ジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督の最新作「ヘイル、シーザー!」が、13日から公開された。ハリウッドの黄金時代を舞台に、スタジオの“何でも屋”が大スターの誘拐事件を追うコメディー作。ジョージ・クルーニーさん、ジョシュ・ブローリンさん、スカーレット・ヨハンソンさん、チャニング・テイタムさんら豪華キャストが集結した。
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1950年代。ハリウッドのスタジオで、命運を懸けた超大作「ヘイル、シーザー!」の撮影中、主演俳優で世界的大スターのベアード・ウィットロック(クルーニーさん)が突然、姿を消した。スタジオには誘拐を匂わせる脅迫状が届く。スターの不祥事をもみ消したり、監督の怒りを鎮めたりするスタジオの“何でも屋”エディ・マニックス(ブローリンさん)は、若手女優(ヨハンソンさん)のお色気を使って秘密裏に身代金を準備したが、双子の記者(ティルダ・スウィントンさんが一人二役)がスクープをかぎまわっており……という展開。
ハリウッド黄金期への愛情と皮肉もたっぷりで、映画製作の裏側を見ているような面白さでまったく飽きさせない。勇壮なローマ軍の行進、投げ縄の西部劇、とことん明るいミュージカル劇、大輪の花が咲いたような水中ダンス、男女の修羅場がいかにものメロドラマ……華やかな撮影風景が、流れるようなカメラワークで展開され、見ていて心が躍る。大きな機材とセットに囲まれながら人々が集まってわいわい言いながら作る当時の映画製作の現場が再現されており、熱気とともに“銀幕のスター”を生み出し人気を維持するための必死の努力もうかがえる。1950年代といえばテレビの急激な台頭で、映画業界は相当焦っていたに違いない。「これが映画ですよ」とばかりに作り上げた、色彩豊かな表の顔があるかと思えば、裏では、巨大なスタジオという「組織」の歯車となって働く人々の姿が見られる。トラブルをもみ消そうと奔走するフィクサーの“何でも屋”マニックスもその一人だ。彼は気が休まるときがないが、それが映画人として、仕事人間としての誇りなのだろう。
誘拐事件というとっつきやすい話が軸になっているため、映画通でなくても楽しめる。娯楽産業での赤狩りという当時の世相を反映した内容も盛り込まれ、事件のてん末が、「人をだまし切る=映画」という装置の暗喩(あんゆ)にもなっている。ただ楽しいだけでなく、ピリリと心に刺さる笑いがくせになりそうだ。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで13日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作で映像編集者を演じているフランシス・マクドーマンドさんが大好きです。
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