堤真一×岡田将生:ドラマ「名刺ゲーム」で6年ぶり共演「ちょっと照れる」

「連続ドラマW 名刺ゲーム」に主演した堤真一さん(右)と共演の岡田将生さん
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「連続ドラマW 名刺ゲーム」に主演した堤真一さん(右)と共演の岡田将生さん

 俳優の堤真一さんが主演し、岡田将生さんが共演するWOWOWの「連続ドラマW 名刺ゲーム」(木村ひさし監督、瀧悠輔監督)が2日、スタートする。放送作家の鈴木おさむさんが、エンターテインメント業界の“闇”に焦点を当てて描いた同名のヒューマンサスペンス小説を、映画「3月のライオン」(2017年)などの脚本で知られる渡部亮平さんが脚色した。WOWOWドラマ初出演となる堤さんと、WOWOWドラマの出演は、2013年の「チキンレース」以来2度目となる岡田さんに、作品の見どころや久しぶりに共演した感想などを、この日の撮影終了直後に聞いた。

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 ◇演じながら嫌になる役?

 「失礼に聞こえてしまうかもしれませんが、ほんと、正月に久しぶりに会う親戚のおじさんみたいなんです」と堤さんのことを表現する岡田さん。堤さんが横から「酔うとこいつ、おっさん、うるさい、黙れ!って言うんですよ(笑い)」という暴露にもめげず、「それは、しつこいおじさんだからですよ。1時間もずっと、ちょっかいかけてくるからそういうことを言うんです!」と大真面目に反論する。そんな2人のやりとりからは気心の知れた関係性がうかがえるが、今回の「名刺ゲーム」においては敵対する間柄だ。

 全4話からなる今作。堤さんが演じるのは、テレビ局の敏腕プロデューサー、神田達也。ある日、岡田さん演じる“謎の男X”に監禁された上に、高校生の娘(大友花恋さん)を人質にとられ、自分がもらった名刺を、その持ち主に正しく返すよう迫られる。間違えれば、自分と娘にはめられた首輪のどちらかが爆発するという“死のゲーム”を進める中で、自身のあしき行いに気づかされていくというストーリー。

 神田は、ゲームを一つクリアすることで、さらなる罪の意識を背負わされていく。そのため、「『この役もう嫌だ』とつらくなったら嫌だなあ(笑い)」と思いながら日々の撮影に臨んでいたという堤さん。その一方で「神田って、実はそんな大物じゃないんですよ。やっていることもセコい。言ってみれば“小物”。小物の威張り方っていうのが難しいんですよ」と打ち明けながらも、どこか楽しげだ。

 ◇根っこを大事にしつつ変化を楽しむ

 かたや岡田さんは、台本を読みながら、「WOWOWの作品と聞いて、だからこんなに“攻めている”作品ができるんだ」と感じたという。出演を決めたのは、「そこに自分も参加したいと思った」こともあるが、一番は、「堤さんとご一緒したかった」から。その堤さんを今回、追い詰めていくわけだが、「僕が演じるXも、どんどん謎が深まっていきます。復讐(ふくしゅう)だけの話だったら嫌だなあと思っていたら、最後は、ああなるほどと納得できました」と、Xという役の予想以上の深さにやりがいを感じたようだ。

 堤さんは、売れっ子になった神田が、「自分の態度が変わっていることに気づいていない。(偉ぶることが)当たり前だと思っている。そういうところが、この人、どちらかというとバカなのかなって思ってしまう部分もある(笑い)」と根っからの悪人ではないと指摘する。その上で、「そういう根っこになるものがないと、一番最後の展開や、娘との関係を表現する上で説得力が薄れてしまう。変化した(嫌な)神田を演じることも、もちろん演者としては楽しみますし、演じる役の振り幅が大きければ大きいほどドラマとしては面白いかもしれませんが、もともとの性格を大切にする」ことを心掛けながら演じたと明かす。

 一方の岡田さんは、Xという男を「最後のところまで、段階を踏んで変化を見せていけたらと思っていますし、逆に1話からXの素性が分かる雰囲気を、明からさまにではなく、(視聴者に)分からないよう少しずつでも出せたらいいなと頭の中では考えています」と意欲を見せる。

