まんぷく:「塩軍団」でひときわ目を引く存在感 話題の“演技派”前原滉の横顔…

NHK連続テレビ小説「まんぷく」に“塩軍団”の一人、小松原完二役で出演している前原滉さん (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「まんぷく」に“塩軍団”の一人、小松原完二役で出演している前原滉さん (C)NHK

 女優の安藤サクラさんが主演を務めるNHKの連続テレビ小説「まんぷく」に、「たちばな塩業」で働く男たち(通称・塩軍団)の一人、小松原完二役で出演している俳優の前原滉さん。小松原はランニングシャツに丸メガネがトレードマークの、いつも笑顔で癒やしを与えてくれる好青年で、彼を推しメン(お塩メン)に選んでいる視聴者も多いという。個性的な「塩軍団」メンバーの中でも、ひときわ目を引く小松原だが、役を演じている前原さんはどんな青年なのだろうか……。

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 ◇菅田将暉主演「あゝ、荒野」の岸善幸監督は「天才的」と紹介…

 前原さんは1992年11月20日生まれの26歳。小栗旬さんや田中圭さん、綾野剛さん、木村文乃さんといった実力派が所属するトライストーン・エンタテイメントが売り出し中の俳優だ。筆者が前原さんに取材機会を得たのは、菅田将暉さんが第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など数々の映画賞を獲得した「あゝ、荒野」(2017年公開)に出演したときのこと。メガホンをとった岸善幸監督は、前原さんを「天才的」と紹介してくれた。

 この作品で前原さんが演じたのは、前編のクライマックスシーンで衝撃的に散っていった「自殺抑止研究会」の主宰・川崎敬三。「まんぷく」で見せるほのぼのとした表情とは180度違う、エキセントリックな役柄でスクリーンを支配するような存在感を示した。

 ◇オーディションの相手役から本編出演を勝ち取った確かな実力

 「岸組」といえば、ワンシーンの長回しを何度も撮影するなど現場は独特で、俳優には演技力はもちろん、忍耐力や創造性も要求される過酷な現場だが、前原さんは不思議な縁で岸組に参加することになる。最初は俳優として呼ばれたのではなく、ヒロインオーディションの相手役でのオファーだった。つまり、出演者ではなかったのだ。

 菅田さんの相手役を決める重要なオーディション。岸監督は、普段は助監督が務めることが多い相手役を、“演技ができる”というキャスティングプロデューサーの推薦で前原さんに頼んだ。

 5人の候補者女優の相手というのは、それなりにハードな役割だ。前原さんも「つらかった」とこぼしていたが、さまざまな女優が仕掛ける芝居に、臨機応変に対応する前原さんの演技力、想像力は光るものがあったと岸監督は褒めていた。さらに岸監督は「話しているときは普通なのですが、カメラに映ると非常に映えるハッとするものを持っている。それを持っている人はこの世界から消えない」と語っていた。

 ◇「あゝ、荒野」以降も出演作は途切れず 大切なものは“自分の色” 

 岸監督の言葉通り、インタビュー中はとても物腰柔らかで、柔和な印象が漂うが、劇中で前原さんが演じた川崎は、スクリーン映えするヒリヒリするような存在感を存分に発揮していた。その後、連続ドラマ「陸王」(TBS系、17年)で「ダイワ食品」陸上競技部の一員・加瀬尚之役を演じると、「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系、18年)では、伊藤沙莉さん演じる琴音の夫・啓太役、さらには「正義のセ」(日本テレビ系、18年)、「絶対零度 ~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ系、18年)と作品が続いている。

 岸監督は「良い芝居をしていても、見てもらえなければステップアップできない」と話していた。その意味で現在、前原さんは多くの人に見てもらえるチャンスを得ており、印象に残る俳優として活躍の場を広げている。前原さんは以前のインタビューで、俳優業というのは究極に言えば「なくてもいいもの」かもしれないと話していた。だからこそ、そのなかで生き残るのは大変だという。大切なものは“自分の色”。その色はときに受け入れられないこともあるが、その都度色を変えていたら、結局は「誰からも支持されない」と持論を展開していた。

 「たちばな塩業」を支える「塩軍団」。神部茂役の瀬戸康史さん、岡幸助役の中尾明慶さんらと共に、前原さんの作り出す“色”にも注目していきたい。(磯部正和/フリーライター)

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 「まんぷく」は、99作目の朝ドラで、大阪放送局制作としては42作目。インスタントラーメンをこの世に生み出した実業家、安藤百福(ももふく)さんとその妻、仁子(まさこ)さんの半生がモデルのドラマ。NHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。

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