ラグビー・田中史朗選手:イングランドに大敗の日本代表「そこまで悪い状態ではない」 対フランス戦のポイント語る 

「オータム・ネーションズシリーズ」フランス戦でWOWOWの解説を務める田中史朗選手
1 / 5
「オータム・ネーションズシリーズ」フランス戦でWOWOWの解説を務める田中史朗選手

 欧州で開催中のラグビーのテストマッチシリーズ「オータム・ネーションズシリーズ」。11月12日(日本時間13日)のイングランド戦で52-13と大差で敗れた日本代表は、20日にフランスと対戦する。WOWOWでフランス戦の解説を務める田中史朗選手と、元日本代表の大野均さんが、イングランド戦の感想と共に、フランス戦の見どころを語った。

ウナギノボリ

 ──イングランド戦の率直な感想をお願いします。

 田中選手:日本はミスもありましたが、そこまで悪い状態ではないと見ています。それ以上にイングランドのプレッシャー、またアウェーでの周りからの応援の力もあってこのような結果になったのではないかと思います。

 ──日本代表の良かった点を挙げるとすれば。

 田中選手:ラインアウトからのモールディフェンスはしっかりできていましたし、押されていたスクラムも後半1本取り返すなど、要所要所で良い部分がありました。ただ、全体的に相手のディフェンスのプレッシャーを受けてミスが多く出てしまったことが敗因だと思います。それでも後半、イングランドが少し疲れてきたときには日本もしっかり対応できるようになり、いいスピードでアタックを継続できていましたので、もう少し相手を疲れさせることができればもっと得点できたでしょう。いずれにしても敵地で厳しい試合を経験したこと自体が日本代表の大きな収穫です。若い選手も出場して、来年のW杯へ良い予行演習になったと思います

 ──特にいいパフォーマンスをしていた選手を挙げていただけますか。

 田中選手:フランカーのリーチマイケル選手はアタックでずっと継続して前に出ていました。非常に良かったです。あとは両スクラムハーフの流大(ながれ・ゆたか)選手、齋藤直人選手ですね。いいテンポでボールをさばいていたことに加えてサポートの面も素晴らしく、齋藤選手はトライを取ってくれました。本当にレベルの高い、世界的なスクラムハーフの2人だなと思います。

 ──バックス全体についてはいかがでしたか。

 田中選手:全体的に個人でラグビーをしてしまっていた印象があります。チームで動
いてトライを取るのが本来の日本のスタイルです。イングランド戦はそういう場面がなく、たとえばセンターのディラン・ライリー選手が一人で抜けてもその後のサポートが続かずミスして終わってしまったり、キックから簡単に相手ボールにしてしまうというシーンが多く見られました。また、流選手や齋藤選手が常に声を出していたのに対して、スタンドオフの選手が少し静かだったようにも感じましたので、チーム全体でもっとコミュニケーションを取ってプレーしてもらいたいです。

 ──フランス戦ではどのあたりが重要になるでしょうか。

 田中選手:イングランドには敗れましたが、自分たちを見つめ直して、しっかり相手を見てプレーしてほしいですね。フランスは個人個人が強く、伝統のシャンパンラグビーが復活してきたように感じますので、一人一人がしっかりタックルすること、そして確実にボールをキープすることが大事だと考えています。

 ──解説には元日本代表の大野均さんもいらっしゃいます。

 田中選手:楽しみですね。大野さんはあまり多くを語らない方なので、解説でどんなことを話してくれるのか、今から待ち遠しいです。

 ──今回の開催地、トゥールーズの街とスタジアムの印象をお願いします。

 大野さん:街中にトゥールーズのチームエンブレムが掲げられていて、街を挙げて応援しているのが伝わってきます。ラグビー関係者としてはすごく居心地のいい街ですね。会場のスタジアム・ドゥ・トゥールーズには2007年W杯のフィジー戦でグラウンドに立ったのですが、客席との距離が近いのでお客さんは直にラグビーの魅力を感じることができると思います。選手にとってもお客さんの応援が励みになる、そんなスタジアムです。そのフィジー戦で『ジャポン』コールをもらったのはいい思い出です。

