おっさんずラブ:全員愛せる稀有な恋愛ドラマ キャスティングのキモは芝居力

連続ドラマ「おっさんずラブ」の一場面=テレビ朝日提供
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連続ドラマ「おっさんずラブ」の一場面=テレビ朝日提供

 俳優の田中圭さん主演の連続ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系、土曜午後11時15分)が2日、ついに最終話を迎える。「ヒロイン・吉田鋼太郎」「この春いちばんピュアな(おっさん同士の)恋愛ドラマ」というキャッチーすぎるうたい文句と共に4月にスタートした同ドラマだが、回を追うごとに人気は過熱し続け、5月26日の第6話放送時には、Twitterで「#おっさんずラブ」がトレンド世界1位に躍り出るほどの勢いを見せている。最終回直前に、改めてドラマの魅力に迫った。

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 ◇吉田鋼太郎演じる“ヒロイン武蔵” 田中圭も「すごく可愛い」と絶賛

 ドラマは、“ロリで巨乳な女子”が好みのモテない33歳独身男子・春田創一(田中さん)が主人公。春田は、ひょんなことからルームシェアをすることになった25歳のイケメン後輩男子・牧凌太(林遣都さん)と、乙女心を持つ55歳の部長・黒澤武蔵(吉田鋼太郎さん)という2人の男性に愛の告白をされ、未曽有のモテ期に突入する……という展開。2016年12月に単発ドラマとして放送され話題となった作品が、今回連続ドラマ化された。

 田中さんと吉田さんは同じ役で続投し、連ドラでは牧役で林さん、春田の幼なじみの荒井ちず役で内田理央さんが新たに出演。新キャラクターとして春田が務める天空不動産の上司で、実は牧の元カレの武川政宗(眞島秀和さん)、武蔵の妻・蝶子(大塚寧々さん)、春田の職場のモンスター新入社員の“マロ”こと栗林歌麻呂(金子大地さん)らが加わった。

 ドラマを手がける貴島彩理プロデューサーは、キャスティングについて「とにかくお芝居力のある方にやっていただきたかった」と話していた。今回“ヒロイン”の武蔵を演じた吉田さんに対して、田中さんは「なんでか分からないけど、すごく可愛いと思える」、林さんも「あの愛情に勝てるか自信がない。負けないようにしなければ」と語っていたと明かした。

 吉田さん自身、「ヒロインにならなきゃヒロインにならなきゃと頑張っている」と以前の取材で明かしていたが、いちずで情熱的な“ヒロイン武蔵”のインパクトはものすごい。

 ◇田中圭の“受け”、林遣都の“泣き”… キャストの芝居力

 牧を演じる林さんを貴島プロデューサーは「涙目の芝居がすごい」と絶賛する。春田に恋をする牧の姿に一喜一憂してしまうのは、視聴者だけでなく撮影現場でも同じだったようで、「牧が涙目で切ないウソをついたりすると、現場もしょんぼりしちゃうんです。『牧がかわいそう。本当に春田最悪』みたいになって、(田中)圭さんが『俺じゃなくて春田だから!』と言っていた」というような場面もあったという。

 吉田さんは、3度目の共演という林さんについて「あいつはいつも本気。内なる狂気みたいなものがあって、静かに煮えたぎっている。それが今回ぴったりなんですよね。何しでかすか分からない感じが。1話の最後で(田中さんに)シャワールームでキスして、”あのセリフ”を言える役者はなかなかいないですよね」と語っている。

 また、男たちからの愛の告白はもちろん、蝶子、武川、ちずのそれぞれの思いを真っ向から受け止める主人公・春田を演じている田中さんについても、吉田さんは絶賛。「単発でも共演して、なんて受け芝居がうまいやつだと思った。今回も体全身使って受け芝居してますからね。あれはスゴイ」と表現した。

 メインの3人のほかにも、長年連れ添ってきた夫を男性に奪われることになった妻・蝶子を演じる大塚さん、元カレへの未練たっぷりの武川役の眞島さん、幼なじみへの思いを男性の恋のライバルが現れたことで気付いてしまったちず役の内田さん、終盤から急に男を上げたモンスター新入社員“マロ”役の金子さんと、一筋縄ではいかない個性あふれるキャラクターを成立させる俳優陣の力は、ドラマの大きな魅力につながっている。

 ◇キャラクター全員を愛せる稀有な恋愛ドラマ

 恋愛ドラマでありながら、「アザとい女」「嫌な男」が一切登場しないことも「おっさんずラブ」の魅力だ。これまでの恋愛ドラマであれば、三角関係が描かれると、視聴者に嫌われてしまうキャラクターが登場し、ストーリーを盛り上げる役割を担うことも少なくない。

 しかし、「おっさんずラブ」では、春田、牧、武蔵の三角関係が描かれながらも、誰かが悪者になることはない。また、牧の元カレの武川が春田と牧の関係に苦悩しながら、春田に土下座して「牧と別れてほしい」と懇願する姿は大きな愛を感じさせる。武蔵の妻・蝶子は、春田に振られた武蔵を涙ながらに陰で見守り、ちずは自分の気持ちにけじめを付けるために春田への告白を決意するが、それもしっかりと“彼氏”である牧に「告白していいか」と断りを入れた。

 全員が恋愛に真剣で、それがゆえに行動もストレートなのだ。貴島プロデューサーも「キャラクターみんなを応援したくなるように作っている」と語っているように、視聴者はキャラクターそれぞれに感情移入し、応援しながら、ドラマを楽しんでいるのではないだろうか。それが恋愛ドラマとしては稀有(けう)な魅力となっている。

 いよいよ迎える最終回。貴島プロデューサーは、ドラマ放送前に「すてきな最終回にしたい」と語っていたが、これまで衝撃的な展開を見せてきた「おっさんずラブ」が一体どんなラストを見せてくれるのか。しっかりと見届けたい。

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