注目映画紹介:「白鯨との闘い」 命懸けの海の男の生きざまと人間の極限状態の姿にくぎづけ

映画「白鯨との闘い」のワンシーン (C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.
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映画「白鯨との闘い」のワンシーン (C)2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED.

 ハーマン・メルビルの「白鯨」に隠された真実を書いたナサニエル・フィルブリックさんの同名小説を原作に、「ビューティフル・マインド」(2001年)などのロン・ハワード監督が映画化した「白鯨との闘い」が16日から公開される。大海原を舞台に男たちの闘いを描いたアドベンチャー大作。人間の極限の姿を臨場感たっぷりに映し出した。

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 1819年、一等航海士オーウェン・チェイス(クリス・ヘムズワースさん)は、妻とまだ見ぬ子に「必ず帰る」と約束をして、捕鯨船エセックス号に乗り込んだ。仲間は21人。ジョージ・ポラード船長(ベンジャミン・ウォーカーさん)は、名門の出だ。当時、捕鯨は一大産業だった。米ナンタケット島を出たあと、クジラを仕留めることに成功すると、巨大なクジラのうわさを聞きつけ、さらに船を進める。ところが遭遇したマッコウクジラは、誰も見たことがないほど巨大で手ごわかった。激闘の末、船は大破してしまう……という展開。

 迫力映像に息をのむ。海のさまざまな表情、現れた巨大なマッコウクジラはもちろんのこと、海の男たちもエネルギッシュだ。引きずられる縄やはためく帆にカメラが寄りながら、前半は捕鯨船での仕事が生き生きと描かれる。19世紀初頭。捕鯨産業の繁栄の陰には、死と隣合わせで働く人々がいた。人間の生命力の強さをまざまざと見せつけられる。たたき上げの航海士チェイスに対して、ポラード船長は家業を継いだお坊っちゃん。2人の軋轢(あつれき)が前半のドラマ部分を盛り上げる。鯨に船を大破されて海に投げ出された後半は、生きるための過酷な旅路が続き、ここからは観客にジリジリとする展開の連続。俳優たちがずぶ濡れになって、過酷な減量もし、人間の極限状態を大熱演している。大自然の驚異と人間の小ささ、そして命がけの男の生きざまが、重々しくのしかかってくる。

 「アベンジャーズ」シリーズのヘムズワースさんが男気あふれる航海士を魅力的に演じているほか、「バッドマン・ビギンズ」(05年)などのキリアン・マーフィーさん、「インポッシブル」(12年)などのトム・ホランドさんらが迫真の演技を見せる。映画「パディントン」の声でも活躍のベン・ウィショーさんが、真実を聞き取るメルビル役を好演。CGで作りだされた巨大な白鯨が実によくできていて、不気味なほどだ。16日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。漂流したくないけど、漂流ものはけっこう好き。

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