解説:「おむすび」からひもとく平成“ど真ん中”の2004年 人気絶頂だった歌姫、“最後の年”はプレーオフで涙、“聖地”で歴史的快挙

NHK連続テレビ小説「おむすび」で佐野勇斗さん演じる“福西のヨン様”四ツ木翔也  (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「おむすび」で佐野勇斗さん演じる“福西のヨン様”四ツ木翔也 (C)NHK

 橋本環奈さん主演で、9月30日にスタートした2024年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おむすび」。朝ドラで平成が主な舞台となるのは、2022年度後期の「舞いあがれ!」以来、4作ぶり。物語は、平成“ど真ん中”の2004(平成16年)年からスタートし、その時代を反映した名称やアイテムが散りばめられているのも、見どころの一つと言えるのかもしれない。ここでは、“2004年”がどんな年であったのか、ドラマの内容とひもづけて紹介したい。

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 ◇当時「アユ」と言えば浜崎あゆみ? 2004年に最も売れた曲は…

 「おむすび」は、平成元年生まれのヒロインが、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく、“平成青春グラフィティー”。NHKのドラマ「正直不動産」などで知られる脚本家・根本ノンジさんのオリジナル作品となる。

 9月30日放送の第1回では、橋本さん扮するヒロインの結が、担任教師から「アユの妹やろ」と言われる場面が登場。教師が口にした“アユ”とは、結の八つ年上の姉・歩のことだったが、ざわつくクラスの中で隣の席の恵美(中村守里さん)から飛び出したのは「アユってまさか浜崎あゆみ!?」との言葉。当時の高校生にとって「アユ」と言えば、歌手の浜崎あゆみさんだったことがうかがえた。

 浜崎さんは1998年に歌手デビューしていて、2001年から、ドラマの舞台となる2004年の前年の2003年まで、史上初となる3年連続での日本レコード大賞を受賞と、まさに人気絶頂の頃。結たちが暮らすのは糸島だが、浜崎さんも同じ福岡出身で、「アユの妹=浜崎あゆみの妹」と一瞬でも思った恵美の考えは「突拍子もない」とは言い切れないのかもしれない。

 ドラマではその後も、結が出会うギャルメンバーの一人、ルーリー(みりちゃむさん)の携帯電話の着信音(着メロ)が浜崎さんのヒット曲「Boys & Girls」(発表は1999年)だったりと、今後も時代を映す鏡として、浜崎さんに関するものが劇中に登場しそうな気もするが、果たして……。

 ちなみに2004年に最も売れた曲は、平井堅さんの「瞳をとじて」だという。同曲は、大ヒットを記録した映画「世界の中心で、愛をさけぶ」の主題歌として有名。「世界の中心で、愛をさけぶ」は、片山恭一さんの青春恋愛小説が原作で、同年に連続ドラマも放送され、日本に“セカチュー”ブームを巻き起こしている。

 ◇ダイエーホークス、最後の年 “再編問題”で揺れに揺れたプロ野球界

 「おむすび」には朝ドラらしく、ヒロイン一家(米田家)が食卓を囲むシーンがたびたび登場し、テレビでプロ野球中継を見ていることも。

 結の祖父の永吉(松平健さん)が、地元・福岡を本拠地とするパ・リーグの球団、ホークスのファンということで、ホークスの試合が当然、映っているのだが、2004年は、ダイエーホークス、最後の年(球団譲渡で翌年から『ソフトバンクホークス』に)としても知られる。

 前年、日本一に輝いたダイエーホークスは、2004年も強さを発揮。打撃三冠王に輝いた松中信彦選手の活躍もあって、レギュラーシーズンを1位で終えるが、同年から新たに導入されたプレーオフで西武ライオンズに敗れてしまい、リーグ優勝と日本シリーズ進出を逃している。

 結局、ライオンズは日本シリーズで、セ・リーグ覇者の中日ドラゴンズに競り勝ち、日本一に。一方で、2004年のプロ野球界といえば、近鉄バファローズの球団消滅(オリックス・ブルーウェーブとの合併)に伴う“再編問題”で揺れに揺れた年でもあり、パ・リーグにはバファローズに代わる新球団として、楽天ゴールデンイーグルスが誕生と、2004年は近鉄バファローズ、最後の年としてもファンの胸に深く刻まれている。

 ◇高校野球では真紅の大優勝旗がついに津軽海峡を越えた!

 「おむすび」のヒロイン・結の周りには、今のところ2人の高校球児がいる。一人は、結の幼なじみで高校のクラスメートの陽太(菅生新樹さん)。もう一人が、栃木から福岡西高校に野球留学中の翔也(佐野勇斗さん)だ。

 10月10日放送の第9回では、陽太と翔也がグラウンドで早速、対戦する様子が描かれたが、この2人が目指す甲子園では、この年(2004年)の夏、南北海道代表の駒大苫小牧が初優勝を遂げ、真紅の大優勝旗がついに津軽海峡を越えるという歴史的快挙も。

 同大会(第86回全国高校野球選手権大会)には、宮城代表の東北高校のエースとしてダルビッシュ有投手が“最後の夏”として出場。大阪代表のPL学園高校の前田健太投手が甲子園デビューを飾っている。

 「おむすび」に話を戻すと、第9回の放送で、ピンチにリリーフ投手として登場し、好投を披露した翔也は、試合中の“メガネ姿”から、翌日の新聞に「福西のヨン様」と紹介されたが、ここでの“ヨン様”とは、2004年ごろ、日本でも大ブームを巻き起こしていた韓国ドラマ「冬のソナタ」の主演俳優、ペ・ヨンジュンさんの愛称が元ネタ。

 SNSでは「ヨン様って久々に聞くなあ…」「ヨン様。ああそういえばこの頃か」との声が上がったが、こうやってドラマを通して、ちょっぴり懐かしい気持ちになるのも一興だ。

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