放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
寺尾聰さん主演の連続ドラマ「仰げば尊し」(TBS系、日曜午後9時)。これまで2回が放送され、いずれも平均視聴率11%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を超える好スタートを切った。佐藤隆太さんが熱血教師を演じ、市原隼人さんや小出恵介さんらが出演して大ヒットした「ROOKIES」のスタッフが再集結し、「半沢直樹」「下町ロケット」など数々のヒット作を生んできた「日曜劇場」枠で展開する新たなヒューマンドラマだ。制作を担当する東宝の佐藤善宏プロデューサーに、ドラマのポイントと見どころを聞いた。
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ドラマは、1980年代に神奈川県立高校の吹奏楽部を全国有数の強豪校に育てた中澤忠雄さんの実話がモチーフで、事故の後遺症で音楽に背を向けていた主人公のサックス奏者・樋熊迎一(寺尾さん)が、荒廃した高校で問題児たちと真正面から向き合う姿を描く青春ストーリー。「ROOKIES」のいずみ吉紘さんが脚本、平川雄一朗さんが演出で再びタッグを組む。寺尾さんは28年ぶりの「日曜劇場」主演で、娘の奈津紀を多部未華子さん、学校再建のため樋熊を美崎高校へ招き入れる校長・小田桐寛治を石坂浩二さんが演じている。
TBSとドラマ作りを一緒にやりませんかって話の中で、僕が「ROOKIES」の映画版を経験していたこともあって、熱いドラマを作りたいよねってなった。神奈川県立野庭高校の中澤忠雄さんが、わずか2年で弱小吹奏楽部を率いて全国大会で金賞を取るという奇跡を起こした実話があって、本を読んでみた。先生と生徒の絆っていうのが本当に深く描かれていて、何もなかったところから跳躍する瞬間が見事に描かれていたので、そこをドラマ化できたら面白いんじゃないかなって感じました。
原点回帰というわけではないですけど、どストレートなドラマを作りたかった。東宝とTBSのドラマでいうと、昔はそれこそ「積木くずし」とかありましたけど、僕も「ROOKIES」をやってきましたので、学園ドラマというと、マンガ原作などでおしゃれだったり、変化球だったりするものがある中で、ベタでストレートに先生と生徒の絆を描くドラマを作ろうって思ったんです。
中澤さんをモデルにしたオリジナルドラマを作ろうという企画の段階で、寺尾さんに「興味ありますか」とご相談はしていました。寺尾さんには、みなさんがお持ちの優しげで包み込むようなイメージでお願いしようと思っていたんですが、実際は全然そんな感じではなく、いろいろなことに興味を持たれて、チャレンジするような、とにかくエネルギーを感じたんです。学生からしたら、親よりも上の世代の教師から、エネルギッシュにいろいろなことを教わるっていう学園ドラマっていうのはないんじゃないかなってことで、これは寺尾さんしかいないと思った。寺尾さんからも「音楽をやる人間はこんなに枯れていないよ」っていうご指摘もあって一緒に作り上げていった感じですね。69歳になるんですけど、本当にエネルギッシュで、いまだダンディーで枯れていない。それがすごくすてきだなって思ったので、そんな寺尾さんをイメージして脚本も進めていきました。
「音楽っていうのは」とか、「人にはリズム感っていうのがあって、それがお芝居に生きるんだよ」とか、寺尾さんの言葉をいただいて、音楽への造詣が深い。このドラマにとってプラス要素に働くんだろうなっていうのは感じましたね。「音楽が好きな人はこういうせりふは言わないんじゃないか」っていうようなアドバイスをくださるので、樋熊迎一先生でありつつ、寺尾さん自身の思いが入ったドラマになっているんじゃないかって思いますね。中澤先生はプロのチューバ奏者で、今回の樋熊先生もプロのサックス奏者だし、寺尾さんもプロのミュージシャン。音楽でお金を稼ぐ、人前に立つっていうのを分かっていらっしゃるっていうのはとても大きいですね。
教員免許を持っていますが、あくまでもプロの音楽家であって、普通の先生が言いそうなことは言わない。おだててやらせるのではなくて、厳しいことつらいこともズバっと言う教師で、スタンドアローンな存在としての強さを子供たちとの向き合いでも発揮して、普通の向き合い方とは違う形になる。子供たちもそのエネルギーに負けないくらいのぶつかり合いが見られると思います。
「ROOKIES」と同じことをしてもしょうがないので、「ROOKIES」は一緒に生徒と走る感じだったんですけど、今回の場合は先生がいろいろなことを経験していて、プロのミュージシャンでもある。そういった人が生徒たちを引き上げるにはどうすればいいのか、大人目線で、ただそこに流れる人としての優しさはあるという、今までと違う形になると思います。
