全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
13年ぶりに復活した女優の篠原涼子さんの主演ドラマ「ハケンの品格」(日本テレビ系、水曜午後10時)。篠原さん演じる一匹狼の最強ハケン社員・大前春子が、数々の高いスキルを武器に、“お時給”の分はしっかり働きつつ、正社員に向かって「有給たっぷりの皆さんとは違うんです!」と言い放つ姿などが描かれ、視聴者からは「スカッとする」「めちゃめちゃ元気になる」など早くも支持を集めている。脚本を手がける中園ミホさんにとって、今作は初めて自らが発案し、企画した作品。ドラマ復活の背景や、春子のモデル、篠原さんの印象などを中園さんに聞いた。
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「ハケンの品格」は、数々の資格を持つ時給3000円のスーパー派遣社員・大前春子の働き方を描く作品。「私を雇って後悔はさせません。3カ月間お時給の分はしっかり働かせていただきます」というせりふ通り、高いスキルでさまざまな問題を解決していく。令和の時代となった今回は、「働き方改革」「高齢化」「副業」「アウトソーシング」「AI導入」「過労死」などをテーマに、新しい時代の働く人の品格を問う。
13年ぶりとなる今回の続編が放送されると、SNSでは「おかえり大前春子さん」「篠原涼子は本当に変わらない!」「フラメンコを踊る春子、変わらず」など歓迎の声が上がった。“とっくり”こと篠原さん演じる春子と、“くるくるパーマ”こと大泉洋さん演じる東海林武のやりと取には、「やっぱり名コンビ」「トックリとくるくるパーマのやり取りが面白くて最高!」などのコメントが並んだ。
ドラマが始まる前に、「『ハケンの品格』は、実際の派遣社員の女性たちと取材という名の飲み会を何度も重ねて、生まれた作品です」とコメントしていた中園さん。13年ぶりに復活した背景を聞くと、「昨年1月に放送されたNHKの『クローズアップ現代プラス』のインタビューで、『今も(当時取材した)“派遣さん”と飲み会を続けていて、(派遣社員を取り巻く)状況はもっと厳しくなっているから、もう一回『ハケンの品格』は書かないといけないと思っているんです』って話をしたんです。そうしたら、すぐに日本テレビさんが『やりましょう』って言ってくださって」と明かす。
続編が決まったときの思いを、「彼女たちに『ずっと続編やらないんですか?』と言われていたので、『ああ、みんなが喜んでくれる!』って」と話した中園さん。これまでに延べ100人以上の派遣社員を取材してきたといい、女性だけではなく、近年増えたという男性の派遣社員や、派遣会社で働く人、派遣社員の職場の管理職の人にも話を聞いたという。
前作で派遣社員を取材したときのことについて、「本当にもう最初はみんなガードが固かった」と明かした中園さんだが、回を重ねるにつれて、だんだん本音を言ってくれる関係性に変化。徹底的に取材を行うスタイルから“取材の中園”とも言われる中園さんは、「そこだけはどんな脚本家にも負けないくらい、時間をかけています。自腹で飲み会をやりますから、お金もかけるんですけど(笑い)」と明かす。
一方で、「取材をしたのなら『もっとリアルなドラマになるだろう』と言われる」と明かしたが、「いくら取材したからって言って、それをそのまんまドラマで(再現して)、『夜疲れて帰ってきて見たいか?』って言ったら、私だったら見たくない」と作り手としての思いを明かす。「いろいろやりたいことはあったんですけど、派遣さんたちがメールで『私たち、元気になりたいんです』と言ってくれた。難しいことはやめて、とにかく元気が出る、スカッと明るく楽しい話にしたいなって」と話す。
篠原さん演じる大前春子というキャラクターに、モデルがいるかどうかを尋ねてみると、「あんな人、いたら大変」と笑った中園さん。「(はじめの頃は)派遣さんたちの本音はなかなか聞けなかったけど、何カ月も取材をしたら、ダムが決壊するように皆さんいろいろな思いを話してくださって。つらいこともね、頭にくることもね。そのときに、『これをヒロインに言わせたい』ってまず思った」と振り返る。
しかし、派遣という立場上、言いたい放題に本音を言ってしまうと、「明日から来なくていい」と言われる可能性が出てきてしまう。「次に、いろいろな会社を渡り歩く人の話にしようかなと思いましたが、そうすると連ドラの都合上、セットにお金がかかってしまう。じゃあどうしたらいいんだろうと思ったら、ものすごいスキルがある人にすれば、言いたいこと言っても、ヒューマンスキルゼロでもやめさせられない。彼女たちのリアルな本音を言わせるには、ああいうぶっ飛んだ人物にするしかなかった」と明かす。
そんな逆算もあり、「ものすごい数の資格を持つ」という春子の設定が誕生。春子役の篠原さんからは、「『中園さん、私(春子)は何歳なんですか?って(笑い)。あの資格を全部取るとなると、100歳くらいになりますよね?」と聞かれたこともあったのだという。
篠原さんの印象を「普段はキャピキャピしていて女子高生みたい」「菩薩みたいに、本当に愛情深い方」と表現する中園さんは、篠原さんのキャラクターに「ものすごい助けられた」と感謝する。ニコリともせず、「サイボーグみたいな感じ」で登場し、問題をあっという間に解決し、午後5時に帰っていくという春子について、当初、中園さんは「ロボット」のような印象を持っていたという。
「それが、篠原さんが演じると、その中に愛情がたっぷりあることがにじみ出ちゃう。篠原さんがやると、ツンツンしているけれど、本当はあったかい人って感じになってきました。シリーズ1の1話と最終回では、全然印象が変わると思う。それは篠原さんの人間力ですね」と語る。
そんな篠原さんからは、春子が始業前に行う“大前体操”などのアイデアが飛び出すという。「『今回はこれにしたいんですけど』と言って動画を送ってくれて(笑い)。あれは彼女が考えてやってくれています。バージョンアップしています」とアピール。
「一番おかしかったのは、シリーズ1の最後のシーンで、(大泉さん演じる)東海林に『今度はあなたに社長賞を取っていただきます』という場面がある。ある意味ラブシーンなんですが、篠原さんが『眉毛はくるくるパーマじゃないんですね』と言いたいって言い出して(笑い)それをそのまんまセリフに使ったんです」と明かす。
「そういう突拍子もない面白いことを思いつく方なので、一緒に大前春子を育てていっている感じがします」と話した中園さん。最後に、視聴者に向けて「やっぱりドラマを見ているときは、頭空っぽにして、笑って見てほしい。そして、次の日も『よしっ! 会社に行こう』って元気になってほしい。それだけの思いで書いています」と呼びかけた。
なかぞの・みほ 東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業後、広告代理店勤務、コピーライターを経て、14歳から師事していた今村宇太子さんのもとで、占い師として活動を開始。1988年に脚本家としてデビュー。「やまとなでしこ」(フジテレビ系)、「anego」「ハケンの品格」(共に日本テレビ系)、「Doctor-X 外科医・大門未知子」(テレビ朝日系)、NHK連続テレビ小説「花子とアン」、NHK大河ドラマ「西郷どん」など数々のテレビドラマを手がける。「占いで強運をつかむ」(マガジンハウス)が発売中。
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