海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
1990年代に人気を博したテレビ東京の深夜のお色気番組「ギルガメッシュないと」から着想を得たドラマ「Paravi オリジナルドラマ『ギルガメッシュ FIGHT』」で主演を務めている俳優の藤原季節さん。動画配信サービス「Paravi」で配信中の同作で演じているのは、「テレビ東洋」の番組「ギルガメッシュ FIGHT」の演出担当・加藤竜也だ。「正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」と明かす藤原さんが、撮影を通じて感じたことを語った。
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同作は、「ギルガメッシュないと」のスタッフたちの実話に基づいたフィクションドラマ。「エロ」に真正面から向き合った制作陣の物語で、藤原さん演じる加藤は、天才的かつ芸術的なアイデアで番組を作り上げていくディレクターだ。
「加藤に対する最初の印象は『突き抜けた人』。決して『社会性がある』とは言えない、でもすごく才能があって、カリスマ性があるんだろうなと感じました。演じていて思ったのは、『才能がある』と他人に言われる加藤って、どこか少しさみしいんだなということ。みんなが盛り上がっている輪の中に入っていけないさみしさや孤高な感じが、振り子のように『絶対に面白い番組を作るぞ』という、反骨心にもなっている。面白い番組を作ることでしか、自分の存在を誇示できないというところもあったんだと思います」
才気走る孤高のテレビマン。そんな加藤と共に「ギルガメッシュ FIGHT」を人気番組に押し上げた剛腕プロデューサー・栗田淳一(大東駿介さん)も、正しく「テレビマン」である。
「昔のテレビ業界はどんな感じだったのか、大東さんといろいろなプロデューサーさんに話を聞く機会があったのですが、『昔のテレビマンはマジでかっこよかったよ』ってみんな言うんですよ。加藤も栗田も正しくテレビマン。このドラマをやって、テレビマンって言葉のかっこよさに触れた気もします」
撮影中も「勉強させられっぱなしだった」と振り返る藤原さん。演じた加藤は、優れた観察眼と“狂愛”の持ち主としても描かれている。劇中、そんな加藤と栗田のやりとりで飛び出した「番組はプロデューサーのものじゃない、ディレクターのものだ」とのせりふに対しても「なるほどなと思った」といい、「簡単に妥協してはいけなかったり、言うことを聞きすぎて、大切なものを見失ってはいけないんだなって。とても勉強にもなりました」と明かした。
ドラマは当時の熱気や狂騒など“ギルガメ”の栄光だけではなく、終焉(しゅうえん)も描いた、藤原さんいわく「結構切ない」人間ドラマにもなっている。
また、視聴者の反応として「職業ドラマとしてすごく面白かったという意見があって、それはうれしかったですね」と話す藤原さん。一方で、いち役者としては、主演として力不足を感じた現場でもあったという。
「主演って本当に大変で、とてもありがたいことではあるのですが、大東さんの力強さ、みんなを巻き込むような力強さを目の当たりにして、到底かなわない、自分はまだまだだなって思いました。自分がドラマの中心にいて、みんなの視線を集めるのには、本当に研ぎ澄まされていないとボロが出てしまう。そういう意味でも、非常に良い経験をさせていただきました」
そんな藤原さんにとって2023年はデビュー10周年の節目の年。1月18日に30歳の誕生日を迎え、30代へと突入した。最後に、自身が思い描く理想の俳優像について聞くと……。
「月並みな言い方にはなってしまうのですが、これからも一つ一つの役に誠実に取り組んでいきたいと思っています。最近、俳優さんが舞台挨拶(あいさつ)などで口にする、『○○役を演じさせていただきました』という言葉の意味を考えることがよくあって、それは誰に対しての敬語なのか、『演じさせていただく』とはどういう意味なんだろうって。実際、僕らが演じるのって、ほとんどが日常を生きる“生活者”で。僕が電車の駅員を演じたとしても、人それぞれ日々の積み重ねがあり、そこに至るまでの喜びや苦しみを100%再現できるかと言ったら、そんなことはないわけで。いっときをフィクションとして演じるだけなので、言い方は難しいのですが、ある意味、失礼なことをしているなって思いもあるんです。だからこそ、その一つ一つの役、職業に対して、『演じさせていただく』気持ちを常に忘れてはいけないなって。今回はディレクターの役をやりましたし、いつかは記者の役をやるかもしれない。そこに対して『演じさせていただく』という尊敬やリスペクトの気持ちを忘れると、良い俳優になれないだろうなと思ってもいるので、これからも敬意を持って、一つ一つの役に誠実に取り組んで行きたいと思っています」