純愛ディソナンス:どうして“純ドロ”だったのか? “今までと違う中島裕翔”と挑んだ令和のラブストーリー

連続ドラマ「純愛ディソナンス」で主人公の新田正樹を演じる中島裕翔さん(C)フジテレビ
1 / 3
連続ドラマ「純愛ディソナンス」で主人公の新田正樹を演じる中島裕翔さん(C)フジテレビ

 主人公とヒロインの純愛が不協和音を生み、周囲にひずみをもたらしていく様を描く連続ドラマ「純愛ディソナンス」(フジテレビ系、木曜午後10時)。プロデュースを手がける森安彩さんは、純愛とドロドロな展開を掛け合わせた「令和の“純ドロ”ストーリー」と銘打った本作について、「今の世の中にある新しい価値観を取り入れていった結果、こういった題材になりました」と明かす。物語に込めた思いやキャスティング、「過去をしっかり描くと決めた」という2部構成など狙いを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇きれい事にせず、あるがままを表現

 企画は「ラブストーリーをどうやったら新しくて面白いものにできるか」というところから動き始めた。話を重ねる中で、セカンドパートナーといった現代ならではの関係性に話題が及び、「純粋な愛は“もろ刃(の剣)”なのかもしれない」と膨らませていった。

 「『純愛』というスタンダードなテーマでありながら、発展していく先が現代的で、さまざまな幸せの形につながっていく。その中で翻弄(ほんろう)される姿を描いてみたら面白くなるんじゃないかと考えました。純愛からいろいろなものがかせになって禁断の愛になり、時間をかけてようやく自分にとっての幸せを見つけていく、そんな群像劇を描きたいと思ったんです」

 「今は価値観もさまざまだし、それぞれの個性が尊重される時代。そんなに純粋でいられないという気持ちも含めて、あまりきれい事にはせず、あるがままを表現する作品にしよう」と思いを込めた。

 ◇“不倫ドラマ”に見えないように それぞれの展開を「しっかり描ききる」

 本作は高校を舞台に青春、恋、サスペンスを描く第1部から始まり、第3話からはその5年後を舞台に、恋と仕事における大人の人間模様を描く第2部が展開している。第1部で主人公・新田正樹(中島裕翔さん)は高校教師、ヒロイン・和泉冴(吉川愛さん)は女子生徒として出会い、第2部では妻帯者となった正樹と冴が再会して……というストーリーだ。森安さんは2部構成にした理由について、「5年前をしっかり描くと決めたのが狙い」だと語る。

 「通常なら現代からスタートして、回想で少しずつ過去の関係性などを描いていくと思いますが、今回は扱っている題材が禁断の愛。いわゆる“不倫ドラマ”のようにならないためには、それぞれが歩んできた道のりをきちんと描いていく必要がありました。このドラマのゴールは不倫の果てではなくて、一人一人が幸せをつかみにいくこと。その途中に不倫があった、という見せ方にしたかったんです」

 登場人物については「どんどんキャラクターが濃くなっていくのですが、実際にいるような人をデフォルメした感じというか、人間の持っている感情を少し誇張したら……と。ある程度のリアリティーは持たせているつもりです」と説明。

 加えて「どのキャラクターも“死に絶え”にしたくなかった。全員が有機的に絡み合っていくように、最後まで考えて展開を作りました」と森安さん。「だいたい恋愛関係になると、ライバル役は早々と役目を終えてしまうことが多かったりするじゃないですか。それがもったいないと感じていたので、一人一人の展開をしっかり描ききるというのは初めから決めていました」

 ◇魅力的でなければならなかった主人公像 中島裕翔への期待と安堵

 主人公の正樹は、優秀な兄と比べられて育ったため強いコンプレックスを持つが、それ故、どうすれば周囲から良く思われるか心得ている打算的な性格。ラブストーリーといえば、女性が主人公のイメージも強く、森安さんも男性を主人公に設定することについて「ドラマを作る側としては難しい」と語る。

 「ラブストーリーは、やはり女性の視聴者が中心なので、女性の共感軸のほうが多いんです。だからこそ(主人公を)男性にするのであれば、見たことがなく、それでいてすごく魅力的な主人公像じゃないといけないと思いました。そこから癖のあるキャラクターというか、腹に何かを抱えていて、簡単にはひもとけない人……とつながっていって。ただ、話さない人にしてしまうと面白くないと感じたので、最終的に『毒づく』にたどりつきました」

 キャスティングにおいては「イメージとは真逆」を意識。「ご本人のイメージからして、絶対に毒を吐いてなさそうという方で思い浮かんだのが『Hey! Say! JUMP』の中島裕翔さん。これまでは好青年を演じることが多く、中島さんもこうしたダークサイドを全面に出した役をオファーされるのは初めてだとおっしゃっていました。今までと違う役柄に挑戦することで、彼の中でも印象に残る作品になればと思い、ぜひ中島さん主演でやりたいとお願いしました」

 2005年に放送された「エンジン」(同局系)など、幼少期からドラマに出演してきた中島さん。森安さんは「芝居のうまさは分かっていたので、期待が大きかった」という。実際に会ってからは“頭の良さ”を目の当たりにし、「こちらがやろうとしていることや、自分が何を求められているのか、即座に理解してくださる。そういった姿勢から、この作品に対してもワクワクしてくれていると感じられて、お芝居を見る前から中島さんでよかったと思いました」と振り返った。

 ◇ヒロインは吉川愛なら「成立させられる」 キャスト陣が生んだ絶妙なバランスも

 一方、正樹に引かれていくヒロイン・和泉冴には吉川愛さんを起用。冴のキャラクターについては「普通のお利口さんではなく論破していくし、正樹と同じくらい屈折しているけど決して暗くはない。とにかく冴のほうには芝居力と迫力が欲しかった」と明かす。

 「目力もそうですし、心情を表す芝居のうまさから、吉川さんだったら安心してお願いできるなと。正樹との軽妙なやり取りをしっかり成立させられるというのもポイントの一つでした。禁断の愛は彼女にとってもチャレンジになるんじゃないかと思いましたし、本格女優になっていく中のターニングポイントになったらうれしいですね」と期待を込めた。

 そのほかにも、正樹の同僚から妻になる碓井愛菜美役を比嘉愛未さん、冴をいちずに思う幼なじみ・朝比慎太郎役を高橋優斗さん(HiHi Jets/ジャニーズJr.)、第2部で冴のアルバイト先の社長となった路加雄介役を佐藤隆太さんが演じている。

 森安さんは「それぞれのキャラクターを皆さんがうまく表現してくれたと感じています」と手応えを実感。「派手にやらないとつまらないし、やりすぎると今度は感情移入できなくなる。芝居一つですごく変わってきてしまうのですが、全員がリアリティーとエンターテインメントの絶妙なバランスを取ってくださって、“生きている人”に仕上げてくれました」と太鼓判を押した。

 ◇「みんな良い人ではいられない」 全員が渦の中へ…

 最後に、今後の展開については「大人の愛憎劇である以上、みんな良い人ではいられない。逆にそれが新たなドラマを生んでくれるので、視聴者には一人一人のキャラクターにぜひ夢中になっていただきたい」と森安さん。

 「全てのキャラクターが七転八倒するというか。全員が渦に巻き込まれていって、それぞれの役者さんのいろいろな顔が見られると思います。身に覚えがあるような瞬間も出てくるし、のめり込めると思うので楽しみにしていてほしいです」と呼びかけた。

写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事