マイケル・ボンドさんの児童文学を実写化した映画「パディントン」(ポール・キング監督)が公開中だ。40カ国語以上で翻訳され、世界で3500万部以上の売り上げを誇るロングセラー児童小説が原作で、赤い帽子とダッフルコートがトレードマーク、英国紳士のクマのパディントンが繰り広げる冒険を描いている。松坂桃李さん、木村佳乃さん、古田新太さん、斉藤由貴さんらが日本語吹き替えを担当している。パディントンが招き入れられるブラウン一家の娘・ジュディ役の声を務める三戸なつめさんに話を聞いた。
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今作が声優初挑戦となった三戸さんは「やってみたいなと思っていた」と声優業に興味があったといい、「小さい頃からすごく好きだった『パディントン』に携われただけではなく、その作品で初の声優というのがすごくうれしかった」と喜ぶ。アフレコでは「せりふの掛け合いが追いつかなかったりして、最初はすごく難しかった」と苦労を明かし、「せりふのタイミングを書いてくださっていたのですが、そのタイミングとずれたら、次のパディントンがしゃべるところになって、もうジュディしゃべり終わっているのに、まだ自分がせりふを言っているみたいな感じになってしまった」と振り返る。しかし、「監督さんに丁寧に教えていただいて、すごく楽しく声優をできました」と充実感をにじませる。
中学生ぐらいの女の子の声を演じるにあたり、「わりと自分のそのままの声でいけるのかなと思っていた」と話す三戸さんだが、「自分が思っていた以上に『子供っぽさを出してください』と言われたので、ちょっと高めの声で無邪気な感じを意識しました」と説明する。普段とは違う声を出し続けるため、「違うことを意識してしまうと(声質を変えることが)おろそかになってしまったりしたので、忘れずに心がけるというのが大事だった」という。初めての挑戦で大変なことも多かったが、三戸さんは「“クマ語”が楽しかったです」と笑顔を見せる。
自身の声が入った映像を見て、「これで大丈夫かな……みたいな不安もあった」と三戸さんは話すも、「ちょっとむずがゆかった」と照れ笑い。自身の姿が映っている映像よりも声優の方が「(むずがゆさは)ちょっと強かった」といい、「(自分は)こんな声なんだと」と感じたと話す。
今作では吹き替えだったが、今後アニメなどで声優に挑戦してみたいかと聞くと、「やってみたいです!」と三戸さんは力強く答えた。「ゆるくて自分っぽいキャラクターか、ちょっと悪い役みたいなものにも挑戦したい」と目を輝かせる。
子供の頃から原作が好きだったという三戸さん。「めちゃくちゃ感動しました!」と映画を絶賛し、「面白いところや笑える部分もたくさんあるのですが、パディントンのために家族が一致団結したりしているシーンなどは、とても家族愛を感じました」と力を込める。
パディントンの魅力について「見た目はものすごく可愛いんですけど、すごく勇気があるクマ」と評し、「人思いだし、いろんなことに挑戦して、失敗しても立ち向かっていくという部分はいいところだし、自分も見習わなければと思います」とパディントンをたたえる。
パディントンはクマのキャラクターだが、「小さい頃からクマが大好き」と話す三戸さんは、クマ好きになったきっかけを、「5歳ぐらいの時にお母さんがクマのぬいぐるみを買ってくれたのですが、そこからもしかしたら、ずっと好きなのかもしれない」と明かし、「リボンとかは結構もうボロボロにはなっていますが、今でもそのクマはベッドの横に座っています」と言ってほほ笑む。
「クマが一番好き」という三戸さんにクマ以外で夢中になったものを聞くと、「小さい頃からマンガが好きで、昔はマンガ家になりたかった」といい、「(マンガも)描いたりもしていましたが、それもクマが題材になっているものでした(笑い)」と、ここでもクマ好きの一面を明かす。マンガ家を断念した理由について「マンガを友達に見せたら面白くないと言われて、そこから描かなくなりました(笑い)」と“苦い”思い出を明かした。
