高畑充希:「目まぐるしかった」人生が急変した20代 30代への思いも

WOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW いりびと-異邦人-」で主人公の篁菜穂を演じる高畑充希さん=WOWOW提供
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WOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW いりびと-異邦人-」で主人公の篁菜穂を演じる高畑充希さん=WOWOW提供

 映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍する女優の高畑充希さん。主演するWOWOWの連続ドラマ「連続ドラマW いりびと-異邦人-」では、無名画家の描いた1枚の絵に魅了されたことをきっかけに、京都画壇の深みに踏み込んでいく美術館の副館長・篁菜穂(たかむら・なほ)役を演じる。さまざまな作品で主演を務めるなど順調にキャリアを積み上げている高畑さんに、菜穂を演じた思いや、「人生が急変した」という20代と、間もなく訪れる30代への思い、コロナ禍で変化した意識などについて聞いた。

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 ◇周囲を忘れて没頭する主人公に共感

 ドラマは、原田マハさんの小説「異邦人(いりびと)」(PHP文芸文庫)が原作。希代の美術収集家の孫娘で、審美眼を持つ美術館の副館長・菜穂(高畑さん)は妊娠を機に京都に滞在する中で、言葉を発することのできない無名の画家・白根樹(SUMIREさん)が描いた1枚の絵と出会う。菜穂は、樹が京都画壇で大きな影響力を持つ日本画家の志村照山(松重豊さん)によって自由を奪われていると知り、声なき訴えを確信。菜穂は樹の絵を追ううちに、美の住人たちの欲望が交錯する世界へと入っていく……という内容。

 高畑さんが演じる菜穂は、美の本質を見抜く眼力を持ち、ときに周囲の存在を忘れるほど美術の世界に没頭する一面を持つ女性。高畑さんは、そんな菜穂を演じることについて「みんなとコミュニケーションが取れているようで取れていない女性で、絵のことしか考えていないところがあるので、霞(かすみ)をつかむような感じでやっていました」と吐露。現場で監督と相談しながら少しずつ菜穂を作っていったといい、「序盤はワンシーンずつ『こういう言葉の受け方をする人かな』『こういう反応をする人かな』と、ひとつずつ積み上げていきました」と明かす。

 役との共通点を聞くと、高畑さんも菜穂のように何かに夢中になると、自分ひとりの世界に入るときがあるという。「私も、夢中になったり妄想していたりするとき、外の世界とまったくコンタクトが取れていない感じになるときがあります。会話ができているようで、できていない瞬間も。今はだいぶましになりましたけど、『何考えているか分からない』と言われることもあったり(笑い)。みんなといるようでいない瞬間、というのは、ちょっと分かるような気がしました」と明かす高畑さん。「でもお仕事はいろんな人と関わるから、『勝手にひとりの世界に入らないようにしなきゃ』と思うようにはなりました」と苦笑いで語る。

 撮影期間は約1カ月半、京都のホテルに滞在していたという。妊娠を機に単身京都で過ごす菜穂と共通する環境にあった。高畑さんは「菜穂は、前半は特に、表現できないストレスがずっとかかっています。私も慣れないホテルの長期滞在で、居心地は良かったんですが、毎日となると閉じ込められている感じもあって……リンクしていくような感覚はありました」と打ち明ける。

 今作では、夫・一輝役の風間俊介さん、樹役のSUMIREさんらと共演。高畑さんは、風間さんとの共演について「すごく現場を盛り上げてくださる方。私は役柄的に、序盤はずっと重い何かを背負っているようなどんよりした気持ちでいることが多く、うまくみんなを盛り上げることができなくて、風間さんに頼りきりでした」と感謝。SUMIREさんについては「樹は、独特の空気を持っていてほしい役。SUMIREちゃんは目がきれいで、いつもその目に助けられていました。でも本人はちょっと体育会系というか、少年みたいな感じ(笑い)」と印象を語り、「年が近いのはSUMIREちゃんぐらいだったので、京都ではよく2人で美術館に行っていました」と振り返る。

 撮影期間中に、原作者の原田さんが現場を訪れた。高畑さんは、そこで美術の楽しみ方などを聞くことができたという。「マハさんは普段美術に関するお仕事をされているので、いろんなことが聞けました。たとえば日本画の見方で、空間を見る、とか……お話が面白かったです。それを聞いてから、(美術が)より楽しく感じられるようになりました」とほほ笑む。

 ◇「自分に興味が持てるようになった」 コロナ禍で変化した意識

 今作含め、さまざまな映画やドラマで主演を務めるなど、順調にキャリアを積む高畑さん。現在29歳、今年の12月には30代に突入する。改めて来し方を振り返ってもらうと、20代の10年間で「人生は急変しましたね」という。

 「テレビの世界とかに進出しだしたのは、二十歳を超えてからだったので、遅いんです。子供のときから舞台をやりたいと思っていて、10代のときは『一生舞台に立って生きていけたらな』と思っていました。それが、急に人に知ってもらえるようになったり、映像の中でお仕事をするようになったり……海外でもいろんなものを見られたし、目まぐるしかったです、20代は。10年でこんなに人生が変わるのなら、次の10年もすごく変わるんだろうな、と楽しみですね」

 そんな高畑さんに、どんな30代にしたいかと聞いてみると、「何も考えていないですね。楽しく過ごせたらいいかなと思います」と笑い、「興味あることや楽しいことに夢中になっていたら、それが思いもよらない方に広がって……となったらいいなと思っています。結構、行き当たりばったりなんです(笑い)。興味もどんどん変わっちゃうし。でも、女優業に限らず、何か『こうなりたい』という目標がひとつ持てたらいいなって思います」と言う。

 「子供のときに持っていた『こういう作品に出たい』という目標が、早い段階でかなって、すごく楽しかったけれど『このあと、どうしよう』となってしまって。今は目の前のことに出会って、流されて、楽しんで……という感じになっているので」と高畑さんは現状を明かし、「『50歳のときにこうなりたいな』というのが見つかればいいな、と思っています」と思いを馳せる。

 今はコロナ禍で先行きが不透明な時代。高畑さんも「分からないですよね、ずっと女優でいるかも分からないし」と言うが、「でも、楽しい方(の道)を選択したいなと思います」とポジティブだ。さらに、コロナ禍ゆえの意識の変化もあったという。

 「自分に興味を持てるようになってきました。新しい人と出会ったり、新しいことを経験したりすることがもともとすごく好きで、今までは『外に外に』と意識が向いていたんですが、今は家にいる時間が長いこともあり、『自分ってどんな人だっけ』と……。たとえばシンプルなことですけど、『自分に似合う色って本当は何色なんだろう』とか、そういうことを考えるようになりました。意外と、自分のことってあまりよく知らなかったなと気づいて、今はその発見が楽しいです。刺激は少なめな日々だけど、穏やかで楽しいな、と思っています」と前向きな思いを明かしていた。

 「連続ドラマW いりびと-異邦人-」は11月28日午後10時からWOWOWプライム、WOWOW 4Kで放送。放送終了後にはWOWOWオンデマンドで配信もされる。全5話で、第1話は無料放送される。

 スタイリスト:番場直美 ヘアメーク:犬木愛(AGEE) フォトグラファー:SHIN ISHIKAWA(Sketch)

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