注目映画紹介:「はなちゃんのみそ汁」 広末ママとほのぼの家族が繰り広げる日常を丁寧に描く

「はなちゃんのみそ汁」のワンシーン (C)2015年「はなちゃんのみそ汁」フィルムパートナーズ
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「はなちゃんのみそ汁」のワンシーン (C)2015年「はなちゃんのみそ汁」フィルムパートナーズ

 2012年に出版され、テレビドラマ化や教科書に掲載されるなどした実話エッセーを映画化した「はなちゃんのみそ汁」(阿久根知昭監督)が19日から公開される。結婚、妊娠、出産の間にがん患者となった女性と、愛する家族との大切な日々を丁寧に描き出している。ヒロインを広末涼子さん、その夫役を滝藤賢一さんが演じた。

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 千恵(広末さん)は、新聞記者の信吾(滝藤さん)の猛烈なアプローチによって交際をスタート。乳がんの発覚を乗り越えて2人は結婚した。やがて娘・はな(赤松えみなちゃん)に恵まれる。妊娠・出産をするとがんの再発リスクが高まる危険があったが、葛藤の末に出産を決意した千恵。生まれた娘はすくすくと育っていく。やがて、がん転移が見つかり、千恵は自分がいなくても家族が生きていけるようにと、はなにかつお節を削って作るみそ汁の作り方や、洗濯物のたたみ方などを教えていく。夫や家族に支えられて穏やかな日常が続いていたが……という展開。

 がん患者が書いたエッセーから日常の大切さが感じられる温かな家族ドラマを抽出した。広末さんは病気でつらそうという表情はあまりなく、がん治療を前面に押し出さずに描いたところに好感が持てる。前向きに生きた千恵のはつらつとした表情と九州の女性の強さ……。支える夫も加わり、映画が明るいものになった。喜んだり、がっかりしたり、泣いたりと感情豊かに演じた滝藤さんがとてもユーモラス。そして、オーディションで選ばれたという演技経験ゼロのはな役・赤松えみなちゃんを加えて、広末ママとほのぼのとした家族を生み出している。

 「食べる」という命の基本を娘に託す母親の姿がたくましく、並んで弁当を食べるシーンもほほ笑ましい。大げさな演出をせず、日常の一コマ一コマをつづることで、命の大切さを伝えてくる。一家が住む福岡の空気を感じさせる映画になったのは、同郷の阿久根監督ならではだろう。阿久根監督が脚本を書いた「ペコロスの母に会いに行く」(2013年)で主題歌を担当した一青窈さんがヒロインの姉役で出演し、主題歌「満点星」も歌っている。テアトル新宿(東京都新宿区)と福岡県内で19日から先行公開。2016年1月9日から全国拡大公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。BS12で放送の昭和のドラマ「女と味噌汁」も楽しみ。

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