ディズニー・スタジオが、ウォルト・ディズニーの遺作となった1967年の同名アニメーションからインスピレーションを受けて実写映画化した「ジャングル・ブック」(ジョン・ファブロー監督)が、11日に公開された。ラドヤード・キプリングの児童文学が原作で、ジャングルでオオカミに育てられた少年の成長物語を、最先端の驚くべき映像で描く。
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人間の少年モーグリ(ニール・セディさん)は、赤ん坊のころジャングルに一人取り残された。黒ヒョウのバギーラ(声:ベン・キングズレーさん)に助けられて、オオカミのラクシャ(声:ルピタ・ニョンゴさん)が母親代わりとなって育て、オオカミの群れを率いるアキーラ(声:ジャンカルロ・エスポジートさん)に「仲間のために尽くす」というジャングルの掟(おきて)を教え込まれながら、オオカミの兄弟たちと元気に暮らしていた。だが、人間が操る「赤い花」と呼ばれる“火”によって深い傷を受け、復讐(ふくしゅう)に燃えるトラのシア・カーン(声:イドリス・エルバさん)によって、モーグリはジャングルの敵とされて命を狙われる……という展開。
動物たちの愛に包まれて、ジャングルでスクスクと育った少年モーグリ。しかし、彼の前にトラという敵が立ちはだかる。大きな壁が現れ、それに立ち向かっていくことで成長する少年。自分が何者なのかを考えて、身の振り方を自らの手で選び取るまでを描くというクラシカルともいえる成長物語と、最先端の映像との融合が十二分に楽しめる。森の中を自分の庭のように、縦横無尽に駆け回るモーグリをカメラが追えば、そこには広大なジャングルが広がる。鬱蒼(うっそう)とした森や、気持ちよさそうな川が流れるジャングルのほとんどがコンピューターグラフィックス(CG)なのだが、その場に入り込んだような迫力に息をのむ。視覚効果スーパーバイザーは、「タイタニック」(97年)で米アカデミー賞の受賞歴があるロバート・レガートさん。そしてやはりフルCGで描かれた野生動物が本物と見まがう出来だ。動物たちはシリアスな顔をして真面目なせりふを放つので、そこが妙に面白く(日本語吹替版で見るとさらに!)、ツボにハマるとこの世界観がクセになる。
動物は、人間を反映させた重要なキャラクターだ。理性、愛情、快楽、権力欲、勇敢さ……人間の持つさまざまな面がしっかりと描き込まれている。2000人の中から選ばれたというモーグリ役のセディさんは、キラキラと輝く目としなやかに動く体で無名の新人の大抜てきを見事に成功させた。ハリウッドを代表する名優たちが声を演じ、日本語吹替版には、バギーラを松本幸四郎さん、バルーを西田敏行さん、ラクシャを宮沢りえさん、シア・カーンを伊勢谷友介さんら名のある俳優たちが担当。食いしん坊で気のいいクマのバルー役の西田さんがいい味を出しており、歌も披露して愉快で緊張感のほぐれるシーンになっている。
「アイアンマン」(2008年)のファブロー監督作。最高の技術を意識させずに、魅惑的な物語にすんなりと入り込ませる手腕が秀逸だ。11日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。クマのバルーが、ホントにツボでした。
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