全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
俳優の長谷川博己さんが主演を務めるNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)で織田信長を演じている染谷将太さんが話題だ。4月19日に放送された第14回「聖徳寺の会見」では、初対面した“美濃のマムシと恐れられた男”こと斎藤道三(本木雅弘さん)と、“尾張の若きうつけ者”こと信長(染谷さん)の会見に視聴者の熱い視線が注がれたが、信長役の染谷さんの演技から、「まだまだ底が見えない」すごみのようなものを感じ取った人も多かったのではないだろうか。
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染谷さんといえば、これまで数々の映画やドラマに出演。その数は27歳にして、100を超えている。もともと役者としての実力に疑いの余地はなく、2015年公開の映画「バクマン。」の新妻エイジ役や、昨年放送のNHK連続テレビ小説「なつぞら」の神地航也役といった、才気あふれるキャラクターをキレキレの演技で表現するのはお手のものだ。
「なつぞら」の制作統括・磯智明チーフプロデューサーは、染谷さんの印象を「打席に立てばホームラン」と語っていたが、今回の「麒麟がくる」でも染谷さんは、ピュアすぎるがゆえに狂気的に見えてしまう信長を見事に体現し、いわば「ホームランを量産中」。しかも、回を重ねるごとに、「打球の飛距離は伸び続けている」といっても過言ではない。
「聖徳寺の会見」をおさらいしよう。おびただしい数の鉄砲隊を引き連れ現れた信長だったが、会見が行われる広間にはなかなか姿を見せない。道三がしびれをきらして立ち上がろうとしたときに、やっとやってきた信長は色鮮やかな衣装に身を包んでいた。信長は待たせたことをわびると、鉄砲隊や着慣れぬ装飾は道三の娘の帰蝶(川口春奈さん)が仕組んだこととあっさり白状し、「今日の私は帰蝶の手の上で踊る尾張一のたわけでございます」と不敵な笑みを浮かべる。
次に信長は、佐々成政と前田利家という2人の家臣を呼ぶと、「家督も継げぬ食いはぐれ者だが、戦となれば無類の働きをする、一騎当千のつわもの」と冷徹な目をしながら紹介。また、「食いはぐれ者は失うものがない。戦って家を作り、国を作り、世を作る。そういう気構えの男は手ごわい」と説明した上で、「“美濃の成り上がり”の道三もそういう男であると、父・信秀(高橋克典さん)から聞かされていた」と微笑交じりに明かす。
ここで信長は、真っすぐ前を見据え、「家柄も血筋もない。鉄砲は百姓でも撃てる。その鉄砲は金で買える。これからは戦も世の中もどんどん変わりましょう。我らも変わらねば。そう思われませんか?」と道三に同意を求めると、信長の中に若き日の自分を見た道三は「信長殿はたわけじゃが。見事なたわけじゃ」と信長を気に入った様子。すかさず信長が「それは褒め言葉でござりますか?」と聞き返せば、道三も「褒め言葉かどうか、帰って誰ぞにお聞きなされ」と返答し、信長が「そういたしましょう」とうなずけば、道三も「それがよい」と呼応し、笑い声を上げた……。
10分を超える攻防。優れた台本あってこそと言ってしまえばそれまでで、相対した本木さんの重厚な演技との相乗効果もあっただろうが、4月12日に放送され第13回「帰蝶のはかりごと」で道三が言い放った、「言葉は刃物ぞ」になぞらえれば、まさに言葉という刃物で斬り合うような緊張感が、そこに生まれていたのは想像に難くない。
この会見を固唾(かたず)をのんで見守った視聴者から、「うっひょーヒリヒリする」「信長と道三のやりとりはたまらん」「最高やなこの2人」「互いの役者の“迫力”と“狂気”が響き合う、実にいい会見の場でした」といった声が上がったほか、SNS上には「信長鳥肌ー!」「信長の狂気と才気がやべえな」「信長ぞっくぞくするぞ!!」「サイコで不敵な笑みの童顔信長さま、新鮮だし最高にイイ」といった言葉も並んだが、それも至極当然の結果か。
ここから先、染谷さんが信長として、どのような新境地を切り開いてくれるのか、現時点では期待しかない。
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