リーガルハイ:半沢パロディーの裏側 プロデューサーが語る

リーガルハイで主演する堺雅人さん
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リーガルハイで主演する堺雅人さん

 「やられてなくてもやり返す。八つ当たりだ!」。流行語大賞を受賞した大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)の決めぜりふ「倍返し」をもじり、放送前から話題をさらった連続ドラマ「リーガルハイ」(フジテレビ系、水曜午後10時)。同じ堺雅人さんを主演に起用したドラマとはいえ、他局への便乗との批判も受けかねないが、リーガルハイを第1期から手がけるフジテレビの成河広明プロデューサーは「尊敬する作品だからこそのパロディー」という。全編を彩るパロディー精神について語ってもらった。(毎日新聞デジタル)

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 ドラマは、堺さんが演じる毒舌弁護士・古美門研介と新垣結衣さん演じる社会正義の使命に燃えるが融通の利かない新人弁護士・黛真知子の凸凹コンビが活躍するネタやパロディーがちりばめられた法廷コメディー。2012年に放送された第1期では「犬神家の一族」のパロディーも登場した。

 第2期放送は13年4月に発表され、脚本は7月の「半沢直樹」放送スタート前に「5、6話まで作っていた」という。「半沢直樹」の大ヒットにも「物語の根幹は変わっていない」というが、「リーガルハイ」が「自分たちの尊敬するような作品のネタを織り交ぜていく作品」だからこそ(「リーガルハイ」放送前に)感じたことがあったという。

 それは「半沢直樹という名作ドラマを、なにかしらのネタとして盛り込んでくるんじゃないかという期待」で、「期待にどう応えられるんだろう。やらないのもちょっとねという気持ちになった。それは(脚本家の)古沢(良太)さんも一緒だと思う。そういう話もした」と明かす。

 そんな状況のなか、1話で飛び出したのは、堺さん演じる古美門の「やられてなくてもやり返す! だれかれ構わず、八つ当たりだ!」というせりふだ。1話は、裁判に負けたことのなかった古美門が初めて敗北を喫し、そこから立ち直るストーリーで、このせりふは落ち込んだ古美門の復活を示す重要なせりふとして描かれている。

 成河プロデューサーは、このせりふを「古美門という人間を端的に表している言葉であるべきだった。それをさらに半沢直樹で有名になった『倍返し!』という言葉を感じさせながらというのは、とても難しかったと思う。あのせりふは素晴らしいせりふ。それは脚本家である古沢さんが天才であるゆえのせりふ」と脚本家の古沢さんを絶賛する。

 そしてそのせりふは、半沢直樹の放送前から意図は変わっていないものの、「倍返し的な要素や、八つ当たりという言葉に変えたのは、最終的に決定稿にする時に(決めた)。せりふを発明していくんです」と明かした。

 また、1話の冒頭では、堺さん演じる古美門が法廷で、被告となったアイドルの南風るんるんが歌う「妄想腐女子girl」をユニークな振り付けで歌うシーンが登場する。硬派な半沢直樹の堺さんに見慣れた視聴者にとっては衝撃的ともいえるシーンだっただろう。だがそれは不可欠な演出だったという。成河プロデューサーは「見る立場からすると、(初回は)どうしても(半沢直樹を)意識すると思う。日本の半分近い人がリアルタイムで見た作品なので。違う物語ということは分かっていても、どこか引っ張られちゃう」と放送前、“脱半沢”が課題だったという。半沢直樹のパロディーやアイドルソングが「ちゃんとリーガルハイというものが戻ってきたという宣言になったのかもしれない」。成河プロデューサーにとって手応えを感じた瞬間だった。

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