わが母の記:モントリオール世界映画祭に出品決定 日本の家族描いた井上靖原作の感動作

映画「わが母の記」の1シーン (左から)役所広司さん、樹木希林さん (C)2012「わが母の記」製作委員会
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映画「わが母の記」の1シーン (左から)役所広司さん、樹木希林さん (C)2012「わが母の記」製作委員会

 今年が没後20年に当たる作家・井上靖さんが1964年に発表した自伝的小説「わが母の記~花の下・月の光・雪の面~」(講談社)を映画化した「わが母の記」(原田眞人監督)が、18日に開幕するカナダ・モントリオール世界映画祭のワールドコンペティション部門に出品されることが3日、明らかになった。出演している役所広司さんは「光栄に思います。世界的な文豪・井上靖さんの家族の物語を、井上さんと同郷(静岡県沼津市)の原田監督が思いを込めて作った『わが母の記』はきっと映画祭の観客に楽しんでいただけると信じています」とコメントしている。

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 映画は、役所と樹木希林さん、宮崎あおいさんら豪華俳優陣が共演。小説家の伊上洪作(役所さん)は父が亡くなったことから実母・八重(樹木さん)の面倒を見ることになった。幼少期、母親とともに暮らしてこなかった伊上は、妻と3人の娘、妹たち“家族”に支えられ、自身の幼いころの記憶と八重の思いに向き合うことに……。八重は、次第に薄れてゆく記憶の中で“息子への愛”を必死に確かめようとし、息子はそんな母を理解し、受け入れようとする……というストーリー。映画「クライマーズ・ハイ」(08年)などで知られる原田監督が、「愛し続けることの素晴らしさ」「生きることの喜び」を描く感動作で、東京・世田谷にある井上さんの邸宅で撮影された。伊上の三女役を宮崎さんが演じる。

 モントリオール世界映画祭は77年に始まり、毎年8月末~9月初頭に開催されているトロント国際映画祭と並ぶ北米最大規模の映画祭。最近では、オスカーを受賞した08年の「おくりびと」(滝田洋二郎監督)がグランプリを受賞し、09年に「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」で根岸吉太郎監督が監督賞を受賞、10年には「悪人」=李相日(リ・サンイル)監督=で女優の深津絵里さんが最優秀女優賞を獲得したことでも話題になった。このほか、99年に「鉄道員」(降旗康男監督)で高倉健さんが主演男優賞、08年に「誰も守ってくれない」で監督も務めた君塚良一さんが脚本賞を受賞している。

 原田監督は「16年前に、カナダとの合作映画『栄光と狂気』の撮影で半年過ごしたモントリオールには格別の愛着があります。思い出深いモントリオールの世界映画祭コンペ出品に興奮しています。そこでの観客との出会いが、僕の監督人生の一つのピークになることを期待しています」と喜びを表現。同映画祭代表のセルジュ・ロジークさんは「お互いの感情が何層にも秘められた母親と息子の強い愛の物語は、きっと世界の観客の心をも魅了することでしょう」と絶賛している。

 配給元の松竹で海外映画祭への出品を取り扱う映像ライツ部の古賀正喜部長は「『おくりびと』がグランプリを受賞したように、良質なドラマが出品されることが多く、また観客の年齢層が比較的高く、中高年の年齢層の方がきちんと映画を見る姿勢ができているようなので、老いや死を扱った『わが母の記』は映画祭のテイストと非常に合っていたため、選ばれたのだと思います」と分析。松竹からは「アントキノイノチ」(瀬々敬久監督)も同部門へ出品が決まっている。「わが母の記」は12年に公開予定。(毎日新聞デジタル)

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