ブギウギ:梅吉とスズ子、別れのシーンの裏側 15分以上の長回しも「リハなし一発OK」 「父ちゃんブギ」は脚本・足立紳のアイデア

NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第110回の一場面(C)NHK
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NHK連続テレビ小説「ブギウギ」第110回の一場面(C)NHK

 俳優の趣里さんがヒロインを務める2023年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」(月~土曜午前8時ほか)。第110回(3月7日放送)では、ヒロイン・スズ子(趣里さん)と危篤状態の父・梅吉(柳葉敏郎さん)のやり取りが描かれ、視聴者の涙を誘った。この場面での柳葉さんと趣里さんの様子や、撮影の裏側について、制作統括の福岡利武さんが語った。

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 ◇晴れ晴れとした柳葉 感極まる趣里

 第110回では、梅吉が危篤という知らせを受けて、愛子(小野美音ちゃん)を連れて香川を訪れたスズ子。医師から今夜が山だと聞かされたスズ子は、眠っている梅吉の枕元に座り、ずっと梅吉とツヤ(水川あさみさん)、六郎(黒崎煌代さん)と血がつながっていないことが引っかかっていたと心情を吐露する。しかし梅吉は、「ワシとツヤちゃんとお前は血より濃いものでつながってんねや。六郎もな」「心と心でつながってんのや」と返し、スズ子に「歌、聞かせてくれんか」と頼む。

 スズ子が「何がええねん?」と尋ねると、梅吉は「『父ちゃんブギ』で頼むわ」と返し、「東京ブギウギ」の替え歌を歌い出す。スズ子は泣きながら「アホ」とツッコみ、一緒に「父ちゃんブギ」を涙ながらに歌った。

 この場面を振り返り、福岡さんは「撮影前は柳葉さんも趣里さんもすごく集中していらっしゃいました。柳葉さんはこの場面でオールアップだったので晴れ晴れとされていたのが印象的でしたが、すごく訴えるものがあるシーンになったなと思います。趣里さんはお父ちゃんと最後だということで、感極まっていました」と明かす。

 放送では約10分ほどの長いシーンだが、リハーサルなしで、15分以上長回しで撮影したものを編集しているのだという。

 「感情的に揺さぶられて、10分もあることを感じさせないシーンになりました。現場で撮影を見ているスタッフも涙、涙でしたし、本番前の静けさがすごく印象的で、見送るような雰囲気の中で撮影が進みました。リハーサルせずにそのまま本番を撮ったのですが、一発オーケーだったんです。すごく良いシーンになりましたし、親子愛がしっかりと表現できたと思います。それほど柳葉さんと趣里さんの関係が出来上がっていたということでもあるんでしょうね」

 ◇最後に“血がつながっていないこと”に言及した理由

 史実では、スズ子のモデルとなった笠置シヅ子さんが、育ての父の死の間際に、血のつながりがないことについて話し合った事実はなかったという。

 福岡さんは「笠置さん自身は最後まで自分の両親は(育ての親の)音吉さんとうめさんだということを通していたそうなんです。その思いはもちろんくみたいですが、脚本の足立紳さんとしては、しっかり梅吉と話してほしいという思いもあったそうなので、スズ子は言うつもりはなかったけど、独り言のようにつぶやいた話を梅吉に聞かれてしまうという流れにさせていただきました」と説明する。

 血がつながっていないことを梅吉の最期に描いた狙いについては、「改まって話すことでもないと思っていましたけど、スズ子が抱えてきたもやもやを、梅吉が吹き飛ばしてくれたらいいなという思いでした。決着というか、改めて言葉にできればいいなと思っていました」と明かす。

 今回の回想シーンにも登場した、香川で一からやり直したいと語る梅吉に、スズ子が思わず「ほんまの娘やないからか」と言い放つ場面(第48回)について、この時のスズ子の言葉は、梅吉に聞こえていたのだろうか?

 「僕個人としては聞こえていたと思うんですけど、その解釈は見る人に委ねたい。スズ子が自分の出生の秘密を知っていることを、梅吉が気付いているかどうかについても、お好きなように取っていただければと思います」

 ◇「父ちゃんブギ」で「歌の力を描きたい」

 梅吉とスズ子が一緒に歌った「父ちゃんブギ」について、福岡さんは「足立さんの台本に『父ちゃんブギ』と書いてあって、『こんな曲あったっけ?』と驚きました。素晴らしいアイデアだなと思いましたし、きっと梅吉は普段からそうやって歌っていたんだろうなと情景が浮かびました」と笑う。

 これまでに「ブギウギ」ではたくさんのステージシーンが描かれてきたが、この場面では「身近な人と歌うことの良さ、歌のあり方」を表現した。

 「ステージは今までもたくさんやってきましたが、ここでは足立さんがすごく『父ちゃんブギ』をスズ子と梅吉に歌わせたいとおっしゃって。ツヤさんが亡くなる時も、スズ子が思い出の曲である『恋はやさし野辺の花よ』を歌いましたが、今度は一緒に歌ってほしいという強い思いがあったようです。制作側としてもステージ以外の場所で、しっかり歌の力を描きたいと思っていたところなので、すごく良かったと思います」と振り返った。

 最愛の父・梅吉との別れを通して、スズ子は何を思うのか。物語は最終盤にさしかかり、今後の展開からますます目が離せない。

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