2015年、三戸さんは歌手デビューや映画出演など多方面で活躍したが、「本当にありがたいことに、初めてのお仕事をたくさんした一年でした」と感謝し、「地方にもたくさん回らせていただきましたし、いっぱい飛行機と新幹線に乗りました」と振り返る。忙しい日々を送る中、街中ではよく声を掛けられるようになったといい、「主婦の方がすごく増えて、お母さんと娘さんでイベントに遊びに来てくれたり、小さい子も(自分と同じように)前髪を切ってきてくれたりして、めちゃくちゃ可愛いかった」と喜ぶ。
ファン層は女性が中心ながらも「最近は男性の方も増えてきた」と話し、「男性の方もたまに切りすぎた髪形の方もいて、結構感動しました」と打ち明け、「男性でそこまでいったかと思ったし、(髪形の)フォルムも一緒だったので、一緒に写真を撮らせてもらいました」とうれしそうに語る。
男性でさえもまねする三戸さんの髪形だが、「もう10年以上この前髪で過ごしていて、そのお陰で『前髪切りすぎた』という曲でデビューでき、そこでたくさんの方に知ってもらえたから、まあ切りすぎているといわれてもいいかなと(笑い)」と三戸さん。続けて、「自分がお母さんになって子供と同じこの髪形をしたいので、ずっとこの髪形ではいようかなと思います」と思いをはせる。
今後どのような女性になっていきたいのか……。三戸さんは「(『パディントン』の)ブラウン夫人みたいに、お母さんだけど子供心を忘れていない夢見る女性で、ファッションとかもカラフルで可愛く、自分も大人になってもああいう自分の好きなファッションとか、好きなこととか、やりたいことを貫いているようなすてきな女性になりたい」と力を込める。
理想の男性像については「たれ目でものすごく優しい人が好き」と三戸さん。「誰にでも優しい人はだめというのはよく聞きますが、男の人はきっと付き合って少しの間はすごく優しいけれど、慣れたら絶対優しくなくなっていくと思う」と持論を語り、「誰にでも優しい人は多分根がすごく優しいから、そういう人は結婚してもずっと優しいだろうなと思うから、すごく優しい人がいい」と三戸さんなりの“優しさ論”を展開する。
今作のお気に入りのシーンを、三戸さんは「パディントンがスリを追い掛けていくところがあって、あそこのドタバタ劇がすごく面白くい」と切り出し、「そのシーンがあったからたくさんの人にパディントンが受け入れられて、ジュディもパディントンに心を開いていく大事なシーンだと思うので、そこが一番好き」と理由を説明する。
自身が吹き替えを担当するジュディの見どころを尋ねると、「もともとはパディントンのことを毛嫌いしていて、結構ひどいことを言ったりするのですが、スリを追い掛けるシーンがあってジュディがだんだん心を開いていき、パディントンと仲よくなっていくので、そういう過程やシーンを注目して見てほしい」とアピール。そして、「すごく寒い時期ですが、『パディントン』の可愛らしい世界観にほっこりしていただき、家族愛などで温かい気持ちになって見ていただけたらうれしい」とメッセージを送る。
もし実際にパディントンが自宅に来たら……と話を振ると、三戸さんは「迷わず、どうぞどうぞと入れます!」といい、「初めはびっくりしますけど、パディントンは紳士でいいクマなので、そこは結構安心できます」と楽しそうに話し、「パディントンに『なんでやねん』とか関西弁を教えようかな」と笑う。
また、今年挑戦したいことについて、「小さい頃から絵を描くのが好きで、今キャラクターを考えたりして描くのにはまっていますが、それが短編でもいいのでアニメになってくれたらいいなと思ったりしています」と三戸さんはほほえんだ。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1990年2月20日生まれ、奈良県出身。2010年に関西で読者モデルとして活動を始め、2012年に上京。多数のファッション誌でレギュラーモデルとして活躍し、13年には自身初のセルフプロデュース本「なつめさん」を発売。15年にはCAPSULEの中田ヤスタカさんのプロデュースでシングル「前髪切りすぎた」でメジャーデビューしたほか、「恋するヴァンパイア」で映画初出演を果たす。今作が吹き替え初挑戦。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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