海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
女優の前田敦子さんが、俳優の田中圭さんが主演を務めるオンライン動画配信サービス「Hulu(フールー)」のオリジナルドラマ「死神さん」で巡査の南川メイを演じている。メイは、田中さん演じる“死神”と呼ばれる刑事・儀藤堅忍(ぎどう・けんにん)とのバディーを熱望し、連絡係(儀藤には“パシリ”と呼ばれる)として捜査をサポートする役どころ。狂言回しとしての役割も担っている。前田さんは、メイン演出を担当する堤幸彦監督のオリジナルキャラクターを演じることに、「誰にもまねできない世界観がある堤監督のオリジナルの役に自分を当てはめてもらえたのは、ラッキーだと思いました」と語る。そんな前田さんに、今回の撮影現場でのエピソードやドラマの見どころ、女優としての“現在地”などについて聞いた。
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「死神さん」は、大倉崇裕さんの同名小説(幻冬舎文庫)が原作のミステリードラマ。クセモノ刑事・儀藤が、警視庁内で“死神”とうとまれながらも、警察が掘り返されたくない冤罪事件を洗い直し、真相を明らかにする姿を描く。1話完結型で、儀藤と事件を再捜査する相棒が毎話入れ替わる。相棒は、小手伸也さん、蓮佛美沙子さん、「EXIT」のりんたろー。さん、長谷川京子さん、竹中直人さんが演じている。Huluで毎週金曜に新エピソードを1話ずつ独占配信。全6話。
今作でメイン演出を担当した堤監督の作品について、前田さんは「小学生の頃に『TRICK』をずっと見ていました」といい、「深夜に放送していて、『なんだこの世界観は!』って(笑い)。寝る前に見るワクワク感がありました。意味が分からないもの(キャラクター)が唐突に出てくるのですが、子供ながらにハマってましたね」と明かす。
「ダークコメディーというか、独特の世界観があるという印象」という堤監督作品への出演依頼に、「今回は、まさにそんな堤監督節がさく裂する作品になると思ったので、撮影が始まる前から楽しみでした」と振り返る。
今作で演じたメイは、原作には登場しない堤監督のオリジナルキャラクターだ。前田さんは「誰にもまねできない世界観がある堤監督のオリジナルの役に自分を当てはめてもらえたのは、ラッキーだなと思いました」と目を輝かせる。
前田さん演じるメイは警視庁広報課所属の巡査で、儀藤とのバディーを熱望するも、拒否され続ける。儀藤から「パシリ」と呼ばれながらも、後方支援として“自分なり”に儀藤をバックアップしていく。狂言回し的な役割も果たし、カメラ目線で状況を説明するせりふが印象的だ。撮影は、「一人きりで、カメラ目線で決まった動きをしながらしゃべらなければいけないという演技は、普段はやることがないので、とても難しかった」と明かす。
また堤監督は、今回の撮影現場で「すごくテンポを大事にされていました」といい、「速くというより、『テンポ重視で、止まらないで』という感じでしたね。(ノンストップに)バーッと行っちゃってください、というような」と表現する。
「堤監督自身が楽しい方なので、ピリピリする瞬間はまったくなく。でも、すごくスピーディーに、長いシーンをどんどん撮っていくので、緊張感はありました」と明かす。「どんどん撮影が進んでいくので、みんな待ち時間や空き時間がまったくなかった」というが、それは苦ではなく、「普段の感じとはまた違うので、とても刺激的で」と現場を楽しむことができた。
主演の田中さんとは、2015年に放送された特別番組「世にも奇妙な物語 25周年スペシャル・春~人気マンガ家競演編~」、2017年放送の連続ドラマ「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」(共にフジテレビ系)に続き、今作で3回目の共演となる。
とても癖のある儀藤役で、これまでにない姿を見せている田中さんについて、「近くで見ていても面白くて。“誰だか分からない感じ”を監督が狙っているとおっしゃっていましたが、本当にそうだなって。田中さんを知っている人でも、儀藤が田中さんと分からない人がいるんじゃないかというくらい、すごく新しい田中さんだなと感じました」と舌を巻く。
さらに、「決めぜりふがある役って、見ていて気持ちいいですよね。今回も毎回、犯人を暴くシーンで、儀藤が言葉ですごく責めたあとに、『逃げ得は許しません!』という決めぜりふが登場するんです。それが見ている人にとって、とてもすっきりするシーンになっているんじゃないかなと思います」と見どころを語る。
インパクトのあるタイトル「死神さん」についても、「『死神』に『さん』がついていて、すごく興味をそそられました。どういう意味なんだろうって。(台本を)読んだらあっという間に理解できたので、すごく腑(ふ)に落ちるタイトルなのではないかと思います。冤罪事件を徹底的追及する『死神さん』はヒーローなので、『死神』だけだとマイナスのイメージかもしれないですけど、『さん』がついていることで、可愛らしさというか親しみやすさが湧いて、私はこのドラマで、プラスな感じにイメージが変わりました」と語る。
「気軽に、何度も見てもらえるのが配信コンテンツの良さ」という前田さんは、今作について、「1話完結型なので、1回は通しで見てもらって、もう1回はかみ砕いて見るのが楽しいのではないかと思います。お話自体は少し難解なので、1回見ただけでは『えっ?』となるかもしれないのですが、かみ砕くと面白いヒントがちりばめられているので、もう一度“第壱話”から見ると、見え方が全然違ってくると思います」とメッセージを送る。
さらに「私が演じたメイは、何を考えているか分からないキャラだけれど、それが作品のいいスパイスになり、箸(はし)休めになってくれていたらいいなと思いますね。こういう役は、堤監督の作品でしか成立しないようなキャラクターだと思うので、『堤ワールド』をここから感じ取ってもらえたらうれしいです」と笑顔を見せた。
「AKB48」在籍中の2007年、映画「あしたの私のつくり方」(市川準監督)で女優デビューを飾った前田さん。その後、今回の堤監督をはじめ著名な映画監督やクリエーターからよく声がかかる、撮影現場に“愛される”女優となった。
自身ではそのことを、女優として「うれしいです。本当にそう思ってもらえていたら、仕事冥利に尽きるな、と思うので」といい、「ここまで(14年ほど女優を)やっていると、2度目、3度目という監督と、『久しぶり』とまた会えるというのは、とても幸せなことだなと思います」と喜びをかみしめていた。
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