今田美桜:「悪女(わる)」でドラマ初主演 演じた役を“当たり役”にする才能

連続ドラマ「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」でドラマ初主演を果たした今田美桜さん
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連続ドラマ「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」でドラマ初主演を果たした今田美桜さん

 6月15日に最終第10話が放送された連続ドラマ「悪女(わる) ~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(日本テレビ系、水曜午後10時)。本作でドラマ初主演を果たしたのが女優の今田美桜さんだ。今田さんは大手IT企業の新入社員・田中麻理鈴役で、最終話の放送後には「今田美桜ちゃん、麻理鈴を見事に物にしてて可愛かった」「表情豊かで頑張り屋の麻理鈴が大好き」と視聴者から好意的な声が多く上がった。30年前の石田ひかりさんと同じ麻理鈴を演じきった今田さんの女優としての魅力に迫る。

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 ◇親近感を抱かせる可愛らしいビジュアル

 原作は、女性向けマンガ誌「BE・LOVE」(講談社)で1988~97年に連載された深見じゅんさんの「悪女(わる)」。1992年に石田さん主演で実写化されていて、30年ぶりの再ドラマ化だ。今田さんが演じた麻理鈴は、3流大学を4流の成績で卒業したが、運良く大手IT企業に入社した落ちこぼれ新入社員で、おかっぱ頭と独特なレトロファッションが特徴。持ち前の根性と明るさで、クセ者社員らの抱える問題にぶつかりながら出世の階段を駆け上がった。

 入社早々に個性を発揮し、社員たちを振り回す麻理鈴は、放送を重ねるに連れて着実に視聴者に応援され、元気を与えるキャラクターになった。SNSには「麻理鈴の元気と努力と強さに救われた」「麻理鈴のおかげで仕事頑張ろうって気持ちになれた」というコメントが寄せられた。最終話では、麻理鈴が社内説明会のスピーチで涙する場面が登場し、「麻理鈴の演説に泣いた」「目が大きいから、涙の粒も大きくてアニメのようだった」との声もあった。

 今田さん演じる麻理鈴が視聴者に受け入れられ、人気を獲得したのは、大きい瞳が目立つ可愛らしいビジュアルとおかっぱ頭というギャップに、麻理鈴のパワフルで仕事にひたむきな姿が相乗効果を生み、視聴者が親近感を抱いたからだろう。現在の職場ではあまり見かけないレトロファッションを着こなす、今田さんの華やかさもドラマを彩った。

 ◇「絶妙なバランスのお芝居」 今後の武器に

 “福岡で一番可愛い女の子”として話題を呼んでいた今田さんが女優として有名になった作品の一つに、2018年放送の連続ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」(TBS系)が挙げられる。今田さんは、ツインテールの美少女ながら“小悪魔”的なキャラクターの真矢愛莉を演じ、その“原作再現度”が話題になった。ドラマの瀬戸口克陽プロデューサーは、愛莉に関する当時のインタビューで「原作でも『圧倒的な美少女』という設定。実世界での普通の美人や可愛い子ではなく、お人形さんみたいな顔を求めた」と説明。オーディションでは、今田さんの目力が決め手になったといい、「目がぱっちりとしていて、部屋に入った瞬間に決めた」と明かしていた。

 今田さん扮(ふん)する愛莉は、SNSで「可愛すぎる」とたちまち話題になり、ドラマの人気キャラクターになった。今田さんの“人形”のようなビジュアルがなせる業だろう。原作ものということから、ともすれば悪目立ちしてしまう可能性もあったが、原作ファンも納得させる存在になったのは、今田さんのビジュアルだけでなく、それによりもたらされる愛嬌(あいきょう)の力があるのかもしれない。

 “一軍女子”の諏訪唯月役で注目された「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(日本テレビ)、大学デビューで気のいい性格の山本寛子を演じた「親バカ青春白書」(同)など話題作への出演を経て、2021年放送の「おかえりモネ」で朝ドラ初出演。今田さんは、若手気象予報士の神野マリアンナ莉子を演じた。どこか陰を帯びたヒロインの永浦百音(清原果耶さん)と対照的な華やかな風貌。物言いは素直でストレートだが、どこか憎めない独特な存在感で、莉子も人気キャラクターになった。今田さんが持つ華やかさと愛嬌が役柄とマッチした結果だろう。

 出演作が増え、演技力を養った今田さん。「悪女(わる)」では、制作サイドが「絶妙なバランスのお芝居」と称賛していた。プロデューサーを務める小田玲奈さんは、麻理鈴に関するインタビューで「一見うざいと言われても仕方ないキャラクター作りは、約30年前の原作が指針になっています。序盤は、どこまでやったら嫌われるか、嫌われないかのチューニングが大変でしたが、今田さんが見事に嫌われることなく演じました」と語っていた。

 振り返ると、今田さんは「悪女(わる)」以前の出演作でも、演じた役が人気を博したケースが多い。演技力で与えられた役のポテンシャルを十二分に引き出し、自身の存在感を介して“当たり役”に昇華させる力があるともいえる。そして、その力が主演作の「悪女(わる)」で発揮された結果、麻理鈴の人気につながったのではないだろうか。

 持ち前の華やかさと愛嬌で、自身の役に人気を呼ぶ力が今田さんにはある。難しい役でも、視聴者に嫌われることなく演じるバランス感覚は今後の武器といえるだろう。ドラマ初主演を果たした今田さんの次の“当たり役”にも注目したい。

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