 ◇「おいちゃん」と慕う関係

 このインタビューは、10月下旬に行われた。インタビューの直前、第4話のあるシーンの撮影を見学することができた。この日は、堤さんと岡田さんの共演シーンの初日でもあった。2人はすでに、映画「プリンセス トヨトミ」(2011年)で共演済みで、以来、スタジオですれ違ったときにはあいさつしたり、岡田さんが堤さんの舞台を見に行ったりなどし、今では岡田さんが堤さんを「おいちゃん」と慕うほどの関係だ。しかし、面と向かっての共演は6年ぶり。久しぶりの共演を「ちょっと恥ずかしかったですね」と堤さん。岡田さんも現場に入ったときは緊張したそうだが、堤さんの「おはよう」のひと言で、「一瞬にして、以前と同じ関係の空気感を作ってくださったので、よかったあと思いました(笑い)」と堤さんの配慮に感謝する。

 見学したのは緊迫感が漂う場面だったため、現場は“穏やかな雰囲気”というわけにはいかなかったが、堤さんは、「楽しんで現場にいたいという思いもあるし、それをそのまま引きずって芝居をやっちゃうのはダメだけど、彼(岡田さん)はそういう人じゃない。楽しく、その中で集中して、というのが僕の理想」と、今後続く岡田さんや他の共演者との芝居を楽しみにしている様子だった。

 ◇リアリティー残すエンターテインメント

 堤さんが今作について「エンターテインメントではあるけれど、親子関係についても描かれているし、いわゆる今のテレビ業界を、ある種、ディスりながら、これからどうやって進んでいくべきなのかと疑問を投げかけている作品」と表現すれば、岡田さんも「うっすらとトゲがあるし、すごくエッジが効いた作品だと思います」と語る。

 岡田さんは「出ている人たちが、僕も含め、クロかシロかで割り切れないグレーの人たちなんです。実際、人って、いい顔をしているときもあれば、悪い顔をしているときもある。その部分が面白さじゃないかと思います」と魅力を語る。昨今は、フィクションドラマにリアリティーを求める風潮があるが、「リアル過ぎると、それはそれでつまらないのかなと思いますし、だからこそエンターテインメントという言葉があると思うので、その、ギリギリのところを、お芝居で出せたらいいなと思います」と意気込む。

 堤さんも「よくよく(台本を)読むと、本当に天使のような善人は一人もいない。夢を持つこととか、それを実現させるためには、必ずしもきれいごとだけでは済まされないし、人を押しのけることもある。そういう競争社会にいるということを、神田自身も自覚している中での話なので、単に“勧善懲悪な話”ではないんです」と解説する。そして、「すごく腹の立つ上司だって、家庭に帰ったらすごくいいお父さんかもしれないし、世の中で起きていることも、僕らは一面的な部分しか分からない。多面的で、角度が違えば人の見方が違うというのはドラマの基本。そういう意味では、この作品はリアルです」と太鼓判を押す。

 その上で、「業界に、本当にそういう(神田のような)人いるの?と思うじゃないですか。でも、鈴木おさむさんはモデルがいるとはっきり言いましたから」と意味深発言も飛び出した。その言葉に、「誰なんだろう……」とつぶやく岡田さん。すると堤さんは「俺もそれ(鈴木さんに)追及したんだけど、いや、言えないって(言われた)」と話していた。

 ドラマは、2日から毎週土曜午後10時にWOWOWプライムで放送。全4話。第1話は無料放送。

 <堤真一さんのプロフィル>

 1964年7月7日生まれ。兵庫県西宮市出身。1987年、NHKドラマ「橋の上においでよ」で主演デビュー。その後、舞台、映画、テレビで活躍。主な映画出演作に「フライ、ダディ、フライ」(2005年)、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(05、07、11年)、「クライマーズ・ハイ」(08年)、「孤高のメス」(10年)、「プリンセス トヨトミ」(11年)、「宇宙兄弟」(12年)、「俺はまだ本気出してないだけ」(13年)、「土竜の唄」シリーズ(14、16年)、「海賊とよばれた男」(16年)、「本能寺ホテル」(17年)など多数。待機作として12月9日公開の「DESTINY 鎌倉ものがたり」がある。

 <岡田将生さんのプロフィル>

 1989年8月15日生まれ。東京都出身。2006年に俳優デビュー。主な映画出演作に「アヒルと鴨のコインロッカー」「天然コケッコー」(共に07年)、「重力ピエロ」(09年)、「プリンセス トヨトミ」「アントキノイノチ」(共に11年)、「宇宙兄弟」「ひみつのアッコちゃん」(共に12年)、「ST 赤と白の捜査ファイル」(15年)、「秘密 THE TOP SECRET」(16年)、「銀魂」「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」(共に17年)など。待機作として18年1月公開の「伊藤くん A to E」がある。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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