし、才能があるし、「まあ、大丈夫だろう」ということで残したけれどもね。

 ◇ライアン・レイノルズは「最低なヤツ」?

 ――デッドプールことウェイド・ウィルソンを演じたライアン・レイノルズさんとの仕事はいかがでしたか。

 アイツは最低なヤツだよ。“いいヤツ”を装って、みんなをだましているんだ……というのは冗談で、本当にいいヤツだよ(笑い)。コメディーもドラマもできるし、聡明だし、運動能力も高い。なんでもできる役者に恵まれるのは、監督冥利につきることだよ。特に、初監督の僕にとってはね。

 大体、スーパーヒーローを演じるときは、筋肉のスーツというものを下に着てもらうんだけど、ライアンにはそれが必要なかった。彼の場合はむしろ、脱いでもらったぐらいだ(笑い)。それぐらい鍛錬されていたからありがたかったよ。

 ――なんでもレイノルズさんは、「デッドプール」のセットに、難病の子供たちを招待するなどしたそうですね。

 本当にライアンは、人間としても素晴らしいヤツだ。友達思いだし、世界のことも思っている。彼は普段から「メイク・ア・ウィッシュ」(3歳以上18歳未満の難病と闘う子供たちの夢をかなえる手伝いをする非営利の国際的ボランティア団体)で活動しているんだけれど、知り合いのがん患者が撮影現場に来られないのであれば、デッドプールのスーツを着て飛行機に乗って会いに行くし、一緒に映画を見たり、遊びに行くのでもなんでもするよと言ってくれたんだ。そういうことができるのがライアンなんだ。ほかにも、撮影現場のみんなにアイスをおごったり、みんなを笑わせたり、ほかの役者を手助けしたりと、本当にいいヤツだよ。

 ◇次回作のビジョンは?

 ――アクションシーンも見どころですが、苦労したのはどのシーンですか。

 コロッサス(X-MENのメンバー。今作ではデッドプールの監視役)のシーンだね。CGのキャラクターだし、なんといってもかなり巨大だから。ジーナ(エンジェル・ダスト役のジーナ・カラーノさん)ほどの素晴らしい女優が相手でなければ、成立しなかっただろうね。彼女は自分でスタントをこなせるんだ。この作品が成功するか否かは、あのシーンがうまくいくかどうかにかかっていた。どんなにユーモアが楽しめても、こういうタイプの作品はアクションが求められるし、今回の製作費の3~4倍の規模の作品と比較されることは分かっていたから、見せ方にもかなり気を使った。その点ではうまくいったと自負しているよ。

 ――そういえば、製作費は5800万ドル(約63億8000万円)と、ほかのヒーロー映画に比べてだいぶ少ないですよね。苦労しませんでしたか。

 僕はもともとVFX畑の人間だから、そういったことは理解しているつもりだけど、どれだけその状況に耐えられるかには集中したよ。どの作品とはいわないけれど、マンガを原作にした映画は、VFXによる派手なアクションシーンが満載で、僕らの作品より20~30分ぐらい長かったりする。そういうシーンがずっと続くと、僕自身、飽きてしまうんだ。尺が長いからVFXにかかるお金も高くなる。僕らが作る作品としては、(今回のような)105分ぐらい(実際は108分)の上映時間がちょうどいいんだ。

 ――今後、「デッドプール」と「X-MEN」のコラボレーションはあり得ますか。

 「デッドプール2」のあとに、一つのゴールとして「X-FORCE」があればいいなという話はもうしている。僕自身、デッドプールの居場所は、「X-MEN」ではなく「X-FORCE」にあると思っているんだ。「X-FORCE」は、いわゆる 「X-MEN」のブラックオプスバージョン(非合法活動)だからね。「アベンジャーズ」や「X-MEN」のキャラクターは、道徳的に正しいものが多い。でも、現実においてもマンガの世界でも、グレーゾーンの方がリアリティーがあると僕は思うんだ。正しいことのために悪いことをすることだってある。まさに、デッドプールのモラルのコンパスがそう。それは、ウェイド自身がそうやって生きてきたからだ。

 ――その「デッドプール2」も監督することになりそうですが、話せることはありますか?

 ケーブル(マーベル・コミックに登場するヒーローで、デッドプールの友人)は登場するよ。もう発表済みだけどね(笑い)。今回の作品よりもいい作品になるよ。それ以外は、まだ何も言えないな(笑い)。

 <プロフィル>

 CGやVFXの分野で20年以上もキャリアを積み、CMやゲームの予告映像、アニメーションなどで脚本、監督を手掛けた実績を持つ。共同脚本を務めた「Gopher Broke」(2004年)は、米アカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされた。「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(10年)ではVFXクリエーティブ・スーパーバイザー、「ドラゴン・タトゥーの女」(11年)ではタイトルシークエンスの制作を指揮。「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(13年)のオープニング、プロローグを監督した。今回「デッドプール」で長編監督デビューを果たす。

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