イケメンだからっていう選び方ではなく、本当に特徴的、個性的だから、そういうふうなとらえ方で選びました。まだ色がついていない、これからのドラマ界、映画界を支えてくれるであろう子たちを一人一人、大人なのか、子供なのかっていう絶妙の年代の人をキャスティングしたつもりです。演技はそれぞれしっかりしていますので、その子たちが一つになったときに大きな力が生まれるのかなって気はしています。
村上君の切ない、繊細な感じはドラマの中に合っていると思った。青島は、音楽で一回挫折を経験して、素直になれないというか、自分がやりたいことに素直になれないっていうのがいまの状態で、この年齢の子が持っている我は強いけど心は繊細という見え方が合っていると思った。
真剣佑は本当に多才。英語がペラペラでアクションもできる。すごくエリートな感じがするんですけど、そこをヤンキーにしたかった。何でも分かったふうだけど、だからこそねじ曲がっているみたいな。ちょっと大人を斜に見ている、でも優しい役どころ。本人の落ち着きを含めていいんじゃないかなって思いました。
太賀君は人間社会に必ず必要な潤滑油的な子。実際、本人もそうだし、北村君は子役の経験もあり、演技も立っていて、どストレートな熱情、エネルギーみたいなものが、役としても顔に出ている。佐野君もそうなんだけど、みんなとの間をはかって、気を使っている。一人大人というか一番心配性なのかな。
この年代だとどのドラマにも映画にも、キャスティングリストに載っているんじゃないかなって。非常に可憐(かれん)で素敵な女性。熱い情熱を持つ、エネルギーというか、力強い面もあれば、澄ましているというか、透明感のある顔を見せることもできる。その両面を持った女優さんで、絶妙な感じがしますね。難しい役をたくさんやられていて、そういった経験値を含めて今回、出してくれるんじゃないかって期待しています。
それぞれの瞬間瞬間、出会いがあると思うんですね。これをやるってことは自分の青春って何だったんだろうってことや、この先、どう進むんだろうって、大人とどう向き合い、どうアドバイスをもらうのかとか、それを役としても一番、しっかり考えてくれる子たちではあると思うんですね。このドラマでやっていることを本当に乗り越えると、将来の進む道であるとか、役とともに考えられる3カ月になると思いますし、代表作になってほしいって思います。
一世代上でプロのミュージシャンである父から、この子供たちに、何を伝えたかったか、娘として、間に入って受け継ぐものの立ち位置をやってほしい。奈津紀が教師だったら、生徒たちと一緒に走る物語になっていたと思うんですけど、実際に思いや技術を受け継ぐのは娘になるのかなって。生徒たちの前では見せられないものでもあるので、そこは家族が受けていた思いっていうのはドラマの中でもきちっと描きたいと思います。
包み込むような大人というか、本当の優しさ担当ですね。ただ校長も、何とか変えていこうってチャレンジャーなんです。石坂さんも本当に若々しく演じていただいてます。
日曜劇場っていうブランド力はすごい。プレッシャーしかありません。いま視聴率がいいのは家族で見られる番組です。楽しいし、勉強になる。そこをもっと我々も目指して、寺尾さん、石坂さん世代、多部さん世代、若手、それぞれが感じられるドラマを作っていきたい。それが「二兎を追うものは一兎をも得ず」にならないように(笑い)。日曜9時は、そろそろ寝ようかって時の一服の清涼剤という位置なので、元気が出るというか、ちゃんと気持ちと気持ちがつながったときの、理解し合えたときのすっきりさ。この気持ちが通じたってなってくれたらなって思いますね。
「もうこれだね」って、石坂さんも言っていたんですが、「仰げば尊し」というのは恩師に対する感謝の歌なので、樋熊という教師に出会えたことで変わることができた。出会いが人を変えるという意味ですね。いま教師に感謝するってなかなか難しいのかもしれませんが、一つの理想を見せられたらと思います。
普通の先生ではないので、だからこそ言えるっていう部分、子供たちから見ると2世代上の大人がどう子供たちと向き合うのか。どうぶつかり合うかっていう学園ドラマを超えた、本当に熱いドラマがある。そこが見どころになるんじゃないかなと思います。また、吹奏楽っていうのは音を重ねていく作業なので、一つ一つの絆が生まれていくたびに、思いが強くなる、絆が深まっていくドラマだと思います。そうなった時に、出会えてよかったと人が人に感謝する、コミュニティーができるという、今の世の中、薄い部分だと思うので、そこをちゃんと提示すれば、きっと共感してもらえると思います。
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