木村文乃:「七人の秘書」千代役で学んだ“本当の優しさ” 仕事への考え方に変化も 「線の考え方がちょっとずつ持てるように」

映画「七人の秘書 THE MOVIE」で主演を務める女優の木村文乃さん
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映画「七人の秘書 THE MOVIE」で主演を務める女優の木村文乃さん

 10月7日に公開された映画「七人の秘書 THE MOVIE」(田村直己監督)で主演を務める女優の木村文乃さん。今作は7人の秘書たちが巨悪に立ち向かう姿を描いた連続ドラマの映画版で、木村さんが演じるのは完全無欠のカリスマ秘書・望月千代だ。7人の中心的存在である千代を演じるうえで、木村さんが一貫して意識しているのは“バランサー”であることだという。木村さんに千代を演じる中で実感した仲間への思いや映画の撮影エピソード、仕事へ対する考え方などを聞いた。

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 ◇千代の恋愛も…

 「七人の秘書 THE MOVIE」は、2020年10~12月にテレビ朝日系で放送された連続ドラマ「七人の秘書」の映画版。連続ドラマでは、主人公・千代(木村さん)ら7人の秘書の“影の軍団”が、金や権力にまみれた非情な支配者たちを一掃し、理不尽だらけの日本社会を裏で変えていく姿が描かれた。映画版は、木村さんのほか広瀬アリスさん、菜々緒さん、シム・ウンギョンさん、大島優子さん、室井滋さん、江口洋介さんが引き続き出演。信州一帯を支配する「九十九ファミリー」の“極悪経営者”九十九道山(笑福亭鶴瓶さん)をこらしめるため、7人が雪深い地へ向かう……というストーリーだ。

 人気の連続ドラマが放送開始から約2年で映画化。話を聞いた時は「そのうわさはあったので、『あ、本当にやるんだ』という感じでした」と木村さん。「やっぱり応援してくださる方がいないと成り立たないので、本当にありがたいなと思いますね。あと、ファンの方々だけじゃなく同業の方でも好きで楽しみにしてくださる方が結構いてくださって。それもとてもうれしいなと思います」と反響を喜ぶ。

 映画版では、ドラマでもおなじみだったアクションがよりパワーアップして描かれる。ドレス姿で華麗な回し蹴りを披露している木村さんは「ヒールを履いているという難点があったので、踏ん張れなくて難しかったですね」と苦労もちらりとのぞかせつつ、「ワンカット長回しで撮るアクションシーンで、(菜々緒さん、シムさん、大島さんと)4人が息を合わせる、ということは、ドラマではなかったんです。でも準備期間を持たせてもらったので、ぜいたくな時間を使って、映画ならではの撮影をさせていただきました」と振り返る。

 今作の舞台となるのは雪山。それゆえ寒さも「ちょっと尋常じゃない」ものだったと苦労を明かす。また、今作では今回の依頼人であり、ラーメン屋「味噌いち」を営む緒方航一(玉木宏さん)と千代の淡い恋模様も描かれ、木村さんは「『千代の恋愛、見たいか……?』と思いながら演じていましたね(笑い)」としつつも、「大人の恋愛というより、うぶな千代が『なんか出会っちゃった』みたいな恋愛。これだけ百戦錬磨な脚本家、プロデューサーさんでもこんなにピュアな恋愛を描くんだ、というのも面白い部分かなと思います」と話す。

 ◇意識しているのは“バランサー”であること

 千代は“完全無欠のカリスマ秘書”であり、7人の中心的存在でもある。そんな千代を演じるうえで意識しているのは、“バランサー”であることだという。

 「千代を演じるうえでは、バランサーでありたいという思いがあります。7人それぞれみんな個性がはっきりしてるぶん、たとえば『ラーメンの上に具を全部乗っけている』ような、どれを見ていいのか分からない状況にはしたくないなと思っていました。だから『今は菜々緒ちゃんを見るターンですよ』とか、そういった橋渡し役のような立ち位置でいられたらいいな、と。千代だけが唯一、個人個人と話すんですよ、1対1で。だから、そのときに『この人は、こういう人です』ということを伝えられる役目でありたいな」

 バランサーでいる意識は、座長を務めるうえでも同様だ。

 「もう、みんなで成り立っているから、あとはちょっと、私が“小鉢”というか、箸休め的な感じでいればいいかな、と」

 個性的な面々と共演する中で、改めて実感したこともあった。

 「主役を張れる方々と一緒に千代役をやらせていただいて思ったのは、『やっぱり本当の優しさって、“ちゃんと言えること”にあるんだな』ということ。大人になると、言わない方が楽だったり、みなまで言うな、みたいなことだったりがあるけれど、適切な時に適切な伝え方をすること、そのスキルをちゃんとつけることの大事さを、私はこの作品を通してそれぞれの方々から学ばせてもらったなと思っています」

 千代を含め“7人の秘書”はそれぞれが独立したプロであり、芯の強さがある。木村さんは「仲間って、やっぱり仲良しであることを崩したくないからネガティブなことは言いたくない、ということがあると思うんですけど、強みも弱みも受け取っての仲間だと思う。(作中でも)慣れ合いすぎないチームワーク、という意識はずっと一貫してあって。監督やプロデューサーさんからも言われていたし、私たち自身も『その方がいいよね』と思っていました。私たちは“七人の秘書”という“群れ”ではなく“集まり”だと。一個人のプロの集まりだという意識は、たぶんこれから先もずっと忘れずに持っていると思います」と考えを語った。

 ◇“点”から“線”へ 考え方に変化

 これまでにもさまざまな映画やドラマに出演してきた木村さん。今は仕事に対する向き合い方や自分なりのルールを見つけたいと思っているという。

 「今までは、忙しくて目の前にあることをなんとかこなさないと次に進めない……という感じでやってきたので、これから『どういうふうに仕事に向き合いたいか』というマイルールを作っていけたらいいなと思っています」

 多忙な日々を送る中での息抜きは、「やりたいと思ったことをやる」ということを大事にしている。木村さんといえば、そのインスタグラムからも分かるようにダイビングを愛好していることで知られているが、その過程も重要だと考えている。

 「ダイビングって海まで行かないと潜れないので、そこには旅とか食事とか仲間がくっついてくるんです。それで『あれ、この仲間がいたらどこに行ってもなんでもできるじゃん』と最近、思うようになって。だから、たとえば『富士山に登りたい』と思ったら、もう『行こう!』と登るし。そんなふうに『あれしよう、これしよう』とかなえることが、めちゃくちゃ楽しいし、自分が豊かになるなって思えています」

 そんなふうに点ではなく線で捉える考え方は、仕事にも通じるものがある。「たぶん、これまで私は点でしか(仕事が)できなかったんですよ。『とにかく今日、今日、今日……』というように。でもそれが、ちょっと先を見て『この時にこうなっていたいから、今こうする』という線の考え方がちょっとずつ持てるようになってきたなと。それは引き続き持っていたいですね。まずはプライベートが線になるようになって、仕事でも線にできるようになってきて」と告白する。

 そう充実ぶりを明かす木村さん。最後に、改めて映画について魅力を聞くと、「ドラマよりもスケールアップして、さらにスカッとする気持ちの良さを感じてもらえると思います。日々、ストレスともんもんとしたものを抱えて戦ってらっしゃるみなさんの代わりに、気持ち良さをお届けできたら」とアピールしていた。

 ※クレジット(敬称略)

 ヘアメーク:井村曜子(eclat)/申谷弘美(Bipost)

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