菅原小春:「いだてん」“魂の初演技”の舞台裏 演出をも凌駕? 大根仁監督「10年に1本」の経験 

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で人見絹枝を演じる菅原小春さん (C)NHK
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大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で人見絹枝を演じる菅原小春さん (C)NHK

 宮藤官九郎さん脚本の大河ドラマいだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」の第26回「明日なき暴走」が7月7日に放送される。同回の“主人公”となるのが、日本人女性初のオリンピック選手・人見絹枝だ。演じているのは、世界的ダンサーの菅原小春さん。ドラマには6月9日放送の第22回で初登場すると、今作が演技初挑戦とは思えないほどの存在感を発揮。第26回では初めてアムステルダムオリンピックに出場した絹枝の苦悩や葛藤、喜びまでを見事に体現している。絹枝役について「魂を燃やしてやりたいって思った」と明かす菅原さんと、演出を手掛けた大根仁さんに撮影の舞台裏について聞いた。

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 ◇第26回ハイライトのロッカールームシーン 絹枝の涙…何か別の力が働いた? 

 岡山の女学校で始めたテニスで圧倒的な強さを誇り、陸上競技でも抜群の身体能力で世界記録を次々と塗り替えた絹枝は、女子陸上が正式種目になったアムステルダム五輪に出場するも、プレッシャーに押しつぶされ、期待された100メートルで惨敗してしまう。このままでは日本の女子スポーツの未来が閉ざされてしまう……。

 ここで絹枝は未経験の800メートルへの挑戦を決意。ロッカールームで出走を直訴するシーンが第26回のハイライトだ。

 絹枝の流す涙は、菅原さんの涙そのもので、まるでドキュメンタリーを見ているかのように胸に迫るものがある。菅原さんは「私はお芝居に対して無知なので、お芝居で泣くっていうことがよく分からない。だから、何かを作り込んだっていうよりかは、人見さんのことを思ったら、ああいうふうになっていました」と振り返る。

 一方、大根さんはというと、ロッカールームのシーンを撮っていて「これは自分の力を超えたとんでもないものが出来上がるなって確信した」という。

 呼び水になったのは当然、菅原さんの魂の演技で、「これまで300を超えるドラマを撮ってきたので、台本を読んだときや現場でも『大体このくらいの感じになるな』って良くも悪くも分かってしまうんですけど……。それでも10年に1本くらいの確率で『これはとんでもないものが出来上がるかもしれない』となる時がある。それなりに経験を積んできた中でも2、3本あるくらい。自分の実力、演出力を超えてしまう瞬間。僕は『神回』って言葉は好きじゃないんですけど、何か別の力が働いて出来上がったように感じました」と認めている。

 ◇私はいつも自分のことを孤独な人間と感じていて… 

 また同回は、人見絹枝という一人の女性が、日本女子スポーツの未来を切り開くだけでなく、コンプレックスを力に変えて、自分の居場所を見つける物語にもなっている。

 菅原さん自身も「私はいつも自分のことを孤独な人間と感じていて、自暴自棄になることもあった。すごく泣くし、ストイックに自分を追い込んでしまって、犬が自分のしっぽを追いかけるように、同じ場所をぐるぐると回っているような時期もあったんです。でも、自分も(誰かを)頼ればいいんだってことに気づいてから、笑えるようになった。それは人見さんの人生を演じながら感じたことで、このドラマの撮影でも居心地の良さを感じました」と話している。

 また、役を演じることを「面白い」と感じたという菅原さん。今後の女優業については「女優さんは女優さんで素晴らしいプロフェッショナルな人がいて。私は私で人見さんのように共鳴できる人に出会えたとき、またチャレンジできたらと思います。私の魂を燃やす意味が見いだせて、私の体と心を通して何かを伝えたいってなった時に、またやりたいです。今回がまさにそういう役だったので……」と語っていた。

 ◇スペシャル動画「~伝説の女性アスリート・人見絹枝の激走~」も公開!

 「いだてん」は、日本人五輪初出場の明治末から、東京に五輪がやってきた1964年までの約半世紀を描くオリジナルストーリー。テーマは「東京とオリンピック」。大河ドラマで近現代史を取り上げるのは、1986年の「いのち」以来33年ぶり。

 ドラマの公式サイトとNHKの公式YouTubeチャンネルでは、「~伝説の女性アスリート・人見絹枝の激走~」と題した、第26回「明日なき暴走」のスペシャル動画が公開されている。

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