じゃあ、あんたが作ってみろよ
【じゃあ、勝男が作ってみろよ】これで完璧!筑前煮の作り方
12月25日(木)放送分
俳優の桜井ユキさん主演のNHK「ドラマ10『しあわせは食べて寝て待て』」(総合、火曜午後10時)が話題だ。4月1日にスタートし、第1話のNHKプラスでの視聴数(同時または見逃し配信)は、同局の連続テレビ小説(朝ドラ)と大河ドラマをのぞく、ドラマ作品の中で歴代1位を獲得。「心に効くドラマ」「見るデトックス」などと表現する視聴者もいるが、ここまで成功を収めているドラマ制作の裏側について、制作統括・小松昌代さんに話を聞いた。
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ドラマは、水凪トリさんの同名マンガが原作。健康、仕事、マンション、将来設計など、いろいろなくした主人公が、おいしそうな薬膳ご飯とたおやかな団地の人間関係を通して心身を取り戻していき、身近にあった自分次第の幸せに気づいていく、おなかの底からじんわりと温かくなる物語だ。
NHKプラスの視聴数に加え、ドラマの公式サイトの記事(桜井さん演じる主人公が抱える膠原病についてや薬膳レシピ、キャスト対談など)のアクセスの良さが反響の大きさを物語っていて、小松さんは「うれしい驚きです」と明かす。
「ドラマでは何か大きな事件が起こったりはしないのですが、さとこ(桜井さん)が発した一言や仕草など、普段の生活の中の何気ないやりとりを、ご覧になっている方々がすごく敏感に感じ取ってくださっているのをものすごく実感していますし、さとこと同じような病を抱えている方、そうでなくても、同じようなことを実感している方からの声もたくさんいただけて、関心の高さを感じています」
そんな小松さんが、水凪さんの描く原作マンガを読んで最初に思ったのが「これは闘病記でない」ということ。
さらには「主人公は生活者で、いろいろなものをもがれてもちろん落ち込んだりもするのですが、悲劇のヒロインではなく、自分にできることを淡々とこなして今を生きようとしていることのすてきさ、時折ユーモアさえも感じる反応の良さ、根底にある他者に対する視線の温かさや空気感」に魅力を感じたようだ。
「何気ない会話に散りばめられた言葉にすごくハッとして、素直に気づかされることの多い作品だなと思いましたから、そういったことをどうやって忠実にドラマの中に生かせるかが課題ではありました」
では、ドラマ化にあたって何に対して一番、意識を傾けたのか。原作者の水凪さんとは、登場人物のキャラクター造形はもちろん、原作がまだ連載中のため、「ドラマとしてどうやって終わらせるか」を相談、確認してから脚本作業に入ったというが……。
「まずはドラマチックにはしない。これは一番の決めごとでした。1話を45分に収めて起承転結を作ろうとすると、どこかで物語を展開させるために事を起こしたり、必要以上にドラマチックにしようって、どうしてもやりたくなってしまうものなのですが、それは絶対にしない。描きたいのは、日々とても小さな浮き沈みや起伏があって、それをどうやって楽しみに変えていくのかであって、そこにドラマチックなことは必要ないので」
もう一つ、小松さんらドラマの制作陣が共通して持ち合わせていた意識が、さとこという人間を「ことさらヒロインにしない」だ。
「そこもとても(意識として)大きかったですし、あとはキャラクターを、ビジュアル含めてドラマの中でどう生かしていくか。ドラマを制作する皆さん、マンガ原作のときはそうだと思うのですが、生身の人間が演じることで、どうしてもやりとりの印象が強くなってしまったりというのはあるので、そうならないよう、どうやってキャラクターを動かすのか、その人間がどういうふうに見えるかはすごく考えました。とてもすてきなせりふ、言葉が原作マンガの中にあるので、そのせりふをなるたけそのまま生かすため、生身の人間にそれを言わせるための状況を自然に作ることは、とても気をつけました」
ドラマチックにしない、ことさらヒロインにしない。ある意味、逆説的な作りが奏功した形だが、それだけでは「心に効く」ドラマにはならなかったはずだ。
「病気や経済的なことはもちろんリアルに描きはするのだけど、ことさら深刻にしたり、暗くなったりと、ご覧になっている方にとって重くなり過ぎないようにという“きわきわの部分”も常に意識しています。脚本家ともそういった話はしてきましたし、撮影中も、編集作業でも、『できすぎだよ』とはならず、でもしんどくもならないよう、リアルとユーモア、弱さと強さのギリギリの塩梅というのは、みんな心にとめていました」
劇中には、さとこ(時に別の登場人物)が“落ちる”瞬間が必ずあるが、そこからほんの少し浮かび上がることで見えるかすかな光、わき上がるぬくもりが、不思議な読後感を生むドラマ、それが「しあわせは食べて寝て待て」。
「ご覧になっている方々も、なんでもないところを見て感じ取ってくださって、想像もしてくださるので、余白というか、作り手として結果を決めつけずにゆだねてしまおうってところはあるかもしれません。あとは実際に役を通して表現してくださっているキャストの皆さんの功績はとても大きいと思っています」
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