オクラ~迷宮入り事件捜査~
第11話 バディ終焉!最後のねつ造
12月17日(火)放送分
俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。人気の武将・明智光秀の謎めいた前半生にも光を当てた同作も、気がつけば残り10回を切り、物語はクライマックスに向けて突き進んでいる状態だ。過去の戦国大河と比べて面白いのが、朝廷というものを、定点観測的に色濃く描いていること。そんな中で回を重ねるごとに存在感を増しているのが、正親町(おおぎまち)天皇を演じている歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんだ。今回がテレビドラマ初出演。「どこまで正親町天皇として“居るだけで何かを感じさせる”ことができるかが課題だと思っていますし、挑戦だと感じています」と以前に語っていた玉三郎さんだが、視聴者から「神キャスティング」との声も上がるなど、その挑戦は「吉と出た」と言えるのではないだろうか。
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染谷将太さん演じる織田信長がいまやすっかり心酔。信長にとって、“褒められたい対象ナンバーワン”の「推しのアイドル」と化した正親町天皇。初登場は11月1日放送の第30回「朝倉義景を討て」だった。
ビジュアルのキャッチコピーは「美しく高貴な帝」。どこか蠱惑(こわく)的な雰囲気を漂わす玉三郎さんにぴったりのフレーズだ。劇中では、正親町天皇の人間的な部分も描かれているが、玉三郎さんの存在自体が優美で、ミステリアスという部分でも揺らぐことはない。いい意味でテレビ画面の中にいることにいまだ「慣れない」。そういった部分も含めて、帝を演じるにあたって、これ以上にない人選だったと言える。
玉三郎さん自身は、以前「なるべく作り込まず、自然に見えるようにできたらと思います。光秀(長谷川さん)の存在や信長の存在、動乱の世の中に対しても俯瞰(ふかん)して見ている、包み込むような存在でいることを心がけています」と話していたが、当時の天皇を、“自然に見えるように”演じることができるとしたら、やはり玉三郎さんをおいて他にはいないだろうし、だからこそ視聴者は「神キャスティング」と感じたのではないだろうか。
回を重ねるごとに存在感を増す、坂東玉三郎“正親町天皇”だが、ドラマの制作スタッフが「麒麟がくる」の中で描こうとしている、「帝とは、武士にとって何なのか」によるところが大きい。
チーフ演出の大原拓さんは「『麒麟がくる』は第1回から武士とは何なのかを常に訴えかけている。自分たちは戦いたくないけれど、守らないといけないものがあるので戦うと、そこに新たな争い、戦が起こる。常に自己矛盾、自己否定の連続で、そこの葛藤に帝がどう関わるのかによって、なぜ戦わねばならないのかという問いに対する答えが徐々に見えてくるんじゃないか」と狙いを語っていた。
そんな大原さんから見た玉三郎さんとは? 当時の武士にとって「分からない存在であり、大きな存在」でもあった帝を演じるにあたり、「美しさも含めて、有無を言わせず、すごい」と玉三郎さん本人の存在感を絶賛。
「普通の感覚とは違う視点もお持ちですし、帝を敬っているからこそ、役に対してものすごく真摯(しんし)に向き合っている。だからこそ、我々もそれに引っ張られていく。どう帝を表現していくのか、どういう影響を光秀や信長に与えていくのか、その『存在感』で玉三郎さんは表現していただいている。そして、単純に美しい。芝居を見ていても面白いですし、一言一言に重みだけではない説得力がある」と印象を語った。
玉三郎さんが真摯に向き合って作り上げた貴重な正親町天皇だが、美しさや高貴さ以外の部分ものぞかせつつある。
11月29日放送の第34回「焼討ちの代償」では、正親町天皇が比叡山の焼き討ちについて、信長が「褒めてほしそうだった」から「褒めてやった」と明かすシーンがあり、SNSでは「ひえーーー帝怖っ」「美しく怖い帝」「心臓ヒュンッてなった。怖い、この帝怖い」「お優しげでお怖いお方だわ~」「主上の信長の心の内を見透かしたお言葉。主上の御心を分からず、褒められたと無邪気に喜ぶ信長。なんと恐ろしい描写だろうか」といった感想が並んだ。
さらに12月6日放送の第35回「義昭、まよいの中で」では、正親町天皇が光秀に強い関心を示し、2人の接触が示唆されるなど、「本能寺の変、朝廷黒幕説」が視聴者の間でもささやかれ始めてきた。12月13日放送の第36回「訣別(けつべつ)」を含めて、残り9話。「武士とは何なのか」に加え、「帝とは、武士にとって何なのか」という問いへの答えと共に、帝として存在感を増す坂東玉三郎さんの演技には引き続き、注目だ。
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