舞いあがれ!:朝ドラ初FMラジオでスピンオフを放送する理由 秋月史子とリュー北條の顔が浮かぶ構成 人気子役の毎田暖乃も

「FMシアター『歌をなくした夏』」に出演する(左から)川島潤哉さん、八木莉可子さん、毎田暖乃さん(C)NHK
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「FMシアター『歌をなくした夏』」に出演する(左から)川島潤哉さん、八木莉可子さん、毎田暖乃さん(C)NHK

 福原遥さん主演で、2022年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」のスピンオフドラマ「FMシアター『歌をなくした夏』」が8月26日午後10時からNHK-FMで放送される。歌人の卵の秋月史子(八木莉可子さん)が主人公で、くせ者編集者のリュー北條(川島潤哉さん)も登場する。新キャラクターの少女役で人気子役の毎田暖乃さんが出演。本編「舞いあがれ!」で制作統括を務めた熊野律時(くまの・のりとき)さんが演出を担当した。熊野さんに、朝ドラで初めてスピンオフをFMのラジオドラマで放送する理由や収録の様子などを聞いた。

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 ◇ラジオドラマではなかなかない“顔が浮かぶ”体験

 同作は、「舞いあがれ!」で脚本をメインで担当した桑原亮子さんが書き下ろした。アルバイトをしながら歌集の出版を目指す史子の前に、妙な少女(毎田さん)が現れる。史子は、近くで働く父親を待っているという少女が気になって仕方なかった。北條は、史子が新しい歌を作れるよう、楽しい記憶を聞き出そうとする。しかし、史子が思い出すのは父親との悲しい記憶。そこには、史子が気づいていなかった父親の思いがあったことが明らかになっていき……と展開する。

 朝ドラのスピンオフドラマがFMラジオで放送されるのは、今回が初めて。これには理由がある。熊野さんは「もともと桑原さんがラジオドラマからキャリアをスタートされていて、思い入れを強く持ってらっしゃる」ことが理由の一つだと語る。

 「桑原さんが本編を書き終えたあと、歌集を作るために史子やリュー北條の短歌の新作を書いてらっしゃるときに、2人のその後を書きたいと(ラジオドラマへの)構想が膨らんでいったようです」といい、二つ返事でオーケーを出した。

 「じっくり桑原さんの書いたせりふを味わっていただきつつ、ラジオにテレビで見ていた出演者が出てきてドラマを聴くという、不思議な感覚もあるのかなと。顔がぱっと浮かぶ、イメージが思い浮かぶという体験はラジオドラマではなかなかない。本編とはちょっと違った角度での楽しみ方ができるなということもあって、ぜひやってみようと」と制作を進めた経緯を語る。

 ◇せりふのニュアンスがきっちり粒だって聞こえるように

 スピンオフのドラマの脚本を本編のメイン脚本家が書くのもめずらしいが、本編の制作統括が演出を担当するのも異例だ。熊野さんは「『舞いあがれ!』の世界をよく知っている人間が演出しないことには」と名乗りを上げたという。

 これまでにもラジオドラマを演出した経験がある熊野さんは、FMで放送される今作を演出するにあたって、音にこだわった。

 「桑原さんの書いたせりふをしっかりと聞かせる」ことを一番大切にしたという。音楽は「舞いあがれ!」の劇伴を使用したが、「音楽は少なめにして。盛り上げる感じの音楽はそんなにつけてないです。シンプルに繊細で面白いやりとりをしっかりと聴かせる、ちょっとした息づかいやニュアンスが、きっちり粒だって聞こえるように気をつけながら作っていきました」

 ◇ラジオドラマ初体験の毎田暖乃「やり散らかします!」

 八木さんは、桑原さんが手がけた、2020年にNHK-FMで放送されたラジオドラマ「君を探す夏」に主演した縁で、「舞いあがれ!」に出演した経緯があった。熊野さんは、八木さんについて「声の魅力がある。独特の艶と響きのある声を持ってらっしゃって、史子という主人公の心情を、ナチュラルなお芝居の中でじわっとにじませて表現してくる感じが、とてもすてきだなあと思いました」と評する。

 リュー北條を演じる川島さんは、今作について「ご褒美をいただいた、と喜んでいました」といい、「本編の中でああいう(癖の強い)人だったので、(他に)どんな面があるのかな、と演じられるのはとても面白かったと言っていました」と明かす。

 少女役の毎田さんはラジオドラマは初体験だった。「毎田さんのことは、(2020年に放送された朝ドラ)『おちょやん』で最初のオーディションのときからよく知ってるんです。終戦ドラマ(2021年放送の『しかたなかったと言うてはいかんのです』)にも出てもらって。ぜひ、またお仕事したいなと思っていたので、今回、毎田さんにお願いしようと。快諾していただけたので本当によかった」と振り返る。

 毎田さんは「『遠慮しないで思い切ってやってください』と言ったら『分かりました! やり散らかします!』って言いながら(笑い)、どんどん元気にやってくれて。心情の変化をきちんと演じてくれるので相変わらず素晴らしいなと思いました」と語る。

 ◇締めの短歌は収録当日発表 本編に最終回とのつながりも

 締めとなるラストの短歌は収録当日に発表された。「最後の短歌は台本に書いてなかったんです。桑原さんが収録の当日に『最後の短歌はこれです!』って発表したんです」といい、「桑原さんにその場で解説をしていただいて、本編の最終回で舞(福原さん)が五島の空を自分たちの作った翼で飛んでいくことと重なるように作っているんですと話していました。八木さんも川島さんもびっくりして、すごく感激していました」と明かした。

 今作は「舞いあがれ!」初のスピンオフとなった。今後、スピンオフが作られることはあるのだろうか。熊野さんは「そういう声をたくさんいただければ僕としてはうれしいですけれど。これまでも悠人兄ちゃん(横山裕さん)のその後が見たいとか、山田さん(大浦千佳さん)の合コンのスピンオフが見たいとか、いろいろなご意見をいただいてます。その後の話ができるのはとてもすてきなことですし、まずはこのラジオドラマを聴いていただいて、たくさん感想をいただけるといいなと思っております」とメッセージを送った。

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