任天堂の新型携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」が、あと1週間ほどで発売されます。今年のゲーム商戦を占ううえでターニングポイントになるでしょう。既にこのコラムでも、3DS発表のタイミングで取り上げましたが、「裸眼で楽しめる3Dビジュアル」、そして「すれちがい通信」という機能が生かされたハードとソフトがどれだけ注目されるかということです。
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先日発表されたソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯ゲーム機「NGP」は最新のテクノロジー・スペックを盛り込んだデバイスでした。対して、3DSはベーシック(基礎的)な機能を中心にしたハードとはいえ、時代性を盛り込んだ3D機能と通信機能で対抗したと言えるでしょう。本体の予約はあっと言う間に打ち切られ、、オークションサイトなどでは、任天堂の発表価格よりも50%増しのプライス(価格)がつけられていました。それだけ注目度が高いと言えるでしょう。
人気グループ「嵐」を起用したテレビのCMは既に成功した感を醸成しつつあり、そのなかでも相葉雅紀さんバージョンの「僕の実感でいうと3Dより4D、5Dはいっているなこれ……」というつぶやきは、まさに新しい映像を一般的な感覚でとらえた秀逸な表現であり、それがCM演出側の言葉であっても、消費者にワクワクする感覚を呼び起こすのにはピタリとはまっています。
私自身が3DSを体験した感覚で言えば、3D表現とゲームのバランスがとてもよくできており、明らかに「見せられている感」のある3D映画とは異なります。恐らくは自分で操作することと、手にもって操作するという自由度の高い感覚、手持ちによる距離感もほどよくマッチしており、3D演出が生きているのではないでしょうか。うまく伝えられないかもしれませんが、映画ではオブジェクト(物)が前面にググッと出てくるのに対して、3DSの場合は、キャラクターや演出など、ここぞという3D立体的なオブジェックトに見せるため背景がグイッと引き気味になり、その分3Dのキャラやオブジェクトが引き立って見えます。逆転の発想というには買いかぶりすぎかもしれませんが、演出上の工夫が感じ取れます。
ハードと同時発売のソフトは、一通りのジャンルをそろえた感があります。いずれも予約状況には若干余裕があるようで、ソフトの価格は3Dゆえにやや高めです。今後、恐らくは過去にヒットしたソフトの続編が、市場の初動を牽引(けんいん)するものと思われます。
新しいゲームの地平を切り開くハードは申し分のないものができたように思われます。もちろん、ヒットのカギはソフトが握っているのですが、新しいゲームの可能性は広がりました。そして、かつて米の作家フィリップ・K・ディックが描いた立体的なリアリティー体験ができる時代に一歩近づいたような気がします。破壊と創造がセットになったような歴史的なエポック(時代)を、その時代に感じること、遊ぶことががきることは幸運なことですね。
著者プロフィル
くろかわ・ふみお=60年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。
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