夏井いつき:「楽しくないと俳句じゃない」 「プレバト!!」辛口査定が話題、人気講師の俳句にささげた人生

「プレバト!!」に出演する夏井いつきさん=MBS提供
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「プレバト!!」に出演する夏井いつきさん=MBS提供

 芸能人の隠れた才能を専門家が査定し、ランキング形式で発表する人気バラエティー番組「プレバト!!」(MBS・TBS系、木曜午後7時)で、俳句の査定を担当する俳人の夏井いつきさん。芸能人の句を赤ペンでズバッと添削し、辛口で解説する姿、「永世名人」の梅沢富美男さんや東国原英夫さんらとの丁々発止のやりとりなど、視聴者から「小気味いい」と評判だ。人気の理由を、本人のコメントとともに探った。

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 ◇「俳句のためにできることは全部引き受ける」とテレビ出演も快諾

 夏井さんは1957年5月13日生まれ、愛媛県出身。8年間、中学校の国語教師を勤めたのち、俳人へ転身。松山市を中心に活動し、全国の小中学校などで大人数参加型の俳句イベント「句会ライブ」を開催。通称「俳句甲子園」といわれる全国高等学校俳句選手権大会の創設に携わり、審査員を務めている。俳句集団「いつき組」の組長を名乗り、100年後にも俳句という文芸が繁栄しているよう、裾野へ種をまく活動を続けている。

 「プレバト!!」には2013年から出演。「俳句の才能査定ランキング」で、芸能人ゲストが作成した句を歯に衣(きぬ)着せず評価・添削し、「才能アリ」「才能ナシ」を査定する姿が人気を博している。

 最初に出演オファーが来たとき、夏井さんには「俳句のためにできることは全部引き受けてきていたので、今度はバラエティー番組から話が来たなというくらい」と、躊躇はなかった。俳句仲間は、「テレビだから上品ぶっているんじゃあるめえなと思って番組を見たら、『ああ、いつもの組長や』と」と普段通りの姿に安心したという。

 1回目の収録の際、「(司会のダウンタウンの)浜田雅功さんが、やたら机をたたいて笑いころげていて。『俳句おもろー、俳句おもろー』と言っていたのは記憶にある」といい、番組では俳句を継続して扱うようになり、今では人気コーナーに成長した。

 そのことについても「私たち(俳句仲間)は『楽しくないと俳句じゃない』を合い言葉に俳句の種まき運動をずっとしてきて、『俳句は面白くて当たり前』だと思っているので、多くの人がやっとそれに気づいてくださったという気持ちの方が強いかもしれません」と達観している。

 ◇中学生に分かるような説明の仕方が基本

 番組で査定する際に気をつけていることは、「特に年4回のタイトル戦になると結構高度なことを話しているんですけれど、私は中学生に分かるような説明の仕方が基本だと思っているので、大人相手に話すときも、中学生に話すとしたらという感覚で、少し工夫しています」という。

 分かりやすい言葉を使うというだけではなく、「この句の今回の問題点はどこかということを整理しなくてはいけないし、問題が山ほどある句でも全部問題点を取り上げていたら話にならないから、俳句自体を分析した上で、何について指摘するか、どう説明するかなど、人様が思っているよりは結構考えています」と明かす。

 句を見て、何をポイントに話そうかという準備はするが、収録は台本もリハーサルもなくほぼぶっつけ本番。「ときどき、梅沢のおっちゃんがギャーギャー言うから、なんだかわけのわからないことを言ったりすることはあります」と飾らずに語る。

 ただ、「梅沢のおっちゃん自身、すごく努力をしているということが作品を見ればちゃんと分かりますので、そういう意味では表現者として尊敬しています。『プレバト!!』に出ている皆さんは、真剣に学ぶ力を持っている“ガチ”ですから、こういう世界でしっかりと生きていけるんだな、みんな偉いなあと改めて思いますね」と話す。そんな出演者との尊敬と信頼に基づいたやりとりが、このコーナーの人気の理由の一つかもしれない。

 ◇添削をやるうちに俳句のメカニズムが分かるように

 「目が覚めているときはずっと俳句を選んだり、俳句を作ったり、原稿を書いたり。俳句に関わっている」と“俳句にささげる人生”を送っている夏井さん。「私の今の生活は仕事ありき。仕事が面白いとしかいいようがない。最初の頃は添削も面倒な作業だなと思っていたけれど、やっているうちに俳句という文芸のメカニズムが分かるようになってきて、へたくそな句を添削するのもなんだか面白くなってきた。結局私が一番得していると思う」と顔をほころばせる。

 「プレバト!!」での夏井さんの添削を楽しんでいる視聴者には、「添削は作者の思いがあってのものですから、私が褒められてもしょうがない。作者の表現したいことと言葉の間にミゾがあるから、ミゾを埋めるというアドバイスをしているだけなので。むしろ私が添削して何が変わったかを理解できているテレビを見ている人たちの方が素晴らしい。自分を褒めた方がいいと思う」と敬意を表す。

 番組では才能のあり、なしを査定しているが、「普通に俳句を作って楽しもうという人に才能なんて1ミリもいらない!と全国でお伝えしています」といい、敷居が高いと考えている視聴者に向けて、「俳句を作るようになったら『プレバト!!』が10倍面白くなりますよ。梅沢のおっちゃんがうだうだ言っているようなことも、おっちゃんがよく俳句が分かっていることも理解できるようになります。東(国原)さんが一見難しいことを言っているだけではなくて、何を言おうとしているのかが分かるようになると、番組をもっと面白く見られると思います」とメッセージを送った。

 3月31日の放送回では、「俳句の才能査定ランキング」の春のタイトル戦「春光戦」の決勝を放送。シード権を持つ永世名人の梅沢さん、東国原さん、秋のタイトル王者の「Kis-My-Ft2」の北山宏光さん、昨年春の王者の「Kis-My-Ft2」の横尾渉さん、立川志らくさんの5人に、予選ブロックを勝ち上がった千原ジュニアさん、馬場典子さん、「FUJIWARA」の藤本敏史さん、「フルーツポンチ」の村上健志さん、森口瑤子さんが挑む。お題は「ハプニング」。

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