解説:「あんぱん」東海林さんがハマり役 「俳優・津田健次郎」が引っ張りだこな理由 役の多面性を表現する確かな演技力

連続テレビ小説「あんぱん」で東海林明を演じる津田健次郎さん(C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」で東海林明を演じる津田健次郎さん(C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)で、主人公・のぶ(今田さん)の上司で、高知新報の編集局主任の東海林明を演じている津田健次郎さん。今年声優デビュー30周年を迎えるベテランで、近年では俳優として話題の映像作品に多数出演。艶やかな低音ボイスと豊かな表現力で、数々のキャラクターに命を吹き込んできた津田さんが、俳優としても引っ張りだこの理由とは? 過去の出演作などからひもといてみたい。

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 ◇舞台役者からキャリアをスタート 声優としてアニメ界で欠かせない存在に

 中高生の頃から名画座に通うほどの映画好きだったという津田さんは、俳優として活動を始めつつ、1995年のテレビアニメ「H2」の野田敦役で声優デビュー。幅広い個性を持つキャラクターを演じ、「遊☆戯☆王」シリーズの海馬瀬人や「テニスの王子様」の乾貞治、「ゴールデンカムイ」の尾形百之助、「呪術廻戦」の七海建人、「チ。―地球の運動について―」のノヴァクなど、代表作を挙げればキリがないほどの人気ぶりで、日本のアニメ界に欠かせない存在となっている。

 近年、声優のドラマ進出は珍しくないが、津田さんはもともと映画監督志望で、舞台役者として芸能キャリアをスタート。俳優として「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)などにも出演していたが、出演時間もせりふも少ない端役だったという。

 そんな津田さんだが、2020年度前期の朝ドラ「エール」で語りを担当し、同ドラマに出演したことをきっかけにテレビドラマや映画への出演が増加。「エール」に出演した際には、「語りとして参加させていただいてきて、本当に個人的に好きな作品。顔を出す方でも参加させていただけるなんて」と感慨深げに語っていたが、翌2021年には吉高由里子さん主演の「最愛」(TBS系)にレギュラー出演。警視庁捜査第1係長の山尾敦役に抜てきされ、俳優としての知名度を一気に高めた。

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 ◇これまでに演じた役は?

 津田さんが「最愛」で演じた山尾は、殺人事件の重要参考人となった実業家・梨央(吉高さん)を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平さん)の上司にあたる人物。部下たちへの接し方はちゃめっ気たっぷりで、緊張感あるサスペンスドラマにおいて視聴者の癒やしの存在ともなっていたが、第8話でひょう変。部下を「使いどき」と利用しようとするなど、冷酷な一面が明かされ、見る者に鮮烈な印象を残した。

 2023年の「ラストマン-全盲の捜査官-」(TBS系)では、警部補・護道心太朗(大泉洋さん)の実父・鎌田國士を好演。鎌田は強盗殺人事件の犯人で、無期懲役で服役中という役どころ。服役中の現在と料理人として働いていた若かりし頃、20代から70代までを見事に演じ分け、演技力の高さを証明した。

 2024年の「西園寺さんは家事をしない」(TBS系)では、ミステリアスな料理系YouTuber「カズト横井」こと横井和人を演じ話題に。主人公・西園寺一妃(松本若菜さん)とシングルファーザーの楠見俊直(松村北斗さん)の恋模様を描いた本作において、いわゆる“当て馬”となる役どころだったが、「あなたの全てと一緒にいたいんです」と思いを真っすぐ伝える姿が「イケオジすぎる」と視聴者を魅了。西園寺が楠見にひかれていることを悟って身を引く場面では、その繊細な演技が視聴者の涙を誘った。

 同作を手がけた岩崎愛奈プロデューサーは、「津田さんはすごく大人でカッコイイ方なんですが、コメディパートではおもいきり面白い方向に振り切ってくれて。その反対で、シリアスな場面では、あの美しい声と真っすぐなお芝居で言葉に重みを持たせ、誠実さを加えて話してくださる。津田さんの魅力が、横井に深みを与えてくださったと思っています」と、津田さんの演技をたたえていた。

 ◇「あんぱん」東海林の“ギャップ”が視聴者を魅了

 数々の話題作で存在感を放ってきた津田さんが「あんぱん」で演じるのは、高知新報の編集局主任の東海林。泥酔状態でのぶを高知新報にスカウトしたものの覚えていなかったり、適当な発言をして部下の岩清水(倉悠貴さん)にツッコまれたりと頼りない一面もあるが、戦後において何が世の中に必要なのか、メディアの役割とは何かをのぶたちに問いかけるなど、仕事への熱い情熱を持った人物だ。

 そんな東海林の“ギャップ”に魅了される視聴者も多く、SNSでは「東海林さんのギャップがほんといとおしい」「ハマり役すぎて最高」「イケボで語る東海林も、浮かれておどける東海林も、すべての津田健次郎さんが好きです」など、絶賛する声が寄せられている。本格登場からまだ1週間ほどしかたっていないにも関わらず、東海林が早々に視聴者から愛されるキャラクターになったのは、津田さんの好演あってこそだろう。

 このように、キャラクターの多面性を表現する演技力が、ドラマ出演が増えた理由の一つにあるのではないかと思う。耳に残る“イケボ”と、シリアスからコミカルまで対応可能な確かな表現力を生かして、多くの作品で魅力的な役柄を演じてきた津田さん。「あんぱん」での東海林の活躍はもちろん、津田さんが俳優として今後どのような役を演じるのか楽しみでならない。

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