 ──大舞台に立つ日本代表のイングランド戦を踏まえての課題、収穫をそれぞれお願いします。

 大野さん:やはりホームのイングランドは強かったな、という印象です。日本代表は単純なハンドリングミスが多く、特に前半はスクラムでのペナルティーも多くなりました。ただ、ボールをハイテンポで出して継続する本来の日本代表のアタックが世界に通じることはすでに確認できていますし、今はラインアウトもチームの強みになっています。前半はやられたスクラムも後半にはしっかり立て直していましたので、修正能力も付いてきているなと感じています。

 ──日本代表と東芝ブレイブルーパス東京のロックの後輩にあたるワーナー・ディアンズ選手のパフォーマンスはいかがでしたか。

 大野さん:20歳にしてあのような高いレベルでしっかりとプレーできているので、本当に頼もしいです。キックオフやラインアウトでは彼がいることによって彼の高さそのものが日本の武器になります。特にラインアウトではアタックだけでなくディフェンスでも相手に強くプレッシャーをかけていました。あの体格で低いプレーもできますので、今後ますます成長が期待できる選手だと思っています。

 ──長年共に過ごしてきたリーチマイケル選手についてもお願いします。

 大野さん:34歳になった今でもこれだけ素晴らしいプレーを見せてくれていますので、本当に頼もしいです。やはりチームの大黒柱ですし、彼自身も今とても充実していると思います。2019年W杯終了後に体のメンテナンスをして、それを経てハードトレーニングを継続していることが今のパフォーマンスの向上につながっているのではないでしょうか。

 ──ほかにも期待されている選手がいればお願いします。

 大野さん:たくさんいますが、バックローの姫野和樹選手は引き続き世界に通用する
フィジカルで貢献してくれています。あとはセンターのディラン・ライリー選手です。W杯まであと10カ月ありますが、まだ若いのでさらに成長するのではないかと思います。

 ──フランス戦のポイントとなるのはどのあたりでしょうか。

 大野さん:キックでプレッシャーをかけてくる相手の戦略に対していかに修正できる
か、そしてイングランド戦でやられてしまったスクラムでどれだけ事前に準備できるか、この2点に注目しています。フランス戦では前半からスクラムでやられないように、しっかり対応してほしいですし、そういう意味では、フランスにどう対応するかということ以上に、日本代表がやりたいラグビーをさらにブラッシュアップすることが大事だと思います。

 ──今のフランスの印象についてもお願いします。

 大野さん:一部メンバーの変更はありそうですが、世界トップのチームであることに変わりはありません。そんなフランスに対して今の日本代表の力がどこまで通用するのか、非常に楽しみにしています。また、フランスはスクラムに世界一こだわっているイメージがありますので、日本代表が特にディフェンス時のスクラムでいかに相手からのプレッシャーを抑えられるか、という点にも注目しています。その意味では日本代表の3番の選手が鍵になりそうです。

 ──今年、渡仏した際に会って話をされたスタンドオフのロマン・ヌタマック選手についてはいかがでしょうか?

 大野さん:プレーを見ていてもしっかりとフランス代表をコントロールしていることが分かりますし、彼がいることでチームが落ち着いてプレーできているのだろうと感じています。

 ──今回は田中史朗選手、栗原徹さんとのトリプル解説です。最後に解説への意気込みをお願いします。

 大野さん:田中選手とは久しぶりに会うので、解説を楽しみたいと思います。同期の栗原さんはラグビーの知識が豊富です。私も一緒に見ながら勉強させていただきたいと思っています。

 ◇

 WOWOWでは、「オータム・ネーションズシリーズ」の全21試合を放送・ライブ配信中。フランス戦は11月20日午後9時半からWOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで生中継・生配信される。解説を田中さん、大野さん、栗原さんの3人が務める。WOWOWオンデマンドでは、各試合を終了後にアーカイブ配信もしている。

 また、WOWOWのオフィシャルYouTubeチャンネルでは19日午後9時45分から約9時間にわたり、WOWOWラグビー宣伝隊長・しんやさんの初の冠番組「しんやのオールナイトラグビー第3夜 ~今夜もしんやと Let’s 朝まで生ラグビー&フランス戦前夜祭~」を配信する。試合の解説などラグビー談義が繰り広げられる。

写真を見る全 5 枚

テレビ 最新記事