黒川文雄のサブカル黙示録:フェイスブックは「リア充」のメディアか

 ブログなどのSNSを利用している方は多いと思います。特にフェイスブックは世界での利用者が5億人を超える一大メディアとなりました。最近は、タイムライン化の発表や、処理落ちなどが散見されますが、刻々と更新される「近況」やアップロードされた「写真」などは、個々人のライフログや趣味嗜好(しこう)などが出るわけで、非常に面白いメディアといえるでしょう。また本国では、株式上場も控えており、ダイナミックな展開が見込めそうです。

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 かくいう私もフェイスブックを利用しています。自分がアップした「近況」や「写真」に「いいね」が付くことや、「コメント」がアップされることがうれしく思えたり、自分が知らなかったニュースやデータがアップされていて、それをまた「シェア」したり、ツールとして活用しています。

 思うにフェイスブックでは、ポジティブな話題が主流で、「友だち」が多い人ほどその傾向は顕著です。つまり現実(リアル)の生活が充実している「リア充」ってことです。フェイスブックは全般的に前向きなマインドにならざるを得ない、ある意味での勝者・幸せのコミュニティーではないかと思います。そのコミュニティーにも、ヒエラルキー(階層社会)があります。そして、見ず知らずの人に「友だち」申請をできることは、ある程度自分のバックグラウンド(背景)に自信がないとできないものです。

 一方で、簡単にアップできるツイッターは、不用意な発言が目立つことからネットでは「バカ発見機」などと揶揄(やゆ)されています。これは、短いコメントであり、タイムラインの中に埋没しがちな特性から「どうせ書いたって分かりゃしない」「ちょっと目立つことを書こう」と思うところが不用意発言を誘発しているのではないでしょうか。

 このところのフェイスブックの「近況」には自分のダイエットエクササイズの記録や、ランニング距離の記録などをアップするアスリート系自慢も増えています。途中で更新が滞れば知人から理由を聞かれ、やめるにやめられない。逆にいえば、「近況」をお互いに認知し、頑張っている姿を褒め合うこともできるわけで、双方のアイデンティティーの確認になっています。ほかにも、人物診断のような外部アプリもあり、戦国武将、幕末の志士など、テーマは多種多様です。中には「それを見せていったいどうしろというのだ」というものもありますが、一ついえることは「さらけだす自信のある自分がいる」ということです。

 年末にフェイスブックの創業期のドタバタを映画化した「ソーシャル・ネットワーク」を見ました。実在の人物たちからも「美化されている」という声もあるほどの内容でした。しかし、「オンナを口説きたい」というレベルの発想でも、アイビーリーグ(米国の名門大8校のこと)の天才の発想は飛び抜けています。

 ともあれ「フェイスブック」=「リア充のメディア」という構図がかいま見えますが、日常は変化や刺激ばかりではありません。熱しやすく冷めやすい日本人にとって、単に「いいね」という予定調和なシステム、ポジティブ全開のメディアに違和感を感じるのも事実です。

 ◇著者プロフィル

 くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、映画・映像ビジネス、ゲームソフトビジネス、オンラインコンテンツ、そしてカードゲームビジネスなどエンターテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。ブログ「黒川文雄の『帰ってきた!大江戸デジタル走査線』」(http://blog.livedoor.jp/kurokawa_fumio/)も更新中。

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