石子と羽男:「ファスト映画」“許さない”は制作陣の思い 無断使用減る効果も

「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」の一場面(C)TBS
1 / 1
「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」の一場面(C)TBS

 有村架純さんと中村倫也さんがダブル主演を務める連続ドラマ「石子と羽男-そんなコトで訴えます?-」(TBS系、金曜午後10時)。本作のプロデューサーを担当するのは、「Nのために」「アンナチュラル」「中学聖日記」「MIU404」などを送り出してきた新井順子さん。なぜ、いまリーガルドラマを作ろうと思ったのか、これまでの放送で感じた手応えとは? その胸の内を聞いた。

ウナギノボリ

 ドラマは、東大卒ながら司法試験に4回落ちた崖っぷちの法律事務員・石田硝子(通称:石子、有村さん)と、一発合格した高卒の弁護士・羽根岡佳男(通称:羽男、中村さん)がコンビを組むオリジナル作品。正反対のようでどこか似た者同士の2人が、さまざまなトラブルに挑む中で、自らのコンプレックスと向き合いながら成長する姿をコミカルに描く。

 本作の脚本を担当しているのは、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「とと姉ちゃん」やドラマ「怪物くん」「妖怪人間ベム」(ともに日本テレビ系)などで知られる西田征史さん。

 西田さんの脚本について、新井さんは「コミカルなやり取りが面白いですね。『ここで面白い会話をしてください』と指定して書いていただくんですが、毎回よく思いつくと思います。せりふの順番などもすごくこだわりがあり、緩急もつけていただいています。中村さんと有村さんのコンビ感にマッチしていると感じています」と信頼を寄せる。

 ◇“神回”第3話には別のラストも

 その中でも、特に反響が大きかったのがSNSで“神回”とも呼ばれた第3話の題材となった「ファスト映画」についての話だった。

 第3話では、大学生の山田遼平(井之脇海さん)が映画を短く編集した「ファスト映画」を無断でネット上にアップロードし、著作権法違反で逮捕される。遼平が憧れる映画監督・山田恭兵(でんでんさん)の最新作のファスト映画を見たことで、自分がしてきたことの愚かさに気づいた遼平は、執行猶予つきの判決となり、釈放される。その足で、恭兵のもとへと駆けつけ土下座をして謝罪をしたが、恭兵は「どんなに謝罪をされても、受け入れることはできません」と答えて立ち去った。

 新井さんは「あの放送が流れてから、画像や動画を使用して、このシーンが良かったとツイートするのが少なくなったと聞いています」と効果があったことを実感する。

 一方で「最後(恭兵が)許すパターンもあったんです」と打ち明ける。それでも「これは許してはいけないと、(同話を担当した)山本剛義監督の思いもあって“許さない”シーンになりました。西田さんも監督をやられている経験がありますし、早回しで作品を見られると余韻とかが全部吹っ飛ばされてしまうと。制作陣みんなの思いが詰まったシーンでした。ファスト映画を知らなかった方にも知っていただき、反響はかなりありました」とスタッフたちの思いが、視聴者にも伝わったことを感じている。

 ◇「声を上げることの大切さを」 中高生にも分かりやすく伝える

 リーガルドラマといえば、フジテレビ系「リーガルハイ」やTBS系「99.9-刑事専門弁護士-」などの人気作品があるが、新井さんは「大きく違うのは事件が小さいということ。裏を返せば深い話につながっていくんですが、視聴者のみなさんに身近に感じてもらい、明日は自分がそうなるかもしれないという危険性をはらんでいるものが多いので、今までと違ったリーガルドラマになったかなと思います」と語る。

 “身近な事件”をベースの考えとしたのは、「弁護士さんに相談すれば良かったということがあったんです」と新井さん自身の体験談からきている。「法律はすごく難しくて、自分の身近にもなかなかないもの。弁護士に相談するなんてとんでもないという日本人の奥ゆかしさもあると思います。ただ、ニュースを見ていると、なんでそれを誰かに相談できなかったんだろうと感じることが多かった。声を上げることの大切さを知ってもらいたかったという思いがあります」と本作に込めた思いを語る。

 そして「中学生・高校生に向けて分かりやすく作っている部分もあります。ドラマで見てもらって『こういう世の中なんだよ』というのを感じとってもらい、ためになるコメディードラマをお届けしたいと思って制作しています」と話していた。

テレビ 最新記事

MAiDiGiTV 動画