俳優の大森南朋さんが稀代の詩人・北原白秋役を、EXILEのパフォーマーで俳優としても数多くの映画やドラマに出演しているAKIRAさんが気鋭の音楽家・山田耕筰役でダブル主演する映画「この道」(佐々部清監督)が2月末にクランクアップ。白秋・耕筰共にこよなく愛したという明治11(1878)年に創業した箱根の老舗・富士屋ホテルで会見を開いた。
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同所は「007シリーズ」をはじめ多くの洋画の撮影に使われたが、約140年の歴史の中で、日本映画の撮影は初めて。「半落ち」(2004年)で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した佐々部監督がメガホンをとり、劇場版アニメ「かぐや姫の物語」(13年)や14年に放送されたNHK連続テレビ小説「マッサン」で知られる坂口理子さんが脚本を担当した。キャストは、白秋が師と仰ぐ歌人・与謝野鉄幹役を松重豊さん、鉄幹の妻であり白秋の姉的存在である女流詩人・与謝野晶子役を羽田美智子さん、「赤い鳥」創刊者・鈴木三重吉役を柳沢慎吾さん、白秋の最初の妻・松下俊子役を松本若菜さん、白秋の3番目の妻・菊子役を貫地谷しほりさんが演じている。
大正7(1918)年に日本の子供たちに、日本人による「童謡」を作ろうと文学者の鈴木三重吉が雑誌「赤い鳥」を刊行し童謡が誕生してから今年で100年を迎える。三重吉は奇抜な詩で名をはせていた詩人・北原白秋と、ドイツ留学を経て日本で初めて交響楽団を結成した音楽家・山田耕筰に童謡創作の白羽の矢を立てる。最初は才能がぶつかり反目する2人はあることがきっかけで手を取り合い、数々の童謡を世に出していく。だが時代の波によって2人は苦悩の淵に立たされる……というストーリー。
会見で、大森さんは「北原白秋という人物が、こんなに波瀾(はらん)万丈な人生で人間味あふれたすてきな人物だったということを今回初めて知りました。私は白秋の詩を全部読み切ったわけではないのですが、今回題材となっている『この道』の歌の世界にすごく引き込まれましたし、故郷への思いと情景を見たくてクランクインする前に白秋の生まれ故郷・柳川まで行かせてもらったりもしたので、『この道』の世界が好きです」と役への思いを語った。
AKIRAさんは、「山田耕筰という日本を代表する音楽家・作曲家に挑戦させていただいて、本当に恐縮することばかりでしたが、今回改めて日本の音楽の素晴らしさに触れることができました。今作で私は36、52、66歳の山田耕筰を演じさせてもらったのですが、時代が違う中で同じ役を演じるというのはとても大変でしたし、音楽家・作曲家ということで今回、指揮・バイオリン・ピアノを習得して劇中で披露していますので、そういった意味でも、ものすごくやりがいのある作品でした」と語っている。
映画「この道」は今年秋以降に公開予定。
おもなキャストと監督のコメントは次の通り。
北原白秋という人物について、イメージではすごく真面目で難しい人なのかなと思っていたのですが、こんなに波乱万丈の人生で人間味あふれたすてきな人物だったということを今回初めて知りました。
実際にお会いしたことがないので、どんな人だったかは文献を読むなどするしかなかったのですが、脚本の中でどれだけ自由に北原白秋という人間に近づけるかを考えながら演じました。その中で少しずつ積み重なって北原白秋になっていると思いますので、映画の完成を楽しみしています。
私は白秋の詩を全部読み切ったわけではないのですが、今回題材となっている「この道」の歌の世界にすごく引き込まれましたし、故郷への思いと情景を見たくてクランクインする前に白秋の生まれ故郷・柳川まで行かせてもらったりもしたので、「この道」の世界が好きです。この富士屋ホテルでの撮影も邦画で初と聞いておりますので、非常にありがたい限りです。とにかく現場が楽しくて、素晴らしい作品になると思っております。ぜひ楽しみにしてください。
山田耕筰という日本を代表する音楽家・作曲家に挑戦させていただいて、本当に恐縮することばかりでしたが、今回改めて日本の音楽の素晴らしさに触れることができました。今回山田耕筰についていろいろと調べて、ものすごく波乱万丈な人生を送られていたというのは分かっていたのですが、それを超える北原白秋との熱くもおかしいすてきな青春を過ごしてきたのが台本を読んで知ることができました。
本作で私は36歳、52歳、66歳の山田耕筰を演じさせてもらったのですが、時代が違う中で同じ役を演じるというのはとても大変でしたし、音楽家・作曲家ということで今回、指揮、バイオリン、ピアノを習得して劇中で披露していますので、そういった意味でも、ものすごくやりがいのある作品でした。
