わたしの宝物
第6話 生まれ変わったら本当の親子になれるかな・・・
11月21日(木)放送分
俳優の加瀬亮さんと篠原篤さんが出演するWOWOWのドラマ「ドラマW この街の命に」が2日、放送される。犬猫の殺処分に直面する行政獣医たちを描いたドラマで、加瀬さんは動物愛護センターに配属された行政獣医・牧田洋を、篠原さんはセンターで働く木崎良太を演じている。加瀬さんが対談を熱望したという篠原さんと加瀬さんにドラマの撮影エピソードやお互いへの思いなどを聞いた。
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「この街の命に」は、犬猫の殺処分に直面する行政獣医たちの葛藤と再生を描いた人間ドラマ。動物愛護センターに配属された行政獣医・牧田(加瀬さん)と、その同僚の行政獣医・幡枝(戸田恵梨香さん)は、動物殺処分の現実に悩み苦しみ、センターの改善に向けて新たに着任した所長・高野(田中裕子さん)が殺処分を減らそうと動き始める……というストーリー。加瀬さんと戸田さんが人気シリーズ「SPEC」以来、再共演を果たしていることも話題になっている。
動物の生命にまつわる苦悩や葛藤を描いた重厚なドラマだけに、加瀬さんはオファーを受けたときの心境を「あまりいい予感はしなかった」と明かし、「動物愛護という言葉もあまり好きじゃないし、勝手な先入観だけど感情的に叫んでいるイメージがあったので、ちょっと避けたいな、というのが(台本を)ぱっと見た感想だった」と打ち明ける。だが、じっくり読んでみると丁寧にさまざまな角度からテーマにアプローチしていることに気づいた。「自分もきちんと向き合ったことがなかったし、この機会に、真剣にこの問題を考えてみようかなと思いました」と語る。篠原さんも「責任とか傲慢さとか役割とか、そういうものが支点になる作品かなと思った」とテーマに向き合う姿勢を見せる。
撮影には、どのような思いを抱いて臨んだのか。殺処分の現実に困惑する牧田について、加瀬さんは「僕から見たら(牧田は)至極真っ当な感覚を持った人だと思った」といい、「犬や猫を飼って、最後まで面倒を見ないというのは、事情があるにせよ少し疑問。(牧田は)自分と近い違和感を持っている」と語り、篠原さんは「(自身が演じた)木崎はあの中ではそういうことに疎いというか、遅れ気味に気づいていく人。あとから考えていく人です」と説明する。
ドラマでは動物たちの声が聞こえたという職員が登場し、命について改めて考えさせられるきっかけにもなっている。加瀬さんは動物の声が聞こえることについて「犬と話すとかそういう感覚はまったくなかった」というが、「不思議だな、とはいつも思いますね、生き物を見ると。犬とかは特に、なんでいつもこんなに飼い主が好きなんだろうと。犬は自身以上に、たぶん飼い主のことが好きだと思うんですけど、そんな動物は珍しいな、と」と語る。篠原さんは「誰かが私は犬としゃべれるとおっしゃれば、僕は信じています。相手を信頼していれば、そうだろうと思います。話すというのがどういうことなのかは別として、驚いたりはしないですね」と明かす。
ちなみに、2人はペットを飼った経験があるのだろうか。そう聞かれると、加瀬さんは犬、篠原さんはクワガタを飼っていたと明かした。篠原さんは台本を読んでまず、自身の子供のころの犬にまつわるエピソードを思い出したという。「近所で子犬がいっぱい生まれたときに親に飼いたいと言ったんです。そうしたら『お前ら2人だけでも大変なのに』と言われたのを覚えていて。今考えると、『おまえみたいな小僧に責任が取れないでしょ』ということで言ったと思うんですよね」と振り返り、「その記憶を通じて、動物を飼う責任ってなんだろうとか……。おのおのが持つべき自覚ってなんだろうなって思いました」と語る。
今回のインタビューにあたって、加瀬さんは篠原さんとの対談を希望したという。「仕事だからと言って、すごくスマートに賢く、そつなくこなしちゃっていることが多い中で、(篠原さんは)思いがストレートなんですよね。なかなか会わないんですよ、そういう人に」と加瀬さん。また、あるとき、あるシーンのせりふで悩んでいた加瀬さんが篠原さんに話をしたら、そのシーンのせりふがずらずらと出てきて驚いたこともあったという。「つまり台本を丸暗記しているわけですよね。そういう人もほとんど会わないなと思ったし。ちゃんとやろうとしている、現場でも信頼できた、というのが大きい理由ですね」と篠原さんへの思いを語り、「(篠原さんが)現場にいるだけで、悪そうで、いいなと(笑い)。なかなかいないんですよ、こういう空気を出している人が」と笑う。
そんな加瀬さんの思いを受けて、篠原さんは「あまり器用な方じゃないので……」と言いつつ、「僕も不思議な気持ちでして、そんなふうに言っていただけるのは本当にうれしい」と笑顔。加瀬さんについては「加瀬さんって主語を飛ばして話しかけてくる。急に『どうなのよ』とかおっしゃって(笑い)。言語領域が一緒というか、(そういう人に)なかなかお会いしないんですよ」と語り、「勝手にいとこのお兄ちゃんぐらいに思わせてもらっている」と親しみを込めて語る。
ドラマでは、日々動物の殺処分を繰り返す中で主人公・牧田が“違和感”を職場に訴えることが重要な意味を持っている。加瀬さんはこの“違和感を持つこと”についてどのように考えているのだろうか。加瀬さんは「『こうしていきたい』とか、違和感とか、憧れとか、(そういう思いは)意外と大事な気がします。そこに向き合い続けるのは面倒で体力がいることなので、一人でやるなら相当な覚悟がいるでしょうし、最終的には一人ではできないことだと思います」と考えを明かし、篠原さんも「違和感ってネガティブなことだけじゃなくて『憧れを持ち続ける』ということ。それは大げさなことじゃなくて、幸せに生きていきたい、自分が幸せならそばにいる人も幸せにしたい、(そういう思いは)人間として当たり前だと思います」と語った。
「ドラマW この街の命に」は、WOWOWプライムで4月2日午後9時に放送される。
<加瀬亮さんのプロフィル>
かせ・りょう。1974年生まれ、神奈川県出身。石井聰亙監督の「五条霊戦記」(2000年)でスクリーンデビュー。 周防正行監督の「それでもボクはやってない」(07年)で第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、第50回ブルーリボン賞、第32回報知映画賞などを受賞。「海街diary」「FOUJITA」など出演多数。
<篠原篤さんのプロフィル>
しのはら・あつし。1983年生まれ、福岡県出身。「恋人たち」(2015年)で主演。第39回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。
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