注目映画紹介:「きみはいい子」 人間の優しさや愛を信じたいという思いが伝わる

「きみはいい子」のワンシーン (C)2015「きみはいい子」製作委員会
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「きみはいい子」のワンシーン (C)2015「きみはいい子」製作委員会

 前作「そこのみにて光輝く」(2014年)が、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞を受賞するなど高く評価された呉美保監督の4作目「きみはいい子」が27日から公開される。中脇初枝さんの短編集から3編を抽出し、「そこのみにて光輝く」の脚本家・高田亮さんが一つにまとめあげた。高良健吾さん、尾野真千子さんを軸に実力派の俳優たちが集まり、印象に残るエピソードをつむいでいく。

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 小学校の新米教師、岡野匡(高良さん)は、やんちゃ盛りの生徒たちに手を焼く毎日。その日も、生徒のいたずらをわびるために独り暮らしの老女・佐々木あきこ(喜多道枝さん)の家を訪れていた。一方、夫が単身赴任中の水木雅美(尾野さん)は、3歳になる娘あやね(三宅希空ちゃん)と2人暮らし。雅美は日頃から募ったイライラを娘にぶつけていた……というストーリー。

 それぞれに悩みを抱え同じ町で暮らす人々が、さまざまな局面で交差しながら、やがてささやかな幸せを見いだしていくまでを描く。ほかに、池脇千鶴さんや高橋和也さん、富田靖子さんらが出演。彼らが演じる役柄がどういう関係なのかはすぐには分からず、それがおいおいつかめていく展開が絶妙だ。幼児虐待、いじめ、老人の孤独など、決して軽い話ではないが、そこには間違いなく“救い”がある。それはおそらく、人間の優しさや愛を信じたいという原作者の中脇さんと、呉監督をはじめとするスタッフの心模様が編み込まれているからだろう。登場人物のせりふや仕草が心にしみる。抱き締めるという行為、理解するという行為、相手の心の叫びに耳を傾けるという行為……こうしたことがより合わさっていけば、世の中はもっと幸せになるだろうに……そんなことを考えさせられ、印象に残る作品となった。27日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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