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11月20日(水)放送分
12年7月に劇場公開され、興行収入73億円を記録した「BRAVE HEARTS 海猿」のブルーレイディスク(BD)とDVDが発売中だ。04年公開の1作目から、海上保安官である仙崎大輔の成長と活躍を描いてきた同シリーズ。05年に放送されたドラマシリーズを含め、第5弾(映画4作目)となる今作では、海難救助のエキスパートである「特殊救難隊」の一員となった大輔と隊員たちが、ジャンボ旅客機の海上着水とその救助活動に挑む。1作目からシリーズ全作品でメガホンをとってきた羽住英一郎監督に、作品に込めた思いやBD・DVDならではの見どころなどをたっぷりと聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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−−興収73億円という数字をどうとらえていますか。
お客さんが「海猿」をずっと好きでいてくれたことが大きいと思います。04年に公開した1作目は、デートムービー的な色合いが濃かった。でも、今はファミリーで見に来てくださる方が多く、客層が広がっていることを肌で感じています。作る側としても、そのへんは意識しました。
−−具体的には?
例えば、大輔(伊藤英明さん)と環菜(加藤あいさん)の関係でいうと、結婚して子供ができると、普通ならラブストーリーは成立させづらいものなんです。でも、「海猿」の場合はそれができる。(映画の)3作目を作るときに意識したことは中学生、高校生の女の子たちが、どうすれば興味を持って見てくれるかということ。彼女たちが、私もああいう恋をしたい、あんなふうに好きな人と結婚したいと思えれば、大輔と環菜の関係をラブストーリーとして見てくれるはずだと考えました。
−−今作の場合は?
今回は、そういうのを取り払っても大丈夫だろうと思ったので、あえて生活感丸出しで作っていきました。今回の作品が、俗にいうシリーズにおける“集大成”であるのなら、もっと大輔と環菜の“ラブ線”は突出しないといけないし、アクションも突出しないといけない。でも今回は、いい感じに丸くなったというか。変に力が入り過ぎていないところがよかったのかもしれません。
−−今回、最も意識したのはどのような点でしょうか。
「海猿」シリーズを、いつも同じじゃないかとか、あるいは、なんだかんだいっても必ず全員が助かるじゃないかとか、そのへんの“出来過ぎ”なところを嫌がる人はいるはずです。そういう人たちの意見を真摯(しんし)に受け止めて作ることで、「海猿」を嫌いな人たちも取り込みたいと思っていました。ですから今回は、伊原剛志さんが演じる嶋一彦(特殊救難隊副隊長)を登場させました。彼は、仙崎のやり方を否定する存在。それはイコール、前作までの「海猿」を否定するということ。それでいて最終的には「海猿」を肯定したいので、嶋もまた変わっていくというふうにしたいと思いました。ただ、そこはまた危険な部分で、嶋が心変わりするということは、うまくやらないと、それまでの彼の考えが間違っていたのかということになる。そのあたりは、うまく仙崎を認める形になるよう工夫しました。
−−これまでの約10年間、伊藤さんはじめキャストのみなさんに変化はありましたか。
仙崎についていえば、結婚して子供ができて、背中に背負っているものがすごく増えた。肉体的にもでかくなっているんですけど、そういう物理的なことではなく、本当に背中が大きくなった気がしました。演じる英明については、撮影後、アフレコで久々に会ったとき、大輔を演じているときより若返ったと感じたんです。そのとき、やっぱり仙崎っていろんなものを背負っているんだと痛感しました。英明は明るい性格で、「海猿」の現場でも能天気なんですが(笑い)、仙崎をやっているときは違うんだなと思いました。
−−加藤さんはどうでしょう。
あいちゃんは、もちろん私生活ではお母さんじゃないですが、お母さんらしくなったと感じました。(前作の)「THE LAST MESSAGE 海猿」のときは、息子の大洋は赤ちゃんだったので余裕がなかったと思うんですが、今回の大洋(大山蓮斗君)とのくだりでは、懐が広くなった気がしました。ラブ線から下りた分、肩の荷が下りたのかもしれません。ヒロインとして、大輔くんラブラブモードでなくてよかったわけですから。その意味では、あいちゃんとしては、環菜というキャラクターが非常にいいところに落ち着いた感じがします。
−−撮影が困難だったシーンは?
