米ニューヨークで8月31日に開幕したテニスのグランドスラム（四大大会）の一つ「全米オープンテニス」。新型コロナウイルスの影響を受けた無観客での実施に加え、メディア規制などさまざまな対策が行われる中での今大会を、日本テニス協会強化副本部長で、WOWOWテニス解説者の松岡修造さんが振り返った。

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　松岡さんは、今回の全米オープンテニスについて「選手も大会側も初めての経験ですから、さまざまなハプニングが起こりながらも継続していること自体がすごい」と話し、「途中で大会が中止になることも十分に考えられる中、テニスが継続できていることで、五輪も含めたその他のスポーツへの可能性が大きくなっている気がします」と印象を語る。

　また、コロナ禍での実施は「何かみんなで協力し合うとか、今までの大事な考え方を再確認させるようなもの」だといい、「大会サイド、ATP、WTA、選手がより一つになってほしい願いがあります」と希望を抱く。

　9月6日には男子ベスト16も決定したが、松岡さんは「一番に感じたことは、どの選手もうまく調整を行ってきている、ということです。自粛で試合を行えていないのに、ここまで仕上げてきているとは思いもしませんでした」と驚く。

　特に若い選手の活躍が目覚ましく、中でもフェリックス・オジェ アリアシム選手については「ほれぼれするくらい良いテニスをします。どこがどう良いというよりも、全体的に見て素晴らしいです。動きも良いですし、メンタルも強いですし、弱点がない」と絶賛する。「これだけ良いテニスをする選手は久しぶりに見ました。たぶん、彼のテニスが、今後見本になっていくと思います」と期待を寄せた。

　惜しくも1回戦で全員敗退してしまった日本人選手5人へは、「今大会はラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラーといったトップ選手が不在でした。そういう意味で、チャンスがあっただけに残念な気持ちはありました」とコメント。しかし「男子日本選手が本戦に5人出ていること自体がすごいこと。自分も選手でしたので、グランドスラムの本戦に入ることがどれだけ大変か分かります」とねぎらいの言葉をかけた。

　一方、試合を勝ち進む女子の大坂なおみ選手については、「テニスの調整はうまくできています。左脚の違和感があるかもしれませんが、僕はそこはあまり気になりません。特に、彼女の武器であるサービスの破壊力とフォアハンドのパワーがすごく磨かれています」と語る。

　「ただし、少しでも彼女の心の波が荒れてしまえば、いくらでも負ける可能性がある。2018年に全米オープンを初優勝した際の『よく走る！　がまんする！　そして頭を使う！』ことがしっかりとそろった時に優勝が見えると思います」と話し、「メンタルに邪魔されず、心技体が合致したときはかなり期待を持てる。彼女が持っているテニスを一番いい形で使えれば、100％優勝です」と力を込めた。

　そして、9月8日からは約1年ぶりに錦織圭選手が復帰する「男子テニスATPツアー キッツビューエル」も開幕。松岡さんは「まずは、錦織選手がコートに戻ってきてくれたことが一番うれしい」と喜び、「錦織選手のテニスはタイミングを大事にします。それは試合をこなしていくにつれて取り戻していくことなので、勝敗やランキングについてあまり気にする必要はないと思います。来年から正しい方向で戦える体力とテニスをしっかりと身に着けることが今の錦織選手には大事です」とエールを送る。

　全米オープンテニス1回戦でのアンディ・マレー選手との死闘も記憶に新しい西岡良仁選手については、「日本人の中で断トツに良いと思っています。彼は自分から仕掛けられる試合を組み立てる力、バラエティーに富んだショットを持っている。だから、対戦相手が『やりにくい』と感じる選手」だと分析。「相手にテニスをさせない技」を武器に「どの選手にあたっても勝つチャンスがある」「今後、ランキングのトップ10に入る可能性も持っています」と期待を膨らませる。

　最後に、松岡さんは「キッツビューエルは、広大な自然を感じる場所で、選手にも人気がある大会です。空港から遠く、立地的には良くないですが、ツアーの中でも癒やされるような特別な場所なので、キッツビューエルの自然も見どころの一つですね」と注目ポイントを語った。

　WOWOWでは、9月14日まで全米オープンテニスを連日独占生中継で放送中。9日午前7時50分からは女子シングルス準々決勝となる、大坂なおみ選手対シェルビー・ロジャーズ選手の試合がWOWOWライブで放送予定。

　また男子テニスATPツアー キッツビューエルでは、錦織選手の試合を独占中継。9月8日午後7時半以降に開始予定の試合を、WOWOWメンバーズンオンデマンドで先行ライブ配信するほか、深夜0時からWOWOWライブで放送する。