映画『この道』は偉人伝というよりも、日本の音楽を支えてきたたくさんの方々の青春映画だと思います。この映画を締めくくる最後の日がこの富士屋ホテルということも何かご縁があると思いますし、これだけの大先輩方が集結して会見ができるということはめったにないと思いますので、ある意味、歴史的瞬間に立ち会えて光栄です。とてもすてきな作品となると思うので、公開まで応援してください。
与謝野鉄幹と晶子は日本一有名な夫婦だと思います。晶子を演じた羽田さんとは夫婦漫才のような呼吸でやることに命を懸けておりました。撮影は2月に京都でも行ったのですが、時代物をやるというのは腰が引けるんですよ。案の定、日本家屋での撮影で寒さとの戦いでした。あとは鈴木三重吉を演じる柳沢慎吾さんの口撃をどう避けるか(笑い)。今日の撮影シーンで、多少長いせりふがあったんですけど、羽田さんに防波堤になっていただいて何とかその口撃を避けることができました(笑い)。
与謝野晶子は「みだれ髪」を書いて一世を風靡(ふうび)した破天荒かつ前衛的な女性ですが、その女性が弟のように可愛がっていたのが北原白秋であって、こんなに無邪気で可愛い、放っておけない男性だったと初めて知りました。
母校の校歌が北原白秋と山田耕筰の作詞・作曲だという友達が何人かいるのですが、いまだに校歌を覚えていて歌えるということはやっぱりこの2人が偉大な作曲家であり、作詞家だったんだと感じました。
大森さんとは10年ぶりの共演です。松重さんとは20年ぶりというすごく長い時間を経てまたご一緒させていただき、自然に夫婦のような空気を作ることができました。この富士屋ホテルでの撮影は本作にとってはこの上ない舞台だったと思います。時代のにおいがしみ付いた歴史って確実に映像に映ると思いますし、役者として本当にありがたいことで重みを感じさせていただきました。とてもいい映画になると期待をいっぱい持っています。
私の演じた菊子は白秋の3番目の妻で、その才能にほれて白秋にはすごく自由に生きてほしいと願う一方、白秋との子供のことが気がかりでたくましく生きた人だと思います。今まで大森さんとは何度か共演をさせていただいたのですが、ちゃんとお芝居をするのは今回が初めてで、大森さん演じる白秋がすごく可愛らしくて母性本能をくすぐられました。白秋にほれた女たちの気持ちがよく分かります。
私が演じた松本俊子は、北原白秋の最初の妻です。与謝野晶子と同様、俊子も不倫で白秋と恋に落ちて結婚したいろいろな意味で強い女性です。今回は大森さんと2人のシーンが多かったのですが、大森さんが積極的に撮影前から話してくれましたので、スムーズに気持ちが入りました。佐々部監督が最初の衣装合わせの時に「白秋と俊子は先を生きていってほしい」ということをおっしゃっていて、明治時代、大正時代を生きた白秋なので、先を生きるってどういう意味だろうと自分なりに考えまして、その時代感を出さないようにしようと思いながら演じました。その場に存在する女性のように演じました。
鈴木三重吉は、いち早く北原白秋と山田耕筰の才能に気づき、子供たちのために「童謡」の作詞・作曲をしてくれないかと白羽の矢を立てる、いわばプロデューサー的な存在です。白秋と耕筰の2人を結びつけるという意味では重要な人物です。この撮影に入る前ですが監督と打ち合わせをした時に、「僕はカメラの横で『よーい、スタート!』と言って役者さんの芝居を見るんですよ」と言ってくださって、カメラの横で芝居を見てくれる監督なんて今はもうほとんどいないと思うんです。だからこの言葉は本当にうれしかったです。
北原白秋と山田耕筰というある意味で日本の偉人伝なのですが、最初から偉人伝はやりたくないなと思っていました。尊敬するミロス・フォアマン監督のモーツァルトを描いた「アマデウス」という映画があって、人間臭くてちょっと滑稽(こっけい)で悲しくておかしい、そんな有名人の話だったらやれそうな気がしまして、そんなことをやろうと最初に大森君とAKIRA君と本読みをしながら話しました。大森君には子供のような大人を演じてほしいと思いまして、特に北原白秋という人物はきちんとしていなくてどこか色っぽい感じを出してほしいとお願いをしました。AKIRA君は、バイオリンの習得、ピアノの習得など本当に初めてのことに真っすぐ向き合ってくれました。白秋の妻みたいな部分を真っすぐにAKIRA君が演じてくれて2人のコンビネーションがとてもうまくいき、夫婦のようで奇妙な友情物語になっていると思います。今回、この歴史ある富士屋ホテルで撮影をすることができ本当に感謝しています。これだけのキャストが集まる大団円にふさわしい場所だと思います。
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