今井悠貴:「西郷どん」菊次郎が「3年A組」でも存在感 キャリア17年の20歳「圧倒的に演じられる俳優に」

連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」に出演する今井悠貴さん=日本テレビ提供
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連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」に出演する今井悠貴さん=日本テレビ提供

 俳優の菅田将暉さん主演の連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ系、日曜午後10時半)に、西崎颯真役で出演中の俳優の今井悠貴さん。24日に放送された第8話では、存在感のある演技を見せた。今井さんは、3歳で子役としてデビュー。
昨年は、NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」で、主人公・西郷隆盛(鈴木亮平さん)の息子・菊次郎役でも注目を集めた。現在20歳にして約17年のキャリアを持つ今井さんは、「こんな役者になりたいという思いも演じる上では邪魔になる気がする。すごくフラットで、もらった役を圧倒的に演じられる俳優になりたい」と語る。「3年A組」や演じる上でのこだわりについて聞いた。

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 ◇初めての「説教なし回」 Pに託された議論シーン

 今井さんは、1998年12月30日生まれ、島根県出身。3歳で俳優デビュー。子役時代には、ドラマ「千の風になって ドラマスペシャル『はだしのゲン』」(2007年)、「2008年新春スペシャルドラマ あんみつ姫の大冒険!」(08年)、「名前をなくした女神」(11年)などに出演。近年では、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(17年)、「主婦カツ!」(18年)などに出演し、昨年のNHK大河ドラマ「西郷どん」では、主人公・西郷隆盛の息子・菊次郎を演じた。

 「3年A組」で今井さんが演じる西崎は、電脳部所属でコンピューター界の未来のエースというキャラクター。今井さんは自身が演じる西崎のキャラクターを「パニック状態でも冷静に判断できる人。無駄に熱くない」と説明する。

 第8話では、澪奈(上白石萌歌さん)が命を落とした当日の映像に映っていたのが、実は武智(田辺誠一さん)ではなく柊一颯(ひいらぎ・いぶき、菅田さん)であったことが西崎ら電脳部の解析により発覚し、それを世間に公表するのか生徒たちが議論する様子が描かれた。これまでは毎話、一颯による“説教”が繰り広げられてきたが、第8話は初めて説教なしの回となった。

 西崎が中心となり議論するシーンのリハーサルで今井さんは、番組を手がける福井雄太プロデューサーに「今回は一颯の説教がない。だから、みんなのテンションを上げてほしい」と言われたという。

 今井さんはこれまで、撮影の外で共演者と仲良くなったりすることは少なかったといい、「リアルの関係と、役に入ってからの関係は全然違う。撮影以外で共演者と話すことは、演技には関係ないんじゃないかと思っていた。撮影当初、福井プロデューサーも『仲良くなるのは構わないが、それを板についた時に持ち込んでほしくない』とみんなに言っていたのですが、僕もそういうのが好きじゃなかった」と振り返る。

 ◇生徒役の結束から生まれた演技 「熱いシーンにしたかった」 

 最近の現場では、生徒役の俳優陣が演技について話し合うことが増えているという。そのきっかけとなったのが、第8話で森七菜さん演じる電脳部の堀部瑠奈がパソコンを見ている時に、男子に囲まれパソコンを見せるように迫られるシーンの撮影だったという。

 「森七菜ちゃんは、カメラが回っていても、自分が『気持ち悪い』と感じると、1分ぐらい動きが止まってしまうんです。そのシーンも、本当は男子に言われてパソコンを見せるんですけど、リハーサルでは見せようという感情にならなかったようで、見せないまま動きが止まってしまった」と明かす。

 そこで今井さんは、「もう8話だし、『パソコンを見せろ』という攻撃的な言葉で七菜ちゃんがパソコンを見せるようなシーンにしたくない。それでは1話から何も関係性が変わっていない。みんな、人の気持ちも分かるようになってきているし、もっと優しいシーンにしたい」と生徒役のメンバーに話した。さらに、生徒役同士の話し合いの末、それぞれの演じ方も変わったという。

 「それからは、リハーサルが終わった後に、みんなで『気持ち悪くなかった?』と確認するようになりました。30人も生徒がいると、個人技だけではうまく伝わらないこともあると思うから、話し合いや確認をするようになった。今はすごくいい方向に向かっていると思います」と話す。今井さんは、第8話の生徒たちの議論の場面について「熱いシーンを作りたかった。ただ、西崎のキャラクターだと、大きな声を上げるのは違うから『静かに燃えて』という感じでした」と振り返る。

 ◇もらった役を圧倒的に演じられる俳優に コンプレックスも…

 そんな今井さんに今後の俳優としての目標を聞くと、「よくドキュメンタリーなどで他の俳優さんが目標を聞かれて『○○ができる人に』『こんな雰囲気の俳優に』と話しているのを聞くと、モヤモヤするんですよ」といい、「演じる上では、『○○になりたい』という思いも邪魔になる気がするんです。そういうところは、すごくフラットでいたいという思いがある」と話す。

 続けて、「あえていうなら、もらった役を圧倒的に演じられる俳優になりたいです。僕という人間を消して、どれだけ役に近づけるか。そうしないと、いろいろな役は演じられないと思う。常にフラットでいることで、役の振れ幅も出ると思っています」と力を込める。

 ただ、「フラットでいたい」という思いの裏には「僕に人間的に魅力がないからだと思うんです。演技でしか見せられない、というコンプレックスがあるから」と明かす。今井さんは「人間的にギラギラとして魅力のある俳優さんに憧れることもある」という。

 しかし、今井さん自身の言葉を借りると、「3年A組」について、演技について語る姿からは「静かに燃える」エネルギーを感じた。「僕にはそれしかできないから」と語る今井さんは、とても魅力的に見えた。今後のさらなる活躍に期待したい。

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