仮面ライダー:“ゼロワン”高橋文哉から“セイバー”内藤秀一郎へつなぐ「絆」 1号ライダーの熱き思い

内藤秀一郎さん(左)と高橋文哉さん
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内藤秀一郎さん(左)と高橋文哉さん

 映画「劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」(杉原輝昭監督)と「劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本」(柴崎貴行監督)が2本立てで公開中だ。先輩として「仮面ライダーを大切にすること」を“継承”したいと話す飛電或人/仮面ライダーゼロワン役の高橋文哉さんに、後輩として「次につなげていければ」という思いを胸に、神山飛羽真/仮面ライダーセイバーを演じる内藤秀一郎さん。そんな2人に「仮面ライダー」の主役を演じることの思いや重み、互いの変身フォームなどについて語ってもらった。

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 ◇先輩ライダーとしての自覚に芽生えた後輩の撮影見学

 「“後輩ライダー”である内藤さんの印象は」という問いの「先輩・後輩」という言葉に反応した高橋さんは、「ついに来ましたか。(『仮面ライダージオウ』で常磐ソウゴ役を演じた)奥野さん側になるのか」と感慨深げにつぶやく。

 続けて「41話の撮影中に内藤さんと、(新堂倫太郎役の)山口貴也さんと(須藤芽依役の)川津明日香さんの3人が来てくださったのですが、次の人があいさつに来るということはもう終わりが近いんだなと思った」と仮面ライダー“卒業”を身近に感じ、「記者会見を見て、もちろんゼロワンもカッコいいけど、セイバーもカッコいいし、(キャスト)みんな身長が高くていいなと思った」という。

 内藤さんは「初めて高橋君の芝居を見たとき、『これが仮面ライダーなのか』とフワッとした気持ちでした」と当時を回顧。「その後に映画の撮影で伊藤英明さんとバチバチにやり合っているシーンも拝見したのですが、本気でぶつかったり怒っていたりという芝居に鳥肌が立ちました」と衝撃を受けつつ、「びっくりしたけど負けていられないと思いました」と決意したことを明かす。

◇赤色好きの高橋はセイバーの炎モチーフに憧れ

 互いに変身する仮面ライダーの印象や、カッコいいと感じる部分があるかを聞くと、高橋さんは、「仮面ライダーカリバーがめちゃくちゃカッコいいし、劇場短編での仮面ライダーエスパーダもすごくカッコいい」とちゃめっ気たっぷりに切り出し、「赤色が大好きな少年だったので、小さいころにゼロワンとセイバーを並べられたら多分セイバーのおもちゃを買ってと言ったかも(笑い)。もちろんゼロワンが一番ですけど、それはすごく感じましたね」と笑顔を浮かべる。

 さらに劇場短編を見て「セイバーの限定フォームや変身の流れはハイパーカッコよかった」と明かし、「テレビシリーズ1話を見たときの芝居を悩まれているような印象とは大きく変わりカッコよくなっているし、『セイバー』という物語や世界観も理解できたので改めて全部をお渡しできるなという感情になりました」と語る。

 特にセイバーの何に引かれるのかについて、高橋さんは「目が炎ですけど、炎は確実に男子が憧れるもので無条件にカッコいいと思えるもの」と持論を語り、「映画のポスターも5歳の子に『どっちがカッコいい?』って聞いたら、『ゼロワン』は重厚なのに比べ、『セイバー』は赤と赤がぶつかり合っているので惹(ひ)かれるのでは。技にも炎を使うしカッコいいなって思う」と絶賛。炎への憧れは「ゼロワン」でもあり、仮面ライダー迅の「バーニングファルコン」形態を見た際にも「炎がカッコいいって思った」と明かす。

 ◇内藤は黄色好きでゼロワンだけでなく仲間のエスパーダにもジェラシー

 一方、内藤さんが「黄色が一番好きなのでゼロワンがうらやましい。だから『セイバー』にエスパーダが出てきたときは『やっぱり黄色くるのか』と思ったし、高橋君がゼロワンに変身するときのポーズがシンプルでカッコいい」と話すと、高橋さんは「ないものねだりだね(笑い)。記者会見でセイバーの変身ポーズを見たとき『僕も剣を振りたい』って思った。剣を振って出たエフェクトが返ってきて顔になって変身。カッコよくないわけがない」と互いのライダーをたたえ合う。

 仮面ライダーへの“愛”が止まらない2人だが、高橋さんは「1年間お届けしている中でどんどんカッコよくなり、今やゼロワンが一番カッコいいと思う。仮面ライダーである限りカッコいいことは必然というのは演じながら感じたし、ゼロワンという名前は直球だけど、それがハマるのは仮面ライダーだからこそ」ときっぱり。

 聞いていた内藤さんも「自分のライダーが一番カッコいいと思えていることを聞くと、僕も今も思っていますけど、さらに思えるように自分も頑張りたい」と決意を新たにしていた。

