梶裕貴:「七つの大罪」メリオダスへの思い 7年の変化 理想の声優像

「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」で主人公・メリオダスと弟・ゼルドリスを演じる梶裕貴さん
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「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」で主人公・メリオダスと弟・ゼルドリスを演じる梶裕貴さん

 鈴木央(なかば)さんの人気マンガが原作のアニメ「七つの大罪」の新作劇場版「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」(浜名孝行監督)が7月2日に公開される。主人公・メリオダスと弟・ゼルドリスの声を演じる梶裕貴さんは、2014年10月からスタートしたテレビアニメ第1期から、約7年という年月をメリオダスと歩んできた。「七つの大罪」という作品とメリオダスを「名刺代わり」の存在と語る梶さんに作品への思い、7年間での変化などを聞いた。

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 ◇メリオダスとゼルドリスの演じ分けは?

 「七つの大罪」は、「週刊少年マガジン」(講談社)で2012~20年に連載。かつて王国転覆を謀ったとされる伝説の逆賊<七つの大罪>の戦いが描かれた。テレビアニメは第1期が2014年10月~2015年3月、「聖戦の予兆」が2016年8~9月、「戒めの復活」が2018年1~6月、「神々の逆鱗」が2019年10月~2020年3月に放送。2021年1月から最終章「七つの大罪 憤怒の審判」が放送された。2018年8月には初の劇場版「天空の囚われ人」も公開されている。新作劇場版は、鈴木さん描き下ろしの完全新作ストーリーで、テレビアニメの最終章「七つの大罪 憤怒の審判」の“その先”が描かれる。

 梶さんは「進撃の巨人」「マギ」「僕のヒーローアカデミア」などでも知られる“超”が付く人気声優だ。約7年にわたってメリオダスを演じ続け、「これだけ長い間、キャラクターと共に歩むこと自体初めての経験だったので、その感慨深さもひとしおです」としみじみ振り返る。

 「物語の最後までキャラクターを全うすることが声優としての喜び。その願いが7年かけて成就したことが純粋にうれしいですし……。同時に、終わってしまうことがものすごく寂しいです。これだけ長い間キャラクターと共に歩むという経験は初めてだったので、その感慨深さもひとしおですね。まさに、自分の“名刺代わり”になるような作品。メリオダスの声を聴いて僕を認識してくださった方々もたくさんいらっしゃると思うので、改めて、このご縁に感謝です」

 劇場版でも、テレビアニメ同様、メリオダスとその弟・ゼルドリスの声を演じる。魔神王との闘いの中で歩み寄りが見られた二人が、その後どのような関係性を構築していくのかが見どころの一つでもある。そもそもテレビアニメで途中から登場したゼルドリスの声も務めると分かったときは「うれしさ半分、驚き半分」だったという。

 「間違いなく別の個体ですけれど、兄弟なので似ている部分もある。なので、どこまでどう演じ分けるか、当時はいろいろと考えましたね。“メリオダスと声の質は近いけれど、どこか雰囲気が違う”というパターンと“声質からガラリと変える”というパターンの両方を、それぞれアフレコで試してみました。ゼルドリスは<十戒>のリーダーで、メリオダスたちからすれば“敵”という立ち位置。結果的に“その敵という印象を強く持たせたい”という演出が決め手となり、声質から大きく変える形となりました。そこから、早3年。今となってはゼルドリスというキャラクターも、僕の中でごく自然に存在してくれています」

 一つの作品で二人のキャラクターを演じる。しかも会話するシーンもある。

 「声質自体を大きく変えていることもあって、技術的な面での演じ分けの苦労はそこまで感じませんでした。息継ぎなどの物理的な難しさはもちろんありましたが“一人一人の住み分け”という意味では、絶妙なところに落ち着いてくれたなという印象です」

 「七つの大罪」には、梶さんはじめ、豪華かつ個性的な声優陣が出演している。

 「不思議と、皆どこかしらキャラクターと似ている部分があるような気がしていて。特に(鈴木達央さん演じる)バンのシンクロ具合はすごい!(笑い)。まさに<豚の帽子亭>のようなにぎやかさのあるすてきな現場でした。お芝居に対して、作品に対して、すごく熱い気持ちを持った人が集まっていたと思います。だからこそ、コロナ禍で全員そろってのアフレコがかなわなくなってしまった後も変わらず、共通した一つの理想形に向かって作ってこられたのかなと感じています」

 ◇「七つの大罪」の7年で得たもの

 梶さんは、実写ドラマにも出演するなど、声優の枠にとどまらない活躍を見せている。「七つの大罪」のテレビアニメがスタートしてから約7年前がたち、梶さん自身にはどのような変化があったのだろうか? 「日々、一日レベルで変化していると思う」と明かす。

 「(声優は)心を扱う仕事なので、役者としての変化は、ある種、人間としての変化だと思っています。一日一日、仕事をする中で考えることもあれば、ただ生きているだけで感じることもたくさんあります。いろいろな方と出会って、いろいろなものを見て、聞いて。日々あらゆる壁にぶち当たり、その度に悩んで、迷ってばかり。でも……きっとよくも悪くも、自分は自分でしかないんですよね。だからこそ得られたもの、出会えたものが必ずあるはずなんです。僕はそれを大切にしたいですね。もちろん、同時に失ってしまったものだってあるんでしょうけれど……。それも含めて、やっぱり自分なんです。どんな時でも、責任感と覚悟を持って、自分のした選択をちゃんと肯定できるような人間でありたいなと思います」
 
 さまざまな作品への出演だけでなく、日々の生活で感じたことや出会いも、声優として自らの血肉にしている梶さん。そんな梶さんは、この「七つの大罪」という作品からは、はたしてどのようなものを得たのだろうか? 登場時から飛び抜けた強さを持ち、飄々(ひょうひょう)とした面もシリアスな面も持っている難役の主人公、年齢・キャリアが上のメンバーも多い現場、ゼルドリスという新キャラクターの登場……など約7年でさまざまなハードルを乗り越えてきた。

 「具体的に何が成長につながっているか、何を得たかというのは、自分自身では分からない部分が大きいですが……。7年という時間を共に歩んできたからこその達成感は確実にありますね。いろいろな役をやればやるほど、心がブレてしまう瞬間だってあるし、喉のコンディション調整も難しくなる。それをなんだかんだ乗り越えてきた経験というのは、今後キャリアを積んでいく上での大きな財産になると思います」

 梶さんが役に向き合う姿勢はストイックそのものだ。最後に理想とする声優像を聞いてみた。

 「それも日々変化している気がしますね。だからこそ悩むし、葛藤するんだと思います。理想だけでは成り立たない部分もありますし。でも、今までもこれからも変わらないのは、声の役者をしている以上……その役を担当させていただける以上は“この世の誰より、その役のキャラクター性、魅力を引き出してみせる”という想(おも)い。もちろん監督やスタッフの皆さんの描かれた設計図ありきですが、その要望に応えつつ、自分にしか生み出せないであろうキャラクター像を形にする。そして、役の想いをしっかりと代弁する。それだけは、ずっと変わらない僕の理想の声優像だと思います」

 約7年にわたる「七つの大罪」の旅を終え、新たなステージでもキャラの魅力を引き出し続けるであろう梶さん。今後のさらなる活躍も期待される。

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