ムジカ・ピッコリーノ:子供向けも“本物指向” 「視点」にこだわり 親世代・音楽好きをとりこにするワケ

NHK・Eテレの子供向け音楽番組「ムジカ・ピッコリーノ」シーズン9のキャスト陣 (C)NHK
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NHK・Eテレの子供向け音楽番組「ムジカ・ピッコリーノ」シーズン9のキャスト陣 (C)NHK

 今年4月から「シーズン9」が始まったNHK・Eテレの子供向け音楽番組「ムジカ・ピッコリーノ」(金曜午後5時35分)。2013年のレギュラー化から、8年以上にわたり、ファンタジー仕立てで古今東西の音楽を数多く紹介してきた。音楽の楽しさや魅力を多角的な視点で伝えるのも同番組の魅力で、子供たちはもちろん、その親、さらには多くの音楽好きをとりこにしてきたが、制作におけるこだわりなどを、NHKエンタープライズの元木智成さんに聞いた。

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 ◇選曲は「ハードル高め」? 楽曲の特徴をどう捉え、易しく解釈できるか… 

 現在放送中の「シーズン9」にはミュージシャンの藤原さくらさん、小学生の暦(れき)さん、椎名林檎さんがボーカルを務めるバンド「東京事変」の伊澤一葉さんらがレギュラー出演。音楽が失われた大地「ムジカムンド」で、いにしえの音楽を記憶した空飛ぶオルゴール「モンストロ」を治療する「ムジカドクター」一団の冒険譚(たん)となっている。

 「シーズン9」が始まるにあたり、メインキャストが一新されたが、元木さんによると、過去も含めて「音楽的要素と演劇的要素を兼ね備えていて、かつ個性的な方々」を一貫して起用してきた。回によっては音楽通をもうならせるゲストが登場(5月14日放送の『飛べ!アルカ号』ではギタリストの田渕ひさ子さんがディストーションを効かせたギターを“ギャンギャン”鳴らしたばかり)するのも番組の魅力の一つだ。

 扱う音楽ジャンルはクラシック、洋楽、日本のポップス、演歌、民謡、童謡までと幅広く、学校の音楽の授業とはいい意味で一線を画す。選曲も、子供向けとしては一見「ハードルは高め」。だからこそ「楽曲の特徴をどう捉え、易しく解釈できるか」が番組制作における重要な課題となっていて、そこには「子供たちに“本物”を教えたい」という元木さんらの願いも込められている。

 一番、こだわっているのが、音楽を分析する「視点」だ。「曲の中のどこかに面白い要素が潜んでいるんじゃないか、それらを見つけ、どう説明すれば、音楽の魅力が伝わるのか」は番組の根幹にもなっている。

 一方で、「音楽って文章が先行しているものではないので、説明するときに言い切ることができない。ほかにも複数の説があったり、例外というのも必ず出てくる。だから『これが正しい』とどこまで子供たちに伝えていいのか」といつも頭を悩ませている。その中で「あまり型にはめないで、うまく要約して伝えることが番組の使命なのかもしれません」と元木さんは思いを明かした。

 ◇「10年一区切り」などではなくて、今後も継続して子供たちに音楽の魅力を

 長年、続いてきた番組として、マンネリ化の心配はないのだろうか。

 その点については、例えば「音の高さを揺らす歌い方」について複数回で取り上げていても、「ビブラート」と「こぶし」とでは違ったやり方・感じ方があるように、番組では、数多(あまた)ある名曲の、それぞれ違う味わい方を紹介して、音楽の豊かさを感じられるように、選曲と解説の仕方を工夫している。

 「子供は本当に正直で、よく気付く。よく覚えているし、ある意味でよく研究して見ている」と元木さんは語るように、子供向けだけど「子供だましじゃない」というのも、多くの大人をも魅了する「ムジカ・ピッコリーノ」という番組らしさなのかもしれない。

 今後に向けては、「10年一区切り、などではなくて、継続して子供たちに音楽の魅力を伝えていきたい。まだまだ伝えられるものはあると思っていますし、『継続は力なり』じゃないですけど、末永く続く音楽番組になっていったらいいなって思っています」と意欲を見せていた。

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