 ◇仮面ライダーとして、主役としての熱い気概

 「仮面ライダーの先輩として“継承”したいことは」と水を向けると、高橋さんは「受け継いだものを少しでも大きくして引き渡そう。受け取ったものを一回りでも、あわよくば二回り大きくして次の人に渡して絆を切らさず、平成からのバトンを令和色にしてつないでいければというのを令和1号ライダーとして決めていた」と明かし、そのために「芝居一つとってもアフレコ一つとっても、例えば信号待ちということまで、すべてのことで仮面ライダーだからカッコよくなきゃいけないし、仮面ライダーというものを大切にすること」を胸に秘め撮影に臨んできたことを語る。

 そこには「仮面ライダージオウ」で常磐ソウゴ/仮面ライダージオウを演じた奥野さんからかけられた、仮面ライダーの現場ならではの体験を通じて得た「学べる場所だからこそ学びを無駄にせず、後悔しないように」という言葉があったという。

 高橋さんは、「奥野さんから役に“マンネリ化”してくる時期があると言われていましたが、その時は『役も強弱や抑揚があり、楽しいから(マンネリは)なさそう』と思っていたら、終わったから言えますけど、正直本当にありました」と打ち明け、「マンネリ化というと言葉は強いですが、役が体に染みつきすぎてしまい、『これ以上役の良さを自分が出すことができるのか』という自分の芝居に対する部分でもあります」と説明する。

 実際に高橋さんは同様の状況になった際、奥野さんの「イチ早く入って、イチ早く抜け出したらこっちのもの」という言葉を思い出し、「1話から台本を全部読み返して、自分で書き加えたメモも見て初心に戻り、自分は或人という役に対して何を思って、何を大切にして、何を伝えるために或人として時を過ごしているのだろうと考えました」という。

 その結果「台本がまったく違って見えてきて抜け出すことができた。そういうことこそ受け継がなければいけないものなのかなと思うし、自分の体験を踏まえて一回り大きくしたものを内藤さんにお渡しして、また次につなげていただければ『令和の仮面ライダーは素晴らしい』と言ってもらえるのでは」と静かながら熱い口調で語る。

◇“ゼロワン”高橋からの言葉を胸に「芝居に向き合っていきたい」

 高橋さんの発言を「すごく勉強になりました」と神妙な表情で聞いていた内藤さんは、先輩から受け継ぎたいことはという話題に、「仮面ライダーが決まってから高橋君とご飯に行った時に、『次から次へとすごくいいキャラが出てくるし、自分の役よりキャラが濃くてうらやましくなる』という悩みを相談したら、(高橋さんから)『主演は作品を盛り上げるためにいる。そういうのは気にしないように』という言葉が返ってきました」と明かし、「そうだなって思ったし、今回もらった言葉もその時もらった言葉も自分が次につなげられるよう、しっかり芝居に向き合って頑張っていきたい」と意気込む。

 岡田龍太郎さんと山口貴也さんによる2号ライダー対談では、ある種の「悔しさがある」という深い思いが明かされていたが、高橋さんは、「2号ライダーやヒロインの方がいないから言えますが、主役以外のキャラクターが注目されたり、人気が出たりというのはよくあることで、それは主演のおかげでもあると思えれば気持ちが楽になるし、もっともっと面白くしようという思いにもつながる」と慎重に言葉を選びつつ、“座長”としてのスタンスを口にする。

 その真意を「例えばイズ(鶴嶋乃愛さん)が可愛いと言われたら、もっと可愛さを引き出すために、自分が鼻をちょんと触ってみようと行動できたら“最高の主役”になれるはず。だから(内藤さんも)気持ちをそっちに振るようにしてほしいなと思い、お伝えしました」と説明する。

 そして「ほかのキャストには僕も嫉妬したけど、自分がその役になれるわけではない。いただいたど真ん中の役を突き進み、恩返ししていけば、自分も大きくなれるだろうし、作品にも影響を与えられるのかなと思い1年間やっていました」と人気シリーズで“座長”を務め上げた心情を語る。

 大役を担う2人に劇場版での注目ポイントを聞くと、内藤さんは「6人同時変身など、かなり初のことを入れ込んでいます。飛羽真としてはナパームの20連発。現場にいて結構離れたところでも熱風がすごかった。あとは素面の状態で剣を持って戦うときに生の火を使っているのもカッコいいし、バハト役の谷口(賢志)さんの迫力や変身する時に“無音”になるのもいい感じになっています」とアピール。

 今作が“最後”となる高橋さんは、「ゼロワンの集大成でもあるし、素晴らしいゲストの方々をお迎えして本当に良い作品ができ上がった」と自信をのぞかせ、「今回は“共闘”できず残念で、本当は芝居などでバトンタッチできればよかったのですが、映像でお見せすることで少しでもお届けできたらなという思いで撮影をしていた。もちろん物語全体としてもゼロワン“らしさ”が詰まっているので集大成として見ていただけたら」とメッセージを送った。(取材・文:遠藤政樹)

 ※柴崎貴行監督の「崎」はたつさき

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