全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
俳優の伊藤健太郎さんや女優の石橋静河さんらの出演で、約29年ぶりに再ドラマ化された「東京ラブストーリー」。鈴木保奈美さんと織田裕二さんのダブル主演で1991年に放送された“平成版”は、“伝説のドラマ”だっただけに、今回の再ドラマ化を「パンドラの箱を開けるようなものだった」と語る“令和版”の清水一幸プロデューサー。どうして“箱を開けた”のか。そこには王道ラブストーリーへの“想い”があった。
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「東京ラブストーリー」は、「家族の食卓」「あすなろ白書」(共に小学館)などを手掛けた柴門ふみさんの同名マンガが原作。自由気ままで恋愛にまっすぐな赤名リカ、リカに好意を寄せられる永尾完治(カンチ)、完治の高校の同級生の三上健一、同じく同級生で完治が思いを寄せる関口さとみ、三上の大学の同級生・長崎尚子が織りなすラブストーリーだ。鈴木さんがリカ、織田さんが完治を演じた“平成版”は、最高視聴率32.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、期間平均視聴率22.9%(同)をたたき出し、小田和正さんが歌った主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」も大ヒットした。
清水さんは高校生のときに“平成版”を見てハマった一人で、それからドラマ制作に興味を持ち、これまで連続ドラマ「のだめカンタービレ」「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」「最高の離婚」などの制作に携わってきた。
柴門さんのマンガを読みあさったという清水さん。作品の魅力について「上京した都会で今まで会ったことのないようなタイプの女性と恋をしたり、高校時代の幼なじみとの恋愛模様など、永遠に普遍的だと思う」と分析。「そこの部分さえ変えなければ、今の時代に置き換えられる」と考えた。
原作は完治が主人公で、“平成版”はリカを主軸として描かれた。再ドラマ化するなら「同じものを作ってもしょうがない」と、原作を「どういうふうに料理すればいいのか、とことん突き詰めた」。そして、“令和版”は原作と同様、完治(伊藤さん)を主人公とした。しかし、原作の完治は女性に慣れている部分があり、遊び慣れている同級生の三上健一と差別化できなくなるため、“平成版”と同様、優柔不断で優しく温かいキャラクターにしたという。
一方、石橋さん演じるリカの設定には「僕も迷宮に入りました」と苦笑いするほど悩んだという。しかし、「今までに見たことがないリカ像を重要視し、『私はこう思っているんだ』って強い気持ちを発言できたり、自分が思っていることを表現できるような女性が良いと思いました。それが“現代の赤名リカ”として一番良い形だと思った」と“強い女性像”を打ち出した。
また、携帯電話が普及していなかった時代に作られた“平成版”の印象から、「東京ラブストーリー」というと、連絡が取り合えない、会えないといった“すれ違い”がもどかしい恋愛模様をイメージする人が多いだろう。しかし、清水プロデューサーは「現代でも、携帯電話があるからといって確実に連絡が取り合えるとは思いません。LINEやメールをすぐ返す場合と、わざと時間をおいて返信したり、または無視したりする」と説明。「告白してうまくまとまる。先を越されて相手を取られてしまう。悲しいときに寄り添ってくれたという部分も、この作品の魅力の一つなので、時代とは関係ない」と言い切る。
“令和版”の劇中では、リカが完治を呼び出すときにスマートフォンで位置情報を送ったり、さとみが尚子の存在を知り、SNSで名前検索をする描写もあった。「文明の利器は利用しようと思いました。エゴサーチもさせちゃおうと(笑い)」といい、現代の“カップルあるある”を盛り込み、作品を“アップデート”した。
アップデートされた“令和版”は配信されている「Amazon Prime Video」の評価やSNSで「大きく良い方に期待を裏切られた」「現代っぽいオシャレな演出」「令和版としてフィットしている!」といった声が上がっている。
清水さんは「ドラマの制作を発表したときに、いろいろな意見をいただきました。誰かにやれと言われたわけではなく、自分からやったことですし、触れてはいけないパンドラの箱をわざわざ開けに行ったと僕自身、思っています。見てくださっている方が一人でも多くいて、反響の声をいただけるのはうれしいですし、やってよかった」と胸をなで下ろしているという。
こういった反響の声について「男女の恋愛はいつの時代も変わらない。登場人物たちのように、誰にでも起きるようなことに少しでも共感をしていただけているのだと思います」と話しつつ「地上波に王道のラブストーリーが少ない」ことも要因として指摘する。近年では「逃げるは恥だが役に立つ」「恋はつづくよどこまでも」(共にTBS系)のように、爆発的に人気が高まる作品はあるが「やっぱり地上波では医療、刑事、弁護士ものが多い。私たちがドラマに夢中だったころは、憧れるような恋愛作品がたくさんありました。ストレートに恋愛している作品がなかなかない」と分析していた。
約29年ぶりに再ドラマ化された「東京ラブストーリー」。清水さんには「ひょっとしたら、親と子の2世代で一喜一憂してもらえるんじゃないか」という思いもあった。「『昔は織田さんと鈴木さんがやってて、すごかったんだよ』とか、親子の会話のきっかけになってもらえたらうれしい」と笑顔を見せた。
「東京ラブストーリー」は“平成版”“令和版”ともに「Amazon Prime Video」と「FOD(フジテレビオンデマンド)」で配信。“令和版”の最終話となる第11話も6月3日午前0時に配信予定で、果たしてどういった結末を迎えるのか楽しみにしたい。
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