虎に翼:第1週で分かったこと ヒロインがよく使う「はて?」と“スンッ” 尾野真千子の語りは時に雄弁で多め 安定感抜群の伊藤沙莉

NHK連続テレビ小説「虎に翼」第1週の一場面 (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「虎に翼」第1週の一場面 (C)NHK

 伊藤沙莉さんが主演する2024年度前期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)。前作「ブギウギ」に代わって、4月1日にスタートした本作は、朝ドラとしては2021年度前期の「おかえりモネ」以来、6作(3年)ぶりに第1週で子供時代が描かれず、初回から伊藤さんが主人公の猪爪寅子として登場し、前評判通り、安定感抜群の演技を随所に披露した。そのほか、この1週間で分かったこととは……?

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 ◇第1週「女賢しくて牛売り損なう?」をおさらい

 「虎に翼」は、日本初の女性弁護士で、後に裁判官を務めた三淵嘉子さん(1914~84年)の人生をモデルとしたオリジナルストーリー。ヒロイン・寅子とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供や追いつめられた女性たちを救っていく姿を描く、リーガルエンターテインメントだ。

 第1週の副題は「女賢しくて牛売り損なう?」。昭和6(1931)年。女学校に通う猪爪寅子は、父・直言(岡部たかしさん)と母・はる(石田ゆり子さん)に次々とお見合いをさせられる。女学校を出たら結婚し、子を産み、家庭を守るべし。そんな考えに納得できない寅子は、猪爪家の下宿人・優三(仲野太賀さん)が通う大学で、法律に出会う。

 教授・穂高(小林薫さん)の言葉から、女性が法律を学ぶ場所があると知った寅子は、明律大学女子部法科へと出願するも、娘に普通の結婚を望むはるは、弁護士を目指すことに猛反対。

 しかし、はると同じように、寅子の女子部進学を反対する裁判官・桂場(松山ケンイチさん)が、寅子に向かって、「君のように甘やかされて育ったお嬢さんは、土俵に上がるまでもなく、血を見るまでもなく、傷つき、泣いて逃げ出すのがオチだろう」と決めつける姿を見て、はるは憤慨。すかさず寅子に六法全書を買い与えると、寅子の覚悟を再度、確認する。

 はるは「ここに来て、あんな若造にあんなこと言われたら、こうならざるを得ないでしょう」と“言い訳”しつつ、「寅子、何度でもいう。今、お見合いした方がいい。その方が間違いなく幸せになれる。それでも本気で、地獄を見る覚悟はあるの?」と娘に問いかけると、寅子は「ある」と即答し、はるも「そう」と納得。“最後の敵”を倒した寅子は、無事“地獄への切符(きっぷ)”を手に入れ……と展開した。

 ◇“スンッ”とした生き方はしたくない現代的な寅子

 ヒロイン・猪爪寅子とはどんな女性なのか。改めて説明すると、大正3(1914)年、「五黄(ごおう)の寅年」に生まれたことから、寅子(ともこ)と名付けられる。女学校の卒業を迎えた年、お見合い結婚を勧める母親を振り切って、女性に法律を教える日本で唯一の学校への入学を決意。そこで出会った仲間たちと切磋琢磨(せっさたくま)し、やがて日本初の女性弁護士となる。世間知らずで自信家の所もあるが、全てに全力の人。弁護士として、裁判官として、一歩ずつ成長していく。あだ名は“トラコ”だ。

 口癖は、疑問にぶつかったときに出る「はて?」。伊藤さんは以前、寅子のキャラクターについて「現代的で『なんで?』と素直に言える子」と語っていたが、この口癖は第1回で4回、第2回で1回、第3回で2回飛び出し、第4回はゼロだったものの、第5回でも1回使われ、第1週で計8回を記録した。

 そんな寅子は、女性がやりたいことも、言いたいことも言えず、必死に家のことしても、重要な場面では男性の後ろに下がり、静かでいることを“スンッ”と表現。第4回の花江(森田望智さん)の結婚式のシーンでは、親友の幸せそうな姿を目にしながらも、“スンッ”とした生き方はしたくない寅子の胸中は、母が勧める結婚への疑問が渦巻いたまま。

 「お母さんの言う通り、結婚は悪くない……とは思えない。なぜだろう? 親友の幸せは願えても、ここに自分の幸せがあるとは到底思えない。というか、何だ、したたかって。何で女だけニコニコ、こんな周りの顔色うかがって、生きなきゃいけないんだ? 何でこんなに面倒なんだ? 何でみんなスンッとしているんだ!? 何でなんだ!?」との“心の叫び”が話題となった。

 ここでのモノローグは、寅子役の伊藤さんではなく、ドラマの語りを務める尾野真千子さんが担当。伊藤さんの演技とのシンクロ率の高さは目を見張るものがあり、だからなのか、第1週のナレーションパートは、時に雄弁で、文量も多めの印象を受けた。また初回の冒頭で、尾野さんが「日本国憲法第14条」を読み上げたのも、象徴的だった。

 8日から始まる第2週「女三人寄ればかしましい?」では、晴れて「明律大学女子部法科」に入学した寅子の姿が描かれるという。この先、どんな地獄が彼女を待ち受けているのか、引き続きドラマを楽しみたい。

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