ゲーム業界展望:第1回 VR 社会を変えるインフラに 「ファミ通」浜村弘一氏に聞く

カドカワの浜村弘一取締役
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カドカワの浜村弘一取締役

 ソニーのヘッドマウントディスプレー「PSVR」の発売や、スマートフォン用ゲーム「ポケモンGO」の社会的ヒットがあった2016年のゲーム業界。ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するカドカワの浜村弘一取締役に2016年の振り返るとともに、2017年の展望を語ってもらった。第1回はPSVR発売で注目されるVRについて聞いた。

ウナギノボリ

--2016年11月、ついにPSVRが発売されました。日本の初月の推定販売数は5万台でした。

 数に関しては、残念ながらもう少し出してほしかった。12月にPSVRの再出荷がニュースになったように、継続的に出せていない。コンテンツはまだ始まったばかりで玉石混交で、新ジャンルの確立に期待している。投資フェーズで、今すぐもうからないのは事実だが、今後の普及は確実なので、いまはノウハウを積んでいく段階。ファミコン時代と同じで、どのジャンルが合うか分からない。ドリームキャストで出た水口哲也さんの「Rez」が見直されて、(「Rez Infinite」として)PSVR版が出たり、過去のゲームの“文法”にない作品も出てくると思います。

--VRの可能性は?

 VRがソーシャルでつながったら、もっと実用的で面白いものになる可能性があります。2007年にiPhoneが登場して、その後スマートフォンが世界を変えたように、VRも社会のインフラを変えると思います。例えば、VRがあれば旅行の体験ができたり、ネットにつながってしまえば離れたところでも会議ができたり。音楽やスポーツなどのライブ配信、映画も楽しみです。産業が変わる可能性もありますね。不動産のモデルルームもVRになるかもしれませんね。いずれはヘッドマウントディスプレー(HMD)もなくなり、直接目に照射するようなVRになると見ています。そうなるとインフラとしても、さらに変わっていると思います。

--ゲームのコンテンツとしては?

 VRがインフラになれば、人とつながるゲームが出てくると思います。個人的には(ドリームキャストで発売された)「ぐるぐる温泉」が出てほしい。人が集まってマージャンやトランプをやるオンラインゲームなんですけど、あたかも一緒に部屋にいるかのように、パーティーができるんですよ。

--PSVRの価格は約5万円が微妙という声も。

 VRには、ハイエンドと、スマホベースのローエンドがあって、PSVRはハイエンドで安い価格設定なので、そこは評価できます。ハイエンド機では、台湾のHTCが開発したVR「VIVE(バイブ)」が20年までにコードレス化し、モーションセンサーにも対応し、モニターを2K・4Kにするといっています。さらに触感を与えるコントローラーも出てくるでしょう。そういうとんでもない世界がすぐそこまで来ています。

--普及するのはハイエンドとローエンドのどちらでしょう。

 普及するのは、誰もが持っているスマートフォンを活用したローエンドのVRですね。しかしハイエンド機も、素晴らしい世界が広がるので、ゲームクリエーターの小島秀夫さんは「ファストフードとフルコースの差で、両方成り立つ」と言っています。

--VRでは映像や音楽などゲームのライバルが増えます。ゲームは勝てるのでしょうか?

 昔の話になりますがファミコンの時代から、ゲームは、テレビの画面を巡ってテレビと戦ってきた歴史があります。VRでは、ゲームが音楽や映画と、一つのモニターを取り合う時代になるともいえます。ゲームは、いくつかあるコンテンツの一つということになるでしょう。

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