YouTuber:タレントと異なる“気質” 「ダウンタウンDX」演出が語るテレビとの親和性

バラエティー番組「ダウンタウンDX」の演出を務める田渕草人さん
1 / 7
バラエティー番組「ダウンタウンDX」の演出を務める田渕草人さん

 2020年、人気YouTuberでタレントのフワちゃんが、「2020年TV番組出演ランキング」で、昨年は45回(エム・データ調べ)だったところ、今年は358回(同)と爆発的に出演本数を伸ばした。今年は、フワちゃんをはじめ、人気YouTuberがテレビ番組に出演する機会が増え、視聴者の目に触れるようになった一年だったといえるだろう。中でも、人気バラエティー番組「ダウンタウンDX」(読売テレビ・日本テレビ系、木曜午後10時)は、「Fischer’s(フィッシャーズ)」「東海オンエア」ら人気YouTuberに加え、バーチャルYouTuber(VTuber)のキズナアイらをゲストに呼ぶなど、YouTuberと積極的に関わっているようにみえる。そんな番組の演出を務める田渕草人さんにタレントとYouTuberの違いや、制作の裏側などを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇YouTubeというホームがある強み

 まず、田渕さんは、テレビは「100人のうち10人を捨ててでも90人を楽しませる広い部屋をいくつか持っている」と説明しながら、一方、YouTuberについては「YouTubeは100人それぞれをとことん楽しませる部屋が100部屋ある。というか無限にあると思います」と分析する。

 多くのYouTuberと一緒に仕事をしてきた田渕さんは「YouTuberの皆さんは、テレビタレントのように、テレビで人気者になりたいとは強く思っていないと思います」と実感を語り、「それがすごく良い点」と話す。「僕らは大多数の方に向けて面白い番組を制作しないといけませんが、YouTuberはテレビ番組以外にYouTubeというホームがあるので、そういった概念を壊して、自分たちが面白いというものを配信しています」と、違いを語る。

 ◇YouTuberならではの魅力とは…

 そもそも、YouTuberを起用する理由は何なのか。田渕さんは「視聴者層の開拓」と、「ダウンタウンDX」のディレクターとして、ゲストがMCのダウンタウンと「どう科学反応を起こすか」といった点を踏まえていると語る。キャスティングは「再生回数が多い」「キャラクターが立っている」という分かりやすい点も重要だと説明しながら、その上で番組として「(テレビタレントを含む)キャストの座組みやマッチング」をイメージトレーニングするという。

 田渕さんはトークという点でYouTuberの中には“向き不向き”があるとも話す。事実、ダウンタウンのようなレベルの高いトークに合わせるのは、並の芸人やテレビタレントでも難しい。田渕さんも「打ち合わせで想定していたトークと違う展開になるのは、よくあること。落ち込んでいたYouTuberもいました。でもそれはテレビの枠にハメようとしすぎて面白くならなかった。僕らの考え方が甘かったと思います」と反省点も語る。

 しかし、YouTuberならではの魅力もたくさんある。田渕さんは「彼らは、面白そうだと思ったことを意欲的に楽しんでやってくれます。リアクションもとても素直」と話し、「YouTuberの皆さんが、ダウンタウンさんのことを“松ちゃん”、“浜ちゃん”と、テレビタレントではできないような物おじしないノリで番組に来てくださるので、番組にとって新鮮さが生まれます」と語る。

 さらに、テレビタレントでは難しい“お金の話”ができる点も挙げる。「ヴァンゆん」のゆんさんが引っ越し先の物件として“億ション”の見学に行く企画や、番組の人気コーナー「スターの私服」のコーナーでは、Fischer’sのシルクロードさんが3000万円超の時計を自腹で購入するなど、番組を盛り上げた。

 田渕さんは、「若くして『お金をたくさん持っています』と言えるのは、YouTuberしかいないと思います」と断言。「ダウンタウンDX」では、かつて、ダウンタウンが松方弘樹さんや梅宮辰夫さんといったスターから豪快なお金の話や武勇伝を引き出す面白さがあり、人気番組へと成長していった。「でも、最近では、そういった話ができるタレントや俳優が減っているのも事実です」と、YouTuberはテレビタレントでは出しにくい要素を補完している存在のようだ。

 さて、フワちゃんはなぜ昨年に比べて約8倍もテレビに出演することができたのか。田渕さんは、フワちゃんについて「もともと芸人として活動してきたため“タレント”さんだと思います。リアクションの速さ、トークの返し」など“笑いのセオリー”を熟知していると解説し、“別枠”と位置づけた。また人間性についても、真面目で人柄がよいと明かしながら「テレビの(トークの)ルールを分かっているので、共演者、スタッフからの信頼も厚いと思います」と語った。

 ◇YouTubeで出せない魅力を

 現在、NHK、民放各局を見渡しても、いわゆる“平場”のバラエティー番組にフワちゃんを除くYouTuberがレギュラー出演しているケースはほとんどない。“テレビマン”も起用方法など模索しているのが現状のようだ。

 だが、田渕さんは、数々のYouTuberを起用してきた経験から“ノウハウ”も分かってきたと力を込める。ゆんさんの“億ション”やシルクロードさんの高級時計のように、YouTuberの個性と番組の企画がマッチした時の「相乗効果」を期待しているといい、「YouTubeでは出せていない魅力をテレビ番組で見せることができたなら、YouTubeチャンネルのファンの方たちも『この番組、面白い!』と思って見てもらえる」と、語った。

 田渕さんは、ゲストとして招いたYouTuberには「願わくば、ダウンタウンDXに出演してよかったと思ってもらいたいです」と話す。「YouTuberの皆さんは、出演者兼ディレクターのような目線を持っているのが強みだと思うので、番組を利用してもらいながら、YouTuberとテレビのどちらも面白くなれたらいいなって思っています!」と意欲を語っていた。

 1月7日午後9時から放送の「ダウンタウンDXDX 2021最強運ランキングスペシャル!」では、人気企画「最強運2021」と「スターの私服」を放送する。「スターの私服」では、東海オンエアのてつやさんが1200万円の高級時計を披露するも“あるアクシデント”が起きる……という展開。どのような形で番組が面白くなっているのか、注目だ。

写真を見る全 7 枚

テレビ 最新記事