緊急取調室 (2025)
第7話 赤い殺意
12月4日(木)放送分
昨年10月に始まったNHK BSとBSプレミアム4Kでの再放送も残すところ1週となった、2018年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「まんぷく」。萬平(長谷川博己さん)と福子(安藤サクラさん)の“萬福(まんぷく)夫婦”をはじめ、「愛すべきキャラクターの宝庫」ともいえる同作において、特に人気を集めたのが、“萬平の親友”を名乗る世良(桐谷健太さん)と、「私は武士の娘です」が口癖の、“ぶしむす”こと福子の母・鈴(松坂慶子さん)だ。なぜ、鈴さんはここまで人気を集めたのか、その魅力を解説する。
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鈴さんは「私は武士の娘です」が口癖で、萬平への不平不満をはじめ、何でも思いついたら口に出してしまう性格だが、それでいてどこか憎めない、みんなの愛されキャラだ。ドラマには第1回から登場。その多くの時間を“萬福夫婦”と共に歩み、ある意味で苦楽を共にし、今や物語を踏破しようとしている。
朝ドラの母親といえば、ヒロインに対して厳しかったり、優しかったりとタイプはそれぞれだが、その言動や行動の裏には「娘の幸せが第一」という思いがあったはず。もちろん、鈴さんにもそういった面はあるが、結局は自分本位というのが透けて見えてしまうこともしばしば。むしろ、ワガママな部分を隠さないところが鈴さんらしさと言えよう。
すねたり、むくれたり、時に仮病を使ったりと、あの手この手で福子ら娘(武士の娘の娘)、または孫たち(武士の娘の娘の娘 or 武士の娘の娘の息子)を自分の都合のいいようにと誘導する、いつまでたっても子離れできない姿は、これまでの“朝ドラ母親像”を逸脱していて、逆に大きな魅力となっていた。そもそも口癖が愛称になるヒロイン母ということ自体、希有(けう)だ。
自分本位な言動(主に義理の息子へのダメ出し)を連発する姿は、一歩間違えれば“毒親”となってしまいそうだが、そこは「さすが」とも言える絶妙な塩梅で、気が付けば“萬福夫婦”をもしのぐ人気キャラへと成長してしまったという不思議さ。今や誰もが認める“もう一人のヒロイン”だと、本放送から5年たった今、確信をもって言える。
もちろん、福田靖さんの巧みな脚本、松坂さんの好演があってこそ。特に松坂さんの上品さ、チャーミングさ、見事なコメディエンヌぶりは、福田さんが作り上げた鈴さんのキャラクターをより輝かせたと言っても過言ではないだろう。
以前、「みんな鈴さんの中に『自分のお母さん』を見ているような感じになるのでしょうね」と語っていた松坂さん扮(ふん)する、“愛すべき鈴さん”と毎日会える(?)のも、あと少し。前週、緊急手術を受け、80歳という年齢もあってか、少々弱った姿を見せていたが、3月25日から始まる最終週では、ファンお待ちかねの“アレ”の回もある。最後までどうかお見逃しなく。
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