飛行機の中のシーンです。特に前半。飛行機というのはほとんどどれも同じだし、お客さんも見慣れた空間なので、席と席の間を開けてしまうとうそっぽくなる。リアルな位置関係にすると本当に狭いんです。だから撮影が大変でした。むしろ着水したあと、セットをどんどん傾けて水を入れたりしたときのほうが、いつもの「海猿」の撮影になってくるので、こうなればこっちのもんだと、そこからは楽でした(笑い)。
−−監督が印象に残っているシーンは?
終盤、大輔と吉岡(佐藤隆太さん)が笑い合う場面があります。そのとき、照れ笑いみたいな表情を見せるんです。バディを長くやってきたからこそ出せる表情で、2人が成長していることがうかがえる。あのくだりはすごく好きですね。
−−BD、DVDならではの見どころを。
特典映像がたくさんあることと、「海猿」はシリーズなので、BDやDVDで過去の作品を一気見できるのがいいですね。あと、もし「リミ猿(「LIMIT OF LOVE 海猿」)」のDVDを持っている人であれば、今回の最初に出てくる、仙崎家でみんなでめしを食っているシーンで大輔が着ているTシャツと、「リミ猿」のときの、環菜がウエディングドレスを見せに行くシーンで大輔が着ていたTシャツは同じなんです。たまたま衣装が残っていたんで、面白いから使ってみました。両方見比べてみて、あ、本当だと思ってもらえれば(笑い)。
−−改めて「海猿」に込めた思いを。
ずっと「海猿」シリーズにかかわってきましたが、仙崎大輔というキャラクターが、全員の中にもいるという感じを出したかった。タイトルを「BRAVE HEARTS(勇者たち)」と複数形にしたのはそのためです。「海猿」のタイトルは、分かりやすくする必要があります。子供が知らない英語では困るんです。今回も「BRAVE」は若干難しいですが、「HEART」はどうしても使いたかった。「BRAVE HEART」にしようとなったあとで、テーマ的には複数形のほうがいいと思ったのですが、そのときも「HEARTSがHEARTの複数形だと分かるか」という議論までちゃんとしました。結構、徹底しているんです。
<プロフィル>
1967年生まれ、千葉県出身。ROBOT所属。「恋人はスナイパー」(01年)、「Antique 西洋骨董洋菓子店」(01年)、「ホーム&アウェイ」(02年)など数々のテレビドラマで演出を務め、04年、「海猿 ウミザル」で劇場映画の監督デビュー。その後、「逆境ナイン」(05年)をへて、「LIMIT OF LOVE 海猿」(06年)を大ヒットさせる。08年、「銀色のシーズン」、09年、「おっぱいバレー」を発表。10年、「THE LAST MESSAGE 海猿」も大ヒットを記録した。ほかの作品に「ワイルド7」(11年)、テレビムービー「ダブルフェイス」(12年)がある。初めてはまったポップカルチャーは「ポップカルチャーではありませんが」と断った上で、江戸川乱歩の小説を挙げた。小学生のとき、学校の図書館にあった江戸川乱歩シリーズを片っ端から読んだという。「少年探偵シリーズの『怪人二十面相』などを、毎週土曜日に借りて……。土曜日は夜更かしできるから……読むのがすごく好きでした」と話した。
*「BRAVE HEARTS 海猿」のDVDとブルーレイディスク(BD)は18日発売。DVD4枚組みプレミアム・エディションは8190円、BDのプレミアム・エディション(本編BD1枚+特典映像DVD3枚)は9135円。DVD、BDともに特典映像にはメーキングや未公開シーン、キャストインタビュー、ファンにはおなじみのロールナンバー集などを収録。封入特典には羽住監督の使用台本のレプリカ版。DVDスタンダード・エディションは3990円、BDスタンダード・エディションは4935円。
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2024年11月22日 